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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
93/1132

第十六話 後に続く希望(1/7)

9回裏 紅5-4白 攻撃開始


○白組


[先発]

1二 徳田火織(とくだかおり)[右左]

2中 有川理世(ありかわりせ)[右左]

3右 松村桐生(まつむらきりお)[左左]

4一 天野千尋(あまのちひろ)[右右]

5三 リリィ・オクスプリング[右両]

6捕 冬島幸貴(ふゆしまこうき)[右右]

7指 伊達郁雄(だていくお)[右右]

8左 秋崎佳子(あきざきよしこ)[右右]

9遊 月出里逢(すだちあい)[右右]


投 雨田司記(あまたしき)[右右](残り投球回:1/3)


[控え]

夏樹神楽(なつきかぐら)[左左]](残り投球回:1回2/3)

氷室篤斗(ひむろあつと)[右右](残り投球回:0)

山口恵人(やまぐちけいと)[左左]](残り投球回:0)



●紅組

[先発]

1中 赤猫閑(あかねこしずか)[右左]

2遊 相沢涼(あいざわりょう)[右右]

3右 森本勝治(もりもとかつじ)[右左]

4左 金剛丁一(こんごうていいち)[左左]

5一 グレッグ[右右]

6指 イースター[右左]

7二 ■■■■[右右]

8三 ■■■■[右右]

9捕 土生和真(はぶかずま)[右右]


投 カリウス[右右]


[降板]

三波水面(みなみみなも)[右右]

早乙女千代里(さおとめちより)[左左]

桜井鞠(さくらいまり)[右右]

相模畔(さがみくろ)[右左]

牛山克幸(うしやまかつゆき)[右右]

花城綾香(はなしろあやか)[左左]

 ******視点:振旗八縞(ふりはたやしま)******


 紅組が最終回のマウンドへ送り込んだのはカリウス。助っ人外国人らしい大柄な体格を誇る右のパワーピッチャー。トリを任されてるのは、メジャーでも150試合以上登板した実績を買われてるってのもあるけど、ウチの勝ちパターンの3人は先の2人がどちらかというと技巧派寄りだから、継投の緩急という意味合いの方が強い。

 その勝ちパターンが綺麗にハマって、しかも土壇場で試合をひっくり返された直後。1点差ではあるけど、この試合のルール上、9回終了時点で同点だと紅組が勝つから、勝つためには2点を取らなきゃいけない。

 非常にまずい状況ではあるけど、先頭打者が松村(まつむら)なのは不幸中の幸いね。


「まぁ頑張ったけど、白組はここまでやろうなぁ」

「クリーンナップからって言っても、そもそも白組って伊達(だて)以外は一軍半以下やしなぁ……」

「3点ハンデもらうような戦力じゃ、こんなもんやって」

「二軍のヒョロガリ打線じゃメジャーでバリバリやってた奴なんて打たれへんやろ」

「万年最下位なんやからさっさと世代交代するなり競争できるようにしてほしいのに、二軍がこの程度じゃお先真っ暗やで」

「まぁ選手だけやなくてオーナーまで顔だけはええんやから、そっちで稼いどったらええんちゃう?」


 さっきまで白組を持ち上げてたのに、都合の良いギャラリーね。パソコンや携帯が普及しても、私が現役だった頃から何も変わっちゃいない。現状に見合ったそれらしい理由をその都度拾い上げて、マジョリティになろうとするんだから。


「知ったような口振りしやがって……」

「……え?」

「あ……いや、何でもないよ!」


 ……ほんと、月出里(すだち)は見た目以外全く可愛げがないわねぇ。これから教えていくのは苦労しそうだわ。


「ファール!」

(ッ……!やはり球威がありますね)

(去年から目をかけてたが、やはり骨のある坊やDAZE。いきなり当ててくるとはNA)


 1球目から150。相変わらずね。そしてタイミングを合わせられる松村も流石。

 松村は高校時代こそ通算59本塁打を誇ったスラッガーだけど、本質的にはアベレージヒッター。スピードボールにもコンタクトできて、どんな球種にもどんなコースにもフレキシブルに対応できる。四球はあまり多くないけどそれ以上に三振が少ないタイプ。だからこそ、去年は高卒1年目にして一軍でもそれなりの打席を与えられた。


「ボール!」

「ファール!」

(ツーシームも捉えられてるNA……いやはや、大したもんDA)

(外中心……となるとフィニッシュは……)


 この配球……やっぱり最初から三振は狙ってないわね。次に来るのは、おそらくお得意のあの球……


(だがNA、坊や。"本物"ってやつはわかってても打てないウイニングショットを持ってるもんなんだZE……!)

(……!!!)

「「「ああっ……!」」」


 ストレートの軌道から急激な横滑り。松村も当然想定はしてたはず。だけど打者というのはある程度以上の速度になると完全に視認だけでは投球を捉えることができなくなるから、不足分は脳が経験などからくる予測によって補完するようになってる。だから、途中まではストレートと見紛うその球種を、ストレートという認識を拭いきれずに、想定よりバットの芯より根本寄りで捉えてしまった。

 その結果、松村のバットは折られ、打球はあまりにイージーなピッチャーフライ。


「アウト!」

「……不覚!」

「す、すげぇ……149で曲がるのかよ……」


 一縷の望みに賭けて一塁へ疾走しかけたものの、その結果で天を仰ぐ松村。

 あれこそが"元メジャーリーガー"カリウスの代名詞、カットボール。カリウスは全体的に制球がアバウトなんだけど、カットボールに関してはスピードもキレも、そしてコマンドも申し分なし。的確に左打者の内角を切り裂くことから、右投手ながら対左打者をより得意としてる。


(オレのカッターはそこいらのジャパニーズカッターとは訳が違うZE。あんなスライダーもどきの球じゃなく、オレのはいわばフォーシームの派生。カッターは曲がり幅とかより、いかにしてフォーシームと混同させるかが肝要なんだZE)


 相性ももちろん悪かったけど、松村は単純にまだまだ線が細いのも敗因ね。長身ではあるけどまだまだ横幅が足りないわ。横幅と、それに耐えられる体力を身に付けることができれば今のも強引にヒットにしたりってのもできるはずだし、高校時代よろしくもっとホームランも打てるようになるはず。


「あ、あとツーアウト……」

「くそッ、どうすりゃいいんだよ……!」

(まずいな……ベンチも盛り上がってなくて打てる雰囲気じゃねぇ……)


 ……ま、でも。


「4番ファースト、天野(あまの)。背番号32」

「よーし!一発打つよー!!」


 貴方ならきっと打てるわよね?

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