第七話 吐いた唾を飲むつもりはありませんから(5/8)
「……ふーむ。ルーキー達はこんなことを言っておるが……財前。今日の白組スタメン最年長としてどう思う?」
「いやぁ、どんな理由があっても監督に造反するのは良くないっしょwww実際結果としては惨敗だったんだし、監督のおっしゃる通り、ルーキー達はまだまだ実力不足だと思いますよwww」
「なーるほどのう、一理あるのう……」
正直、この答えは予想できていた。監督からの評価を上げつつ、ライバルを蹴落とす絶好のチャンスだしね。
山口恵人(……ふん、おれなんて2年目なのに1球も投げさせてもらえなかったんだから、反抗できるだけでも贅沢だよ。おれだってプロなんだから、歳とか関係なく、もっと実力を見てほしいね)
天野千尋(二軍幽閉は嫌というほど経験したぼくとしちゃ、ルーキーの子達はちょっと軽率だと思うけど、監督が言ってることも極端だと思うし、振旗コーチに教わってる逢ちゃんと佳子ちゃんが全然アピールできないってのはなぁ……旋頭コーチが言ってた通り、はっきり言ってぼく達も1点も取れてないのは情けないと思うし。)
松村桐生(確かにレギュラー定着できていない私としてはライバルが少ない方がありがたい一面があるのは事実ですが、だからと言ってこんな理不尽な仕打ちのおこぼれを預かったところで、私自身のスキルアップには全く繋がりませんからね……そもそも私自身の評価も下がったままですし)
徳田火織(最悪アタシはともかく、あっくんの一軍昇格保留とか正直ないわ。あの球使わなくたってちゃんと結果出したんだし、むしろその辺がちゃんと評価されてくれないと困るよ。何よりあっくんはエースになるんだから、せめて1回くらいは先発やらせてもらわないと)
氷室篤斗(俺はツーシームもまだまだ未完成だし、あの球頼りにならないためにもしばらくは二軍で調整でも別に構わない。だが数字には残りづらい部分とはいえ、攻守で成長ぶりをしっかり示した火織がこのままってのはな……一軍の事情を考えたら、火織は開幕一軍どころかレギュラーだって十分争えるはずなのに……)
有川理世(まぁワタクシメはおそらくチーム事情的に否応なしに一軍にまた戻れるとは思いますが、それはあくまで便利屋としてでしょうし、やっぱりワタクシメとしてはキャッチャーとしてアピールしたいですし……素敵なルーキーの皆ちゃんが悪く言われるのも正直良い気分にはなれないですねぇ……)
財前くん達と違って、他の子達はみんな複雑そうな顔をしてる。まぁ僕も同感だね。特に冬島くんはライバルではあるけど、同時に僕のやり残したことをやり遂げるためには必要な子でもある。
「財前はこう言っとるが……それでも月出里の言う通り、お前らからの喧嘩を買えばワシの考えは変わる。そう思ってええのかのう?」
「……少なくとも、あたしはそのつもりです」
「ボクもだ!」
真っ先に逆らった二人が「待ってました」と言わんばかりに答えると、柳監督もなぜか「待ってました」と言わんばかりに笑って……
「投手 氷室篤斗、山口恵人、雨田司記、夏樹神楽。捕手 伊達郁雄、冬島幸貴。内野手 天野千尋、徳田火織、リリィ・オクスプリング、月出里逢。外野手 有川理世、松村桐生、秋崎佳子。以上13名を、来週行う2回目の紅白戦の白組メンバーとして選抜しよう」
「……え?」
「紅組のメンバーは、我が球団の残り全選手。本日の白組への処分は全て白紙とし、望み通り、お前らにリベンジの機会を与えてやろう。ルーキー以外の連中も、どうも不服そうじゃったからのう」
この人選……ひょっとして監督は……
「まぁ実力差もさることながら人数差については流石に考慮すべきではあるから、何らかの特別ルールを加えることにするがの。ただし、監督様に逆らった罪は重いぞ?もしこれだけの大口を叩いておきながら負けたのなら、罰として3日間ほど、懲罰労働でもやらせるつもりじゃからそのつもりでおれよ小娘ども。フォッフォッフォッフォ……」
……え?
「上等ですよ。吐いた唾を飲むつもりはありませんから」
「どうせ負ける」と言わんばかりに悪い笑みを浮かべる柳監督を、構わず睨み返す月出里くん。最終回にちょろっと守備固めで出ただけでここまでグイグイ前に出ていける度胸は大したものだと思うよ。
まぁ、とは言っても……
桜井鞠(あーあw面倒見の良い先輩方はバカなルーキー達に巻き込まれてカワイソwww)
財前明(白組はルーキー含めてたった13人。紅組は一軍レギュラー全員含む残り全メンバー。特別ルールとやらでどんだけハンデ付けようが、こんなの二軍幽閉のための出来レースに決まってるじゃんw紅組に入れて助かったわwww)
早乙女千代里(うーん……でも、素直に喜ぶべきなのかねぇ……?)
相模畔(なーんか単にハブられただけのような気もするんだが……)
この人選に、懲罰の内容。監督の目的は恐らく……
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