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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
30/1128

第七話 吐いた唾を飲むつもりはありませんから(3/8)

◎2月4日 紅白戦メンバー表

※[投打]


●紅組

[先発]

1中 赤猫閑(あかねこしずか)[右左]

2遊 相沢涼(あいざわりょう)[右右]

3右 森本勝治[右左]

4左 金剛丁一(こんごうていいち)[左左]

5一 グレッグ[右右]

6指 イースター[右左]

7三 ■■■■[右右]

8二 ■■■■[右左]

9捕 真壁哲三(まかべてつぞう)[右右]

投 百々百合花(どどゆりか)[右右]


○白組

[先発]

1左 相模畔(さがみくろ)[右左]

2右 松村桐生(まつむらきりお)[左左]

3指 リリィ・オクスプリング[右両]

4一 天野千尋(あまのちひろ)[右右]

5三 財前明(ざいぜんあきら)[右右]

6捕 冬島幸貴(ふゆしまこうき)[右右]

7二 徳田火織(とくだかおり)[右左]

8遊 桜井鞠(さくらいまり)[右右]

9中 有川理世(ありかわりせ)[右左]

投 雨田司記(あまたしき)[右右]

[中継登板確定]

氷室篤斗(ひむろあつと)[右右]、早乙女千代里(さおとめちより)[左左]

[控え]

山口恵人(やまぐちけいと)[左左]、夏樹神楽(なつきかぐら)[左左]、伊達郁雄(だていくお)[右右]、

月出里逢(すだちあい)[右右]、秋崎佳子(あきざきよしこ)[右右]、……

******視点:伊達郁雄(だていくお)******


 8回から僕が代わりにマスクを被ることになった。

 氷室(ひむろ)くんからの要望は「フォークを使わない」ということ。元々フォークは彼の決め球だったけど、代わりのツーシームとレベルアップしたまっすぐで、下位打線は十分抑えられた。グラウンドボールピッチャーを目指してるのかな?

 だけど、9回の早乙女(さおとめ)くんは1失点。


(チッ、上位打線相手とは運がねぇ……!)


 5年前、高卒ながらドラ1指名された期待株なだけはある。一軍でもこれだけのまっすぐを投げられる左投手はなかなかいない。

 だが悲しいかな、速球派左腕の制球力というのは大抵いかんともしがたい。打たれたヒットは1本だけだけど、四球2つの後。

 チームで一番、それどころかあの妃房蜜溜(きぼうみつる)以上の長身から繰り出される球威は本当に魅力的なんだけどねぇ。


 そして打線の方も変わらず得点できず、結局今年の初試合は7-0で紅組、つまり一軍主力組が順当に勝つという結果で落ち着いた。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


 試合に参加したメンバーは全員、全体ミーティングに参加。まずは特に当たり障りのない内容だけで、紅組メンバーは全員退席、白組のベンチ含めて全メンバーと、監督コーチ陣だけが残ることになった。


「「……フン」」


 やはり負けたことに変わりはない上に、揉め事まで起こした雨田(あまた)くんと夏樹(なつき)くんは特に不機嫌そうで、ふとした拍子に目が合うとお互いにそっぽを向いた。


「さて、必要なメンバー以外は退席したことじゃし、話を進めるかのう。まずはこれからの処遇の話じゃが、今回白組に参加してた一軍キャンプ組は全員二軍キャンプ行き。当然、二軍キャンプ組も昇格は保留じゃ。また、今回スタメンで出場したメンバーと登板確定組は今回のキャンプの紅白戦には参加させないのでそのつもりで」

「……はい」

(まぁこれは仕方ないよね……これといってアピールできるとこはなかったし)

(それにしても、スタメン組の出場剥奪はかなり重いですね……要するにオープン戦以外で実戦アピールができないし、そもそもオープン戦に出させてもらうのも難しくなる)


 (やなぎ)監督の容赦ない通告に、松村(まつむら)くん達は肩を落としてる。無理もない。去年の成績的にも、今年は十分レギュラー争いのできる立ち位置にいたからね。氷室(ひむろ)くんと徳田(とくだ)くんも二軍キャンプ組どころか白組全体でも特に良いものを見せてたし、悔しいものがあるだろうね。

 ただ、有川(ありかわ)くんは特に開幕一軍を務められるところにいると思うけど、彼女の若さから言っても便利屋ではなく能力を伸ばすのに専念するのも妥当な選択だと思うけどね。


「それと、今年のルーキー諸君。誠に残念な話じゃが……今年中の一軍昇格はないものと思ってもらいたい」

「「「「「「……は?」」」」」」

(ちょっ!?正気ですか監督!!?)

(一軍キャンプ組への処遇はともかく、いくら何でもルーキー達への処分が重すぎるだろ!?)


 はっきりと口には出さないけど、コーチ陣が動揺して、異論が喉から出かかってるのを必死に飲み込んでるのが見ていても伝わってくる。

 かろうじて雨田くんに関してはじっくり育てるのを目的にしてると考えればわからなくもないけど、冬島(ふゆしま)くんは惜しい当たりもあって守備面でも細かいところで光るものがあったし、リリィくんも打撃がセールスポイントなのに判断材料の打席数が少なくそもそも内野安打とはいえ全く結果を残してないわけじゃない。残りの高卒の子達3人も現状は試合に出すまでもなくな実力なのかもしれないけど、全くチャンスがないなんてのをこんな時期に二軍幽閉を明言してしまうのはモチベーションにも関わってくる。

 はっきり言って、あの名将・柳道風(やなぎみちかぜ)の判断とは思えない。


「まぁ確かに、お前らにとっちゃ紅組連中は難敵に思えたかもしれんけどな、ウチは12球団でも最弱と言われてるようなとこじゃ。その評価を覆すのに必要なのは、その評価を下さざるを得ないような一軍連中を打倒できるほどの力じゃ。なのに力を示すどころか、爪痕一つ残せんようなもん達に借りる手なんぞないってこっちゃ」


 そりゃまぁ、そうだけど……


(よしよし、天野達だけじゃなく、競争相手になりそうだったリリィも消えるぞ!)

(ざまぁwwwwwwww)

(紅白戦に出られないのは確かに痛いけど、マイナスがより大きいのは一軍キャンプ組。私達全員が出られないと流石に試合も回らないはずだし、多少の緩和はあるはず)


 財前くん達4人組はあからさまに機嫌が良い。おそらく競争相手の脱落を期待してのものだろう。正直、彼らが自分達の評価だって上がったわけじゃないってことをちゃんと認識できてないことの方が問題だと思うんだけどなぁ……


「さて、旋頭(せどう)よ。二軍監督としてこの処分について、何か意見はあるかの?」


 話を振った相手は現役時代からずっと柳監督を慕い続けてる旋頭コーチ。反論する姿が思い浮かばない。要するに、柳監督はこの人事を通す気満々ということだろう。

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