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#7 聖水


 「らっしゃいらっしゃい!ンゴンの実!ンゴンの実!採れたて三日目ンゴンの実ッ!ピッチピチなンゴンの実はいかがかね~!!」


 「お買い得お買い得!お買い得だよ!!今ならなんと!こーんな大きな魔晶石にこぶりな石が10個ついて!なんとなんと白貨2枚!さぁ買ったかった!」


 「うまいぞ~うまいぞ~!焼き鳥!焼き麺!焼き魔物!うまいぞ~うまいぞ~」


 …

 ………

 ………………



 一旦宿に戻って大量の謎革を部屋に置いてきたわたしはシーチナさんの言う『フォートレ市場』へと向かった。


 進むに連れて煩雑化する分岐路を慎重に選んだ末にたどり着いたのがココ『フォートレ市場』。


 元の名を『フォートレ大()()』って云うらしいよ?


 というのも元は石床に描かれた太陽のシンボル以外に特筆することなんて特に無い無駄に広い広場だったらしい。


 だけどその面影はどこにもなく、眼前に広がるは人々が威勢のいい声張り上げては客引きする姿とか、お店の品物をただ眺めて冷やかす人や値段交渉に熱中する旅人と店主の生き生きとした姿とか、活気に満ち溢れた光景。


 広いのに狭さを感じる矛盾を感じる。それと広間から大分離れていても鳴り響く喧噪が市場の規模と人の多さを物語ってるよね。

 

 何も無かった大広間といっても教会やら商業ギルドやら領主邸やら、様々な街の主要施設へと続くいくつもの街道が隣接する中間地点に位置するらしくて、人の往来はそれなりに多かったらしい。


 だからそこで露店開けば儲かるよねって考えた商人見習いが敷物広げて小さな露店を構えたのが始まりらしい。


 それ見て「俺も」「私も」と住民やら同業者やら旅人やらが真似するうちに広間をぎっしり埋め尽くすほどの規模にまで発展したみたい。


 さっき【ンゴンの実】を売ってくれた恰幅のいい中年おじさんが教えてくれた。


 【ンゴンの実】っていうのは艶のある濃い桃色の分厚い皮に包まれたリンゴみたいな見た目の果物。


 プルップルで弾力のある厚く瑞々しい皮を思いっきり噛み千切ると湿ったマシュマロみたいな中身が口の中でほんのり溶けて染み込んでいく不思議な味わいで普通に美味かったよ。


 わたしの表現力では魅力の欠片も伝えられないくらいに美味だったことを付け加えて置くよ。


 ん?

 遠征用の食料品は買ったのかって?

 うん、買ったよ。

 それで今は帰る途中だったりする。


 ラノベでもお馴染みな干し肉とか黒い硬パンはもちろんのこと、ジャム、ドライフルーツ、炒て乾燥させた豆、サワークラウトとか何となくビタミン採れそうな保存食も1週間分買い貯めすることにしたよ。あとついでに瓶とかも。


 意外なことにガラス製の瓶を売ってる露店って結構あったりする。ちょっとお値段は高いし形も歪だけど大して問題になるほどのレベルじゃなかったからね。ついつい買っちゃったよ。


 そんなわけで残金5764リディス。


 オプション無しの普通の宿で素泊まりするなら後5日。街に再入場することも考えると4日分しか残っていないこの状況はちょっと不味いね。 


 そろそろお金稼いでいかないとまずいかもしれない。わたしも露店開いて属性付き魔晶石とかで商売しようかな……。


 そう思って近くのお店で色んな水を売りさばくターバン冠ったご老人に聞いてみたんだけど――――――



 「商業ギルドに入らないとここでは店は出せないぞい」



 って言われたよ。


 なんでも『フォートレ市場』で商売するには商業ギルドから許可証を発行してもらう必要があるらしいよ?


 早い話がココ『フォートレ市場』を実質支配しているのは商業ギルドらしい。


 領主とその関係者が一々許可証発行してたら通常業務に支障が出るってことで商業ギルドに委託する形になったとか。


 でもそれを逆手に取って商業ギルドは商人以外に対しては露店許可証を発行しない暴挙に出たらしい。領主側も他に委託できる適任な組織がないために良くないと思いながらも手出しできない状況に陥っているみたい。


 つまりわたしがココでお金を稼ぐには商業ギルドに入会しないといけないらしい。……なんか面倒そうだし他の場所で露店開けばいっか。


 頭の中で情報整理しているとご老人から声が掛かった。



 「嬢ちゃん、もしかして旅人かい?」


 「まぁそうですけど?」


 「それならコレなんかどうだね?」



 そう言って手渡されたの無色透明のただの水が封入されたガラス瓶。天然水かな?



 「これは?」


 「これかい?【聖水】って言うんだよ。魔物は君のような可憐で可愛らしい美少女が大好物なのさ。だけどこれさえあれば――――」



 そこから始まるマシンガントーク。わたしの疑問もとい遮りの言葉すらも完全無視して気色悪いこと宣い続けたご老人は最後に指を三本突き立ててこう告げた。



 「白貨3枚でどうだね?」


 「いいえ、結構です」


 「ならば―――――」



 冷たく言い放ったわたしはご老人が更に何かを言う前に踵を返してその場を後にした。


 いやだってさ、胡散臭いじゃん。

 一瞬、宗教の勧誘か何かかと思ったよ。

 そうでなくとも【聖水】なんてぶっちゃけいらない。

 ってかボッタクりすぎて笑えない。


 ≪AAO≫的に言えば【聖水】って一言で言えば魔物除け。聖属性の魔素を大量に含んだ清らかな水のことを言う。


 【聖魔晶石】製の瓶で【清水】を1ヶ月ほど入れておくなり、聖女ジョブの〈祈願〉スキルで聖なる力を宿すなりすれば簡単に手に入る代物。


 なのに缶ジュース1本分にも満たない量で白貨3枚とかボッタクリにも程があるからね。

 

 買うにしてもあのご老人のお店で買うのはまずあり得ない。


 でも…もしかするとこの世界では【聖水】はそれほど高価な代物なのかもしれない。そう考えると、あのご老人には悪いことしたかもしれない。実際どうなんだろ?


 ともかく≪AAO≫の知識というのも考えようによっては危ないってことを再認識したよ。鵜呑みはいけないね。


 ≪AAO≫でたくさん取れた代物がこの世界では凄まじく貴重かもしれないしその逆もあるかもだし。


 少なくとも【聖水】については情報が集まるまで売ろうだなんて考えないほうがいいかもしれない。


 ともあれ買い物を一通り終えたわたしは宿泊先へと帰還したのだった―――――




お読み下さりありがとうございます!


思ったよりも同じ言い回しが多い気がします。

文章表現力スキルが欲しいです……。

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