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#8 ゴブリンの耳

 『仔山羊の宴亭』に戻ったわたしは早速、ポーションホルスター製作に取り掛かった。と言っても制作自体はそんなに時間は掛からなかったりする。


 シーチナさんから買い受けた謎革を錬成して1枚の大革に変えた後、ホルスターの形状に合わせて再錬成し直すだけだからね。


 どちらかと言うとホルスターの形状の微調整とか着け心地とかの確認に時間を掛けた感じかな。


 その後はまぁ、街の地図製作(マッピング)も兼ねて街中散策したり観光したりで宿の残り日数を過ごしたよ。


 街の人の話によるとウィスカルの街の近くには森が2つあるらしい。


 一つはチュトリアス大森林。

 わたしがサバイバルした森がそこ。

 街から森までの距離は大体3日ぐらいだったはず。


 で、もう一つはフィージャスの森。

 かつて賢者フィージャスが晩年に隠居生活を送ったと云われている森らしいよ?

 フィージャスが誰なのかわたしも知らないから置いとくとして~。

 街までの距離は1日半~2日ぐらいらしい。


 距離的に見てフィージャスの森が近いから、ギルド試験のゴブリン狩りはこの森でしようと思ってるの。


 方角的にざっくり言えばチュトリアス大森林は南側。

 フィージャスの森は北側。


 つまりフィージャスの森に行くには北門から出発する必要があるってわけ。


 別に他の門から出発して北門目指して外壁沿いに進んでいくのもありだけど、街の規模的にそれやったら確実に日が暮れると思うんだよね。


 だから街の真ん中を突っ切れば最短で行けて楽できるかなって思ったんだけど、そうは問屋が卸さないみたいだね。


 というのも早い話、街の中央に近づけば近づくほど分岐路が増えまくってどこへ進めばいいのか判らなくなってくるんだよね。


 なんでもウィスカル中央部には貴族街があるらしいよ?


 そこに近づくにつれて民家というか民間住宅的なものが減っていく傾向があるみたい。その代わりなのか喪服店とか仕立て屋とか高級料理店とか色とりどりに店舗が乱立して道が煩雑化してる印象を覚えた。


 そのせいで自作地図の制作状況は未だに貴族街にすら辿り着けていない状況だったりする。


 そんな状況で2の鐘……宿屋のチェックアウト時刻を迎えてしまったわたしは知恵袋的存在であるシーチナさんを頼ることにしたんだけど――――――

 


 「この街の案内地図とか売ってません?」


 「………冷やかしなら帰っとくれ」



 いつも以上に棘のある口調でそう告げるシーチナさんの雰囲気は何かワケアリな感じだった。どうしてだろ?



 「そんなことも知らんのか―――ってそういやお前さん、別大陸から来たんじゃっけな。実はのぅ」



 シーチナさん曰く、街に関する詳細な地図を複製したり販売するのはリディスエール王国における法律で禁止されているらしく、やろうものなら即刻死刑に処されるらしい。ナニソレ怖いんだけど……。



 「極端過ぎません?」


 「無闇矢鱈に部外者に暗躍されんための処置じゃて、仕方あるまい」


 「そういうものですか」


 「そういうものじゃ」



 大分昔に他国の諜報員たちと一悶着あったらしい。それ以来、地図の取扱がより一層厳しくなったとか。政治って難しいね。


 その辺の必要最低限の知識も追々覚えていかないと不味いかもしれないけど、とりあえず目先のことに集中するとするよ。


 あと、詳細な地図じゃなければいいのかよって思うかもしれないけど、それは普通にOKらしい。


 OKなんだけど、みんな極刑を恐れてか地図を売り出したりはしないのだとか。個人で作る分には良いみたい。


 つまり地図は買えないと。

 やっぱ外壁に沿って地道に歩かないとダメなのかな……?


 ボソリとわたしが呟くと、耳聡くシーチナさんから鶴の一声が発せられた。



 「乗合馬車にでも乗ればよいじゃろうが」


 「あぁーなるほどです」



 その手があったね―――――――



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 「獲ったどー!!」



 足元に這いつくばる重症のゴブリンにトドメの一撃を挿し入れたわたしは勝鬨の声を上げた。


 何を隠そう今回のゴブリンが10匹目だったりする。後は両耳を剥ぎ取るだけでミッションコンプリートとなる。やったね!


 え、街から森までの流れをぶっ飛ばすなって?

 えぇ~そんなこと言われてもね?

 面白いことなんて全然無かったよ?


 街の要所要所で乗合馬車を乗り継いで、4の鐘…3時になる少し前ぐらいに北門に着いたわたしは一人さびしく門を出た。


 そこから始まる一人旅―――――


 しゃべる相手なんて居るわけもなく一人黙々と歩き続ける正に苦痛の時間としか思えなかったね。


 とにかく暇で仕方がないし。

 暇潰そうにも会話相手いないし。

 娯楽関係の玩具なんてお金なくて造れなかったし。


 だから時折すれ違う行商人とか御者の人とか騎士たちとのたった二言三言の挨拶が心の潤いになるほど退屈で鬱屈とした旅路だったよ?


 魔物も盗賊も定期的に街道を警らする騎士たちに狩られてるのか、至って平和そのものだったし。まぁ定期的かどうかはわたしの勝手な推測だけど。


 一番厄介と思われる野営も実のところ、レベルアップで最大MP大分上がってるから土魔法と〈錬金術〉のハイブリッドで家建てて鍵閉めれば普通に寝れたし。


 とにかく、これと言ってやばい目にあったりとか面白いこと起こったりとかは無かったわけ。ね、ホントつまんないでしょ?


 だからこうしてお巫山戯入れて精神的にガス抜きしているってわけなのだよ~。はぁ。


 正直に言うとね、ギルド試験のこと舐めてたよ。

 ただ雑魚(ゴブリン)を斃すだけでいいんだって余裕綽々に構えてたよ。

 でもさ、実際やってみて、ここまで精神的に来るとは予想外だったよ。

 暇すぎて堪らないし。

 孤独過ぎて辛いし。


 剥ぎ取り作業って生暖かい肉の感触と血の臭い…ゴブの()えた生臭さがあまりに酷すぎて吐きかけたし……。


 切り取った耳も耳ですっごい臭うからガラス瓶に直ぐ様しまうことにしたよ。ガラス瓶買い貯めしてホント正解だったよ……。


 まぁギルド試験のゴブリン10匹討伐+両耳回収も終わったから今から帰るところだよ?


 でもまたあの行程を繰り返すのかと思うと陰鬱な気分になるね……。



 それからウィスカルの街へ辿り着いたのは二日後のことだった――――――


お読み下さりありがとうございます!


森の描写って本当に難しいですね(´・ω・`)

思わず飛ばしちゃいました。

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