プロローグ
不定期更新です、気長に待っていてください。
とある部屋に一人の少女が居た。
少し紫がかった銀色の髪に紫の瞳、それだけを見れば少し変わった容姿の少女だが、彼女は普通の人間ではない。
頭には左右に禍々しく歪んだ黒ずんだ紫の角、瞳孔は縦に割れまるで獣のよう、背には角と同じ黒ずんだ紫の蝙蝠のような二対の翼。
そしてこれまた黒ずんだ紫色をした鱗で覆われた尻尾が生えており、尾の先端は剣のようになっている。
殺風景な部屋で少女は一人たたずんでいる。
退屈だ。退屈で退屈で仕方ない、ここの本はとっくの昔に全部読んだ、退屈で死にそうだ。最初の頃は楽しかった、見る物すべてが新鮮で、とても広く通路がたくさんあって、迷わないように慣れるまで時間がかかった。確かここに来たのは六年くらい前、だったかな。
覚えている中で一番古い記憶は痛い、寒い、視界が悪い、よく聴こえない、だ。
少しでも動くと身体中に激痛が走り、視界の半分以上が真っ赤に染まっていた。音は騒がしいのはわかるけれど何を言っているかはわからない、声かどうかもわからない。
時間がたつにつれなんだか寒くなってくる。
あぁ寒いこのまま死ぬのかな…死ぬのは怖いな…イヤだなぁ
私の意識はそこで途切れた。
そうして目が覚めたらここに居た、というわけだ。
六年前のあの日、私は事故に遭いこの施設に運び込まれてようやく一命をとりとめたらしい。
目が覚めたら、お医者さんが「命は助かったが特殊な手術を施したため身体にどんな変化があるかわからない、だから暫くここで生活してもらう事になる。それでもいいかな?」と訊いてきた、私は警戒心も無く答えた。
「うん」と
それから3年ほどたった頃、私は違和感に気づいた。
記憶が無いのだ。私の世話役の職員を姉さんと呼び始めた頃に、そういえば私の両親はどうしたのだろう、と考えた。その時だ、私は両親の事が思い出せない。それどころか自分の事も思い出せない、
まず名前が思い出せない、施設ではとくに名を呼ばれるような事はないのでたいして疑問に思わなかった。それから事故にあう前の事も思い出せない、どんなに思い出そうとしても全く意味が無い。
そのうち記憶の事はどうでもよくなってきたがもう1つ問題が浮上した。
退屈なのだ。ただただ退屈なのだ、外出等は一切禁止されており、たまに姉さんが話してくれる外の話に私は聞き入り、外に憧れた。
出来るならば、自由になりたかった。
ちなみに手術の影響でお医者さんの言ったとうり身体が変化した。
一番判りやすいのは角と尾と翼、それ以外は主に様々なおよそ人間とは思えない能力を得た。そのうち使う時が来るかもしれない。
…能力の半分以上が戦闘特化なのは気にしないでおこう
そんなふうに昔のことを思い出したりするくらい退屈していたとき、頑丈そうな扉の外、距離でいうと10メートルくらいのところから足音がする。
扉の前で足音が止まる。ノックの後に扉が開く。
「No.8、居る?」
そう言いながら、白衣を着た女性が部屋に入ってくる。私は姉さんと呼んでいる。本名は夜影摩耶。
ちなみにNo.8というのは私のことだ。ここに来たとき、いや、ここで目が覚めたときと言ったほうがいいかな?
とりあえず私がここに来たときにつけられた私の呼び名だ。理由は知らない。前の名前は思い出せないから別にどうでもいい。
「居るよ、見ればわかるでしょう?」
「わかってる、言ってみただけよ」
そう言って女性は微笑む。
「それよりも、何のよう?」
「ああ、そうそう忘れてた、検査の時間よ」
検査、もうそんな時間か、実に面倒だが行くしかない。でないと私の命にかかわる。
「了解、すぐに向かう」
立ち上がり、廊下に出る。慣れた道を歩き、目的の場所に向かう。
「はい、以上なし」
そう言ったのは目の前の三十代くらいの男性、ドクターだ。名前は初めて会ったときに教えられたが覚えていない、確か姉さんのお兄さん。この人が私に手術を施したお医者さんその人。
「じゃあもう部屋に戻っていいですか?」
正直早く部屋に戻りたい。
「いやダメだよ、まだ能力検査が残ってる」
あれか、めんどうくさい。
「いつも思うのですが、能力検査は本当に必要なのですか?能力なんてそう簡単に変わったりしないと思うのですが」
「必要だよ、君の場合いつ能力が上がったりするのかわからないからね」
「はあ」
ドクターの言い分はもっともだ。昔は驚くほど能力の向上が早かった。
「さあ、早く部屋に戻りたいなら早く終わらせよう。まずは視力からだよ」
「はぁ…疲れた」
面倒な検査が終わった、まさかまた能力が上がっていたとは。
驚きだ、検査が終わって能力が上がっているといつも思うが、私はどれだけ成長するのだろうか。
「まあ戦ったりしないから、関係ないか」
私の能力の多くは戦闘に特化したものが多い、何故そんな能力があるのかは私も知らない。
「そのうちドクターに聞いてみようかな」
「何を?」
「何って、私がこんな戦闘特化な能力を持っている理由を…」
「聞いても教えてくれないと思うわよ?」
「どうして?…て」
「?」
「何時からここに?」
「さっきから」
いつの間に、全く気配がしなかった。
「ドクターに能力のことを聞こうとしても無駄よ?機密事項だから貴方には教えられない」
「そう…まぁいいわ、少し疑問に思っただけだから」
まさか私の能力に関することまで機密事項とは。機密が多すぎる、いったいここは何の施設なのだろう。
「そんな事より、今日は槍の練習しないの?」
「ム?あぁ、勿論練習はするわ」
それしかする事が無いのだけれど。
「そ?ならトレーニングルームは開けておくから、怪我はしないようにね」
「わかってる」
そう言って部屋に向かう。部屋には槍が一つとベッドが一つ、槍は刃が立っていない模造品だ。
槍を手に取りトレーニングルームに向かう。姉さんの言うとおり鍵は開いている。
「さて、始めよう」
それから一時間程槍を振っているとトレーニングルームの扉が開いた。
「No.8、食事の時間よ」
そう言って姉さんが入ってくる、もうそんな時間か。正直ここの食事はあまり好きではない。
「了解」
「ここの食事は嫌い?」
「どうして?」
「顔に出てるから」
そんな話をしているうちに食堂に到着した。すでに何人かの職員が食事をはじめていた。
「貴方は席とってて、私がご飯持って来るから」
「わかった」
私は言われたとおり席を探す、少し来るのが早かったのか、意外と空いている。
適当に端の席をとって待っていると、姉さんが食事を持って近づいてきた。
「お待たせ」
「待ってはいないわ」
「そ?まあ食べましょう」
そう言われ、一口食べる、相変わらず不味くはないが美味くもない、そんな微妙な味だ。だが姉さんや他の職員は美味しそうに食べている、私と何が違うのだろうか。
「あまり美味しくなさそうね?」
「正直、微妙ね」
「やっぱり身体の構造が普通の人間とは違うからかしら?」
「え」
「あら、言ってなかったかしら、貴方他の人間達とは身体の構造が違うのよ」
初耳だ、知らなかったが知りたくもなかった。だがそう言われると納得だ、肉体の構造が違うのだから、感じる味が違っていてもおかしくない。
「ごちそうさま」
終始微妙な味だった、何故施設側はそのあたり改善してくれないのか。
食事が終わり今は自分の部屋にいる。
「…はぁ」
自然とため息が出る、今日は驚いた、自分は知らないことが多すぎる。
知りたくもないことを知ってしまった。ここまで秘密や謎が多いとこの施設そのものや職員が何だか怪しく思えてくる。ため息も出るというものだ
「ここはいったい何の施設?」
そう呟いてみた、しかし反応はない、当たり前だこの部屋には私しか居ない。
近くに気配も感じない、姉さんは神出鬼没だから油断出来ないけれど。
「考えても仕方ない、もう寝ようかな」
「ん…なに?」
目が覚めた、時計を見るとまだ深夜だ。なのに目が覚めてしまった、トイレというわけではない、まだまだ大丈夫だ。
「これは、誰の気配?」
そう、自分が感知できる範囲に知らない気配があるのだ。
「まさか、侵入者?」
あり得ない、ここの警備はかなり厳重だからそう簡単には突破できないはずだ。
「それにしては静かね」
そう呟いた時、侵入者を告げる警報が鳴り響いた。同時に足音が近づいてくる。
「8!8は居る!?」
姉さんが慌ただしく部屋に入ってくる。ずいぶん慌てているようだ。
「目の前に居るわ、騒々しいけれど何があったの?」
「侵入者よ、撃退するから早く動きやすい服装に着替えて」
やっぱり侵入者、そんな事よりも今撃退と言った?
「え、撃退?私が?」
「そうよ、だから早く着替えて」
何故私が…まぁ着替えるが。
「それで、敵は何人?」
とりあえず聞いてみる。敵の戦力がわからなければ戦いようがない。
「一人」
「…え?」
「だから、一人」
「嘘よね?」
「本当」
何と。ここの警備員はたった一人の侵入者にやられる程弱かったか?侵入者が強すぎるだけか?
「敵が強すぎるだけよ」
「私はなにも言っていないのだけれど」
「そんな事より早く行きましょう」
「あ、はい」
流された。…まぁいい。
「何…これ」
侵入者が居るという場所に着いたとき、私は驚いた。
建物はボロボロに破壊されているのに警備の人達は重症の人はいても死人は出ていなかった。そして、破壊された通路、満身創痍の警備の人達の真ん中に人影が立っていた。
「あれが…侵入者?」
暗くてよく見えないが、私は能力の一つ[暗視]を発動した。
するとやっと人影の正体が見えてくる。
「…え?」
驚いた。ってさっきから驚いてばかりいるな私。だけど考えて欲しい、誰が想像できる?たった一人でこの施設の警備隊をほぼ壊滅させたのが、私と同じくらいの少女だと。それに…
「あれは…」
少女はまだこちらの存在に気付いて無いようで、立ち止まってキョロキョロしている。あ、少し近づいてきた。
少女が近づいてきたことで姿がはっきり見えるようになってきた。金色の髪に金色の瞳、首にはオレンジ色のマフラー、頭には左右に銀色の角、背中からは銀色の竜翼、そしてお尻のあたりから鱗で覆われた銀色の尻尾。え、嘘でしょう?
あまりの驚きに数秒硬直してしまった。何度目を瞬いても少女の角や翼は消えない、どうやら本物のようだ。つまりあの少女は…
「私と、同じ?」
色や形は違うけれど、あれは確かに私と同じ物。今は隠しているけれども。
少女はこちらの姿を確認したようで視線が私の方に向いている。
正確には私の隣、姉さんに向けられている。
すると少女が口を開く。
「ごめんなさい摩耶さん、待ちました?」
…え?
今何て言った?摩耶さん?摩耶さんて言った?
ヱ?何で侵入者が姉さんの名前を知ってる?何でそんなに親しそうなの?
これはいったい、
「どういうこと、姉さん?」
「ん、あぁ説明してなかったわね」
説明?…まさか!
「私が彼女をここに呼んだのよ、貴方とここから脱出するために」
やっぱり。それよりも
「脱出って、確かにできるならしたいけれど、本当にできるの?」
「ええ、できる。彼女の協力があればね。あとは貴方の意志だけ」
彼女の協力云々はよくわからないけれど、私の意志?そんなの決まっている。私は…
「出たい。こんな退屈な場所はもう嫌」
そう、退屈なのはもう嫌。だからここから出られるなら出たい。
「そう。貴方ならそう言うと思っていたわ。そうと決まれば早く行きましょう、自己紹介は脱出した後でゆっくりとね」
そう姉さんが言って、早くここから離れようとすると不意に私達に声が掛けられる。声を発したのは
「ここから出るのは禁止だと言ったはずだよ、No.8」
「…ドクター」
初投稿です。さらに言えば初めての小説執筆なので誤字脱字等は教えてくれたりすると嬉しいです。
コメントたくさんくれると嬉しいですけれど、全てに答える事は、出来ないかもしれませんご容赦ください。
酷評カモン!(震え声)
主人公の名前は二話か三話で登場します、楽しみにしていてください。
最後に。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!次回をあまり期待せずお待ちください。




