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竜玉翡翠伝  作者: Hifumi
第二章~鳥と馬~
9/9

PART4

前回のおさらい


馬人族の客人となったリュシア。馬人族と宴をし、眠りについた。夜中警護してくれていたのは鳥で、戦の状況について風の噂を伝えてくれた。


しかし、それで朝はどんどんすぎていき…



久しぶりの更新…



 急いで身支度をしたリュシアは、昨夜夕食をとった広場に戻った。


 昨夜の喧騒が嘘だったかのように、広場は静まっていた。


「寝坊しちゃったんだ…」


「そうだな。人間とはこんなに怠け者なのだな」


 急に隣からした声に、リュシアは驚いて、声のした方を見た。


 そこにはライアが厳しい顔をして立っていた。上から冷たい目で睨んでくる。


「すみませんっ…寝坊してしまって…皆さんは何処へ行かれたのですか?」


 リュシアは威圧的なライアの態度に少し恐れを感じて謝ったが、ライアは眉一つ動かさなかった。


「皆は狩りに出かけている。当たり前だ」


「そ…そうですね…」


 気まずい雰囲気があたりに漂う。リュシアは我慢できなくなって、何か喋ろうと思ったが、それはライアに遮られた。


「役に立たない者に飯を食わせるわけにはいけない。ウェンは別にいいと言っていたが、私はそうは思わない。だから、お前には仕事をしてもらう」


『ん…?今…ウェン様を呼び捨てにした?』


 リュシアは少し気になったが、ライアは気にしていない様子なので、聞かなかったことにした。


「…何を考えている?…とにかく、そなたにはこれを作ってもらう」


 リュシアの心を読もうと、ライアが訝しげに彼女を見つめながら、黒曜石を差し出した。


「これは…?」


「槍や弓の刃にする黒曜石だ」


 ライアがリュシアに見本を見せた。見事な鋭い刃先が鈍い光を放っている。


「作り方が分かりません…」


「教えてやる。使えないものを作られても困るからな」


 そう言うと、ライアは作業台のようなものが集まる一角にリュシアを連れて行った


 高めの台の上には、獣骨や木槌などが並べられていた。


「まずは、木槌を直接打ちつけるのではなく、黒曜石の一端に骨のタガネを当て、槌で間接的に打撃を加えて石片をはぎ取る…コツがいるが、やっているうちになんとかなるだろう」


 ライアが説明しながら黒曜石を加工していく。いとも簡単そうにやるので、リュシアは早速作ってみることにした。


 …しばらくして…


「あーっ!まただ…もう無理っ」


 森にリュシアの嘆きが響く。


「五月蠅い。黙ってやれ!」


 ライアは怒気を込めた声で喋ってはいるが、手際は恐ろしくいい。リュシアの失敗した欠片を上手く加工してくれている。


「全然上達してないな…。ウェンより不器用なんじゃないか」


 本人は気づいてないかもしれないが、ライアは小さく呟いた。


「ウェン様って不器用なんですか?」


 リュシアは少し気になったので、思わず訊いてしまった。すると、ライアはリュシアの前で初めて慌てた様子を見せた。


「き、聞こえてたのかっ!?それは…その!!違うんだ!!」


「何が違うんですか?それに何で呼び捨てなんですか?」


 ライアの反応が面白くて、リュシアは思わずいろいろ質問してしまった。


「調子に乗るなっ!人間!」


 ライアは先程リュシアが出した大声より大きく叫んでしまった。森の小鳥が飛び立つ音がする。


 その後は、気まずいほどの沈黙が続いた。



 やがて、太陽が天頂から少し傾いた頃、やっとリュシアは全ての黒曜石の加工を終わらせた。


 台の上の片付けをしていると、ウェンがどこからかやってきた。


「ライア、怒鳴り声が神獣様の森にまで届いたわ。まるで小さい頃に聞いた長様の怒鳴り声みたいに」


 ウェンはよほど面白かったのだろうか、くすくす笑いながら寄ってきた。


「うる…じゃなくて、すみません。神獣様もお怒りでしょうし、狩りもきっと上手くいかなかったに違いない…誠に申し訳ございません」


 ライアは『五月蠅い』と言いかけたが、いそいで訂正した。


 その言葉にウェンは瞳を曇らせた。


「神獣様だってただの獣だもの、1日経ったらそんな些細なことは忘れるわ。狩りはどうなったか知らないけど、蓄えは十分あるし大丈夫でしょう?」


 ウェンの少し棘のある言いようにライアは目を丸くした。去って行こうとするウェンをいそいでライアが引き留めようとしたが、彼女は片手でそれを制した。


「リュシアさん、2人でお話ししましょう」


「…はい」


 漂う異様な雰囲気に、リュシアは戸惑うのだった。




 広場から離れ、少し暗い空き地にウェンはリュシアを連れて行った。


「ごめんなさいね…気分を悪くしたでしょう?それにあなたにまだ玉守様のお話をしていないし…」


 ウェンは少し寂しく笑いながら言った。


「大丈夫ですか…?」


 あまりにウェンの表情が沈んでいるので、リュシアは心配した。

 すると、ウェンは慌てて首を横に振る。


「貴方が気にする必要はないの。本当に些細なことなの。あくまで個人的な…」


 赤の他人であるリュシアに口を出す余地はないと、ウェンは遠回しに言ったようだ。


「…あまり気に病まないでくださいね。良かったら師匠の話をしてください」


 リュシアがそう促すと、ウェンはにっこり笑って話し始めた。


「ありがとう。では始めましょうか」



†‡†‡†‡†‡†‡†‡†‡



 私が初めて玉守様と出逢ったのは、まだまだ幼かった頃…。


 恐らく50年ほど前だと思います。ある晴れた日に、玉守様はこの森においでになりました。玉守様は昔ほどここにいらっしゃる回数は少なくなっていたようですが、皆はとても歓迎しました。


 幼い私は玉守様によく懐いて、薬草を採るのを手伝ったり、木の実をプレゼントしたり…いつも後ろにくっついていました。


 …あの頃はライアも一緒によく遊んだものです。ライアが私をいじめるので…いえ私が鈍臭いからひどく怒られていたのですが、あまりに辛辣なので玉守様にやんわり怒られていました。


 意外ですか?…ふふふ…私は貴方を叱るライアを見ると、昔を思い出して懐かしいのですよ。


 こんなに幼くて無作法な私達でも、玉守様はめったに叱りませんでした。


 玉守様について行って、禁じられている森の出口に近づいて、長に怒られても、玉守様が助けてくださいました。


『私が誘ったのです。彼等は私を手伝おうとしてくれたのですから…いや、実際に色々助かったのです。どうかそこまで彼等を怒らないでください』


 誰よりも綺麗な玉守様にそう言われてしまっては、長も口出しできませんね…。


 竜族が大陸にいた時代はかなり昔なので、竜族の伝説だけ聞いて…少し怖い印象をもっていたんです。


 気位高く崇高な存在…なんて、あの怖い長でさえ畏れ多そうに話すのですから。子供にとっては遠すぎて現実味がなかったのです。


 でも、玉守様は想像していた竜族とは違いました。…いえ、玉守様だけなのかもしれないですね。昔から、この森に訪れる竜族は玉守様だけなのですから。


 確かに玉守様は崇高な存在でした。でも、近寄りがたくはないのです。不思議な輝きを放つ魂が、見るもの全てを惹きつけている…そんな気がします。



 玉守様は春いっぱい滞在される予定でしたので、春の終わりに送別の宴を催そうということになりました。私は大人たちに内緒で、森の出口付近に実る、とても美味しい実を採ることを幼なじみたちと計画しました。


 人間に見つかるリスクの高い森の出口にいくだなんて、怖いもの知らずでした…。


 最初のうちは計画どおりでした。蔓の絡まる中、赤くて美味しそうな実を皆でドキドキしながら採る…こういうことは皆大好きですからかなり熱中しました。


 私はライアに誘われて、さらに森の出口に近づいていました。そこにはたくさん実がなっていました。


 でも、長居をしすぎました。人間に見つかってしまったのです。人間は、私達には訳の分からない野蛮な言葉を叫びながら矢を飛ばしてきました。


 普段から森を駆け回っている私達ですから逃げるのには苦労しませんでした。しかし、私は生えかけていたこの角のせいで蔓に引っかかり…脚を撃たれてしまいました。


 仲間達はとっくに逃げていて、そこにはライアと私しかいませんでした。


 人間は動けない私に近づいてきました。恐らく、私の毛並みが珍しかったのでしょう。私は恐れと痛みで動けずにいました。


 とうとう人間に捕まる!私がそう思ったとき…ライアは人間に飛びついて止めてくれました。


 …かなりの乱闘でした…。人間は刃物を持っていましたから、ライアが勝つ見込みはなかったのですが、彼は本気で戦っていました。


 しかし刃物には勝てません。ライアが限界に近づいたとき、一族の強者達が助けにきてくれました。


 …ライアのおかげで助かったのです。でも一族はライアを責めました…。私はただ白い毛並みをもって生まれただけなのに、大人たちは皆私に気を遣います。


 本当はドジで鈍臭い私が、角を引っかけたせいなのに。彼が悪いと皆責め立てました。


 玉守様に傷の治療をしてもらう間、私はライアに会えませんでした。玉守様は傷の深いライアの世話をしてくださっていたので、よく彼の様子を訊いたものです。


 こんな騒動のせいで、玉守様は滞在を延長されることになってしまったのですが、本当によく私達を治療していただきました。


 私は傷が治ったあと、ライアのところに見舞いに行きました。…それからです。誰よりも仲が良かったはずの私達が、なぜか主従の関係になってしまったのは。


 多分ライアは私が怪我をしたのは自分のせいだと、大人たちの話を真に受けて思っているにちがいありません。


 とてつもなく悲しくて、玉守様に相談しました。玉守様は…


『…恐らく彼は大人たちに貴女を傷つけるなと言われたから貴女の護衛になったわけではないでしょう。これは彼なりの…けじめ…みたいなものでしょう。もう二度と貴女を傷つけないという強い意志の表れです…恐らくね』


 そう仰りました…。


 夏の中旬になって、とうとう玉守様は出発されました。それから何年かおいて、何度か来てくださいました。昔と変わらない容姿と…笑顔と優しさで。


†‡†‡†‡†‡†‡†‡†‡



「…なんだか余計な話をしてしまいましたね…さっきの口喧嘩で気がおかしくなってしまったようです…あまり玉守様の話ができなくてすみません…」


 ウェンは恥ずかしそうに俯いて言った。


「いえ、貴重なお話、ありがとうございました。それと、ライアさんのお話も」


 リュシアがそう言うと、ウェンはさらに俯いた。


「お恥ずかしい限りです…聞いても意味ないでしょう?こんな話は…」


 リュシアは首を横に振った。


「でも、ライアさんの気持ちがわかったような気がしましたよ。ただの怖い人ではないってこと」


 するとウェンは小さく頷いた。


「彼はあの事件で人間に対して、すごく警戒してしまうようになったの…。だからリュシアさんには嫌な思いをさせてしまったでしょう?」


「いえ、警戒の理由さえわかればそこまで嫌とも思いません」


 リュシアの言葉でウェンは安堵の微笑みを見せた。


「ありがとう。彼はそこまで冷たい訳ではないの。狩りに行かずに貴女に石器の作り方を教えたのも貴女の為なのよ」


「そうなんですか?…そういえば、ライアさんはウェン様のこと、呼び捨てにして話してましたよ」


 リュシアは、このことを話すか一瞬迷ったが、ウェンに話してみることにした。


「…まあ!?本当に!?…まるであの頃みたい…」


 ウェンは目を丸くして驚いた。


「もしかしたら、とっても仲がいいんじゃないんですか?お二人は」


 リュシアはウェンに向かって微笑んだ。ウェンはまばたきを繰り返して唖然としてしまった。


「…もし…そうだったら…」


 ウェンがなにか言いかけたところで、たくさんの蹄の音がした。


 夜の宴が始まる時間なのだ。ウェンとリュシアは再び広場に戻るのだった…。



…すみません本当に


サボって…すみません…


師匠の扱い軽いです

師匠どうしたらいいんでしょう

本当に申し訳ない


更新とろいですが頑張ります…


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