偽物友達
咏羅「あ!紗奈おはよう!!」
紗奈が教室に入ると、咏羅が大きな声で挨拶をした。周りも騒がしかったため、目立ってはいない。紗奈もそれに応えて、「おはよう!」と返す。紗奈は、咏羅の座っている席に近づく。
咏羅「数日間学校休むから心配したよ〜」
紗奈「ごめんごめん。インフルだった」
咏羅「よく学校来れてたね。あ!そう言えば、紗奈が休んでる時に、転校生が来たんだよ!」
紗奈「転校生!?」
咏羅は、紗奈の席の隣の席を指差す。そこには、一人の男の子が座っていた。
咏羅「日圭君だって」
その言葉を聞いた瞬間、紗奈は思い出す。
紗奈「え?」
その後、紗奈はゆっくりと自分の席に座る。そして、隣の席の日圭に声をかける。
紗奈「お、おはよう」
ビケ「おう。おはよう紗奈」
その途端、騒がしかった教室が静かになる。
咏羅「日圭君、紗奈の名前、なんで知って…」
ビケ「だって、幼稚園は一緒だったから(大嘘)」
紗奈「え?違…」
咏羅「そうなの!!」
教室に居たクラスメイトが全員、一斉にビケと紗奈の席に駆け寄る。
咏羅「なんか少女漫画によくある展開!!」
男子達「おい日圭!!説明しやがれ!!」
実は、紗奈は校内ではモテモテな方だった。
ビケ「説明って?」
すると、ビケは男子生徒二人に腕を掴まれ、引きずられながら教室の外に連行される。そして数十人の男子生徒が、ついて行った。
ビケ「あーーーー、タスケテーーー」
教室の扉は、力強く閉められる。
咏羅「いや〜、運命じゃない?」
紗奈「いや、今の話嘘で」
咏羅「別嘘つかなくて良いって!」
紗奈は、混乱していた。
紗奈(どういう事?なんでビケが居るの?とりあえず、放課後聞こうかな…)
放課後
ビケ「はぁ〜、疲れた」
ビケは、しんどそうな顔をしながら、カバンに荷物を詰める。すると、紗奈が教室に入ってきた。他の生徒の大体は、もう帰っていた。
紗奈「ビケ…だよね。」
ビケ「お!丁度良いところに。」
紗奈「ビケって、実際に存在してたんだね」
ビケ「仮想人物にするな。」
紗奈「だって、偽って意識内の生命体だと…」
ビケ「その考えはあってるよ。でも、偽が人の意識を取り込むって言ったろ?」
紗奈「あ、やっぱ夢じゃなかったんだ。」
ビケ「うん。まあ、意識内の出来事だから、夢って言うのもあってるかな?で、偽が意識を取り込んだ後、2パターンの状況になる。一つは、その人はそのまま意識を覚ますことがない、植物状態になる。もう一つは、偽がその人を乗っ取る。」
紗奈「乗っ取る!?」
ビケ「そう。紗奈の中に居た偽も、紗奈を乗っ取るために、取り込もうとしていたな。」
その時、紗奈が少し不安そうな顔で言う。
紗奈「えっと…つまり、ビケは偽でしょ?まさか、本人の意識を乗っ取って…」
ビケ「いや、俺は純度100%《嘘》でできている。俺の場合は、少し特殊なんだ。この事例は、他にもないはずだ。」
すると、ビケは一人の生徒の机に向けて歩く。
ビケ「ここに座ってる子、もしかして紗奈とめっちゃ仲良い?」
ビケがそう言って、指を指した席は、咏羅の席だった。
紗奈「うん。この学校で一番仲が良いと思ってるけど…」
すると、ビケは大きなため息を吐く。
ビケ「タチが悪いな。最強の偽も」
紗奈「え?」
ビケは、自分の席に向かいながら話す。
ビケ「さっき言った2パターン目、それはごく稀なんだ」
紗奈「稀?」
ビケ「相当偽が強くならないと、意識を乗っ取って、その人…主を自分の体のように操る事はできないんだ。だから、2パターン目の偽を、俺たち真は《最強の偽》と呼んでいる。」
紗奈「最強…あれ?昨日最凶の眷属って…」
ビケ「ややこしいよな。今俺が言ったのは《最強の偽》、眷属がいるのが、《最凶の偽》だ。この二種類は、全く違う。ちなみに、最強の偽は日本に何体かいる。世界中にいるけど、日本にほ6体かな?」
紗奈「色々ややこしい〜」
紗奈は頭を押さえながら、目をぐるぐるさせる。
ビケ「まあ、その最強の偽が、この学校に居るらしいんだ」
紗奈「…え?」
ビケ「しかも三分の一。」
紗奈「二体って事?」
ビケは、手で親指だけを上に立てるグッドマークをする。
紗奈「やばくない?」
ビケ「まじやばい。ハハッ」
そして、ビケは苦笑いする。
ビケ「で、一体は見当がついた。転校初日、すぐに分かったよ。同じ教室にいるんだから」
ビケは、咏羅の席の方に視線を向ける。
紗奈「え…まさか…嘘、だよね?」
ビケ「エイラは、最強の偽だ。」
その時、教室の扉が開く。
咏羅「あ!紗奈、ここに居たんだ!一緒に帰r…」
咏羅はふと、ビケの存在に気がつく。
咏羅「あ、お邪魔でしたか…」
咏羅は、ゆっくりと教室の扉を閉める。
紗奈「あー!全然大丈夫だよ!一緒に帰ろ!ビケバイバイ!」
紗奈は、急いでビケに手を振りながら、教室を出る。ビケは手を振りかえす。そして、紗奈が見えなくなると、暗い顔をする。
ビケ「いっその事、倒さないほうが気持ちも楽だ…」
ビケ(でも、二体もいるって事は、何かある。何かされる前に、倒さないと…)
ビケは夕日が差し込む教室で、舌打ちをした。
夕暮れの日差しが照らす道を、紗奈と咏羅は歩いていた。
咏羅「いや〜、まさか知り合いだったとは。私、応援するよ」
紗奈「だからそう言う関係じゃ全然ないって〜…」
紗奈は、咏羅と話しながらモヤモヤしていた。
紗奈(ビケは嘘をついている…いや本当だとしても、咏羅はいい親友だ!害を加えるとは、ビケも言ってないし…)
紗奈「じゃ、私こっちだから」
咏羅「うん!バイバイ」
分かれ道で、紗奈は咏羅と別れる。その背中を、咏羅は冷たい視線で見る。
咏羅「明日か…」
次の日、教室
咏羅は、椅子に座る紗奈に近づき、手を合わせながら近づく。
咏羅「紗奈、今日放課後残れる?委員会の仕事、手伝って欲しくて…」
紗奈「うん!全然いいよ!」
すると、隣の席のビケの表情が変わる。それに、紗奈は気がついた。
紗奈「ビケ?なんか顔色悪くない?」
ビケ「あ、いや。大丈夫だよ…」
ビケはそう言って、視線を前に戻した…
放課後
紗奈「で、手伝ってほしい仕事って?」
教室に残った紗奈は、同じく教室に居て、教室の窓枠に座る咏羅に向かって言った。オレンジ色の光が差し込む窓際にも関わらず、咏羅の目のハイライトは消えていた。
咏羅「紗奈、私達って、友達だよね」
紗奈「え?もちろん!」
咏羅「…そこは嘘の方が、まだやりやすかったなぁ……」
紗奈「え?」
その瞬間、エイラは一瞬で紗奈との距離を詰め、紗奈の顔を蹴り飛ばそうとする。その足は、もう紗奈の顔を掠った。
紗奈「!?」
紗奈は、いつの間にか教室の端っこに座っていた。そして、エイラの目の前にはビケが立っていて、エイラの紗奈を蹴ろうとした足を掴んでいる。
ビケ「ふぅ、間に合った」
エイラ「お前が帰るの…確認したはずなんだけどなぁ?」
紗奈は、何が起こっているのか分からず、ポカンと座っている。
ビケ「それは俺のコピーだ。で、お前。なんで紗奈を殺そうとした!!」
その瞬間、エイラはビケに掴まれた足を横に回す。ビケは、黒板まで飛ばされ、黒板には大きなヒビが入った。
ビケ「くっ」
エイラ「あなた、真でしょ。気づいてないの?」
エイラは、ゆっくり紗奈に近づく。
エイラ「紗奈の中の偽は、まだ倒せていない」
ビケ「…は?」
エイラは、足を上げる。そして紗奈に向かって、踵落としを決めようとした。
エイラ「《嘘蹴り》」
エイラの足が黒く光り、紗奈に向かって振り下ろされる。
ビケ「《コピー》!!」
ビケは、手をエイラの方に向ける。その時、ビケのコピー二体が出てきて、エイラを殴り倒す。
そして、エイラを抑える。
エイラ「くっ。」
ビケ「どういう事だ。俺が、眷属を倒し切れていない?」
その時、不穏な空気をビケは感じる。ビケは、冷や汗をかきながら後ろを振り返ると、紗奈が不気味な笑みを浮かべながら、立っていた。
紗奈?「あー、あ。よし、喋れるな」
紗奈はそう言って、顔を上げる。その目は、黒く染まっていた。
ビケ「は??」
ビケは、瞬きを一つする。すると、景色が変わっていた。周りには、無限に続く黒色の階段が、無数にある。
そして、ビケの目の前には、あの眷属が立っていた。
眷属「バカだな。私があの程度でやられるとでも?」
ビケは、すぐに姿勢を低くし、攻撃体制を整える。だが…
眷属「おっと、待て待て。私を殺すと、紗奈も死ぬぞ」
ビケ「…まさか、取り込んだのか」
眷属「いやいや…もっとエグい事をした。」
ビケは、攻撃をするのを諦める。
ビケ「まず、何で生きてる。嘘の塊は、紗奈が壊したはずだ」
眷属「それは偽物だよ。俺の嘘の塊…最凶の偽様の嘘の欠片のある中心部は、もっと下だもん。」
ビケ「まさか、階段が白くなったのは、お前の力か」
眷属「正解だ。この階段は、嘘と真実で作られている。だから、《嘘操作》で表面だけに真実を浮かせて、お前らを騙したんだよ」
ビケ「で、エグい事って、お前、紗奈に何をした。」
眷属「俺は、紗奈の偽ではない。紗奈の母から移動してきたんだよ」
ビケ「!?」
眷属「その時もやったな。俺は、《嘘操作》を使い、脳を操作した」
ビケ「なっ!?」
眷属「安心しろ。紗奈の意識は取り込まない。《《お前に本気を出されたくないからな。》》」
ビケ「…今俺がお前を本気で倒そうとすると、紗奈の脳を破壊させるってことか。」
眷属「そう。取り込んだら戻せねえからね。お前はもう失うものがなくなる。そうすると俺が勝てる保証はない。だから、人質だ。」
ビケ「…長くは持たないだろ」
眷属「まあ、しばらく脳を操作する事はしない。だが、お前が変な事をしたらすぐ破壊する。言ったろ?地獄を見るってな」
その瞬間、ビケの目の前には、寝ている紗奈。そして、自分のコピーに押さえつけられているエイラ。
エイラ「チッ、さっさと殺せば、こんな事にはならなかった。」
すると、ビケはしゃがみ、エイラに話しかける。
ビケ「何故紗奈を殺そうとする。まさか、眷属が原因か?」
エイラ「…そうよ。他の眷属が、動き出したからね」
ビケ「それは、どういう…」
エイラ「一体の最強の偽が、眷属に殺されたのよ。そして、私達のリーダーが、指示した。眷属を倒せって」
その時、ビケは少し青ざめる。
ビケ「取り敢えず、俺はお前を倒さなくてはいけない。紗奈を殺そうとする存在を、近くに居させたくない」
その瞬間、エイラは体を回して、ビケのコピーを振り払う。そして、両足でコピーを回し蹴りして、コピーは消滅した。
エイラ「ごめんだけど、これは非常事態なの」
エイラは、ビケの顔面を横から蹴り飛ばす。
ビケ「ガッ…」
すると、ビケはポケットから、白色のコインを取り出す。
ビケ「非常事態…か。だとしても、紗奈は殺させたくないな!!」
ビケは、白色のコインを噛み砕いた。
エイラ(何あれ…ドーピング??)
ビケ「《嘘玉》」
ビケは、手のひらをエイラに向ける。その瞬間、エイラの腹に、黒色のボールが物凄い勢いで激突する。
エイラ「グッ!」
エイラは、そのボールを何とか受け交わす。その間に、ビケはエイラとの距離を詰める。
エイラ「!!」
ビケ「《嘘拳》!!」
ビケは、エイラを殴り飛ばした。
紗奈「うぅ…」
エイラが倒れる音で、紗奈は目を覚ます。
紗奈「び…ケ?……!!」
紗奈はすぐに起き上がり、倒れているエイラに駆け寄る。エイラは、気を失っている。
紗奈「咏羅…咏羅!!」
紗奈は、涙目でエイラを揺さぶった…
エイラ「……?」
数分後、エイラは教室の床に横になりながら、目を覚ました。
ビケ「起きたか」
紗奈「咏羅!」
エイラは、困惑した。
エイラ「紗奈??」
紗奈「びっくりしたよ…起きたら咏羅が倒れてるんだから…」
エイラ「…」
エイラは不安そうな顔で、うつむく。
ビケ「今、お前を倒してもいいけど、非常事態って言ってたな。詳しく説明してくれ」
エイラ「…眷属が、最凶の偽を解放しようとしている」
その言葉を聞いた時、ビケは頭を抱える。
ビケ「やっぱそうか…だから、眷属が中に居る紗奈を殺そうって事か」
紗奈「え?咏羅、どういう…」
エイラ「紗奈、もしかして夢だと思ってる?…私が紗奈を蹴ろうとしたのも、真実だよ。」
紗奈「咏羅?何を言って…」
エイラ「だから私は!!紗奈を殺そうとしたって言ってんの!!」
エイラは立ち上がり、充血したように赤い目で、そう言った。
エイラ「私と紗奈は、偽物の友達。友達のフリをしてたんだよ、私は。ずっと。一年間ずーっと!!」
紗奈「咏羅…口から、黒い煙が……」
エイラは、何かに気がついた様に、口を塞ぐ。
ビケ「嘘はバレるぞ〜。今はな」
エイラ「…」
すると、紗奈が立ち上がる。
紗奈「本当に、全部フリだったの。私を殺すために、演技してたの?」
一年前、中学校入学式
エイラ(あの子か…)
エイラは、椅子に寂しそうに座っている紗奈に、話しかける。
エイラ「私はエイラ。これから一年間、よろしくね」
紗奈「あ…うん。」
エイラは、この頃から紗奈と偽物の友達になるよう指示されていた。入学は、エイラが入学しないという真実を、嘘にしたのだ。
エイラ「紗奈!一緒にペア組も!」
紗奈「あ、うん」
紗奈は最初の頃、暗い性格だった。でも、咏羅と過ごしていく内に、明るい性格になった。
紗奈「昨日のガチャ出なかったー」
紗奈が咏羅にそう愚痴を言うと、咏羅はドヤ顔で言う。
咏羅「残念。私は一連で出てしまったのだ」
紗奈「は!?何でそんな豪運なのーー。私百連したよ!?」
咏羅「それは、ドンマイ」
咏羅と紗奈は、そうやって笑って来た。昨日までも…
時は、現在に戻る。
エイラ「正直、楽しかったよ。でも、私は最強の偽として…紗奈を殺さなくちゃ…」
ビケ「殺したいと思うのか?」
エイラは、涙ぐみながら、首を横に振る。
ビケ「言葉は正直だ。その言葉が真実なら真実、嘘なら嘘。お前は、紗奈を殺したいか」
エイラ「……いいえ」
ビケ「…真実だな。紗奈もちゃんと、見えたはずだ」
紗奈「うん。咏羅の言葉は、信じるよ」
エイラ「…私、紗奈に何てこと、しようとしてたんだろう…」
紗奈「大丈夫。私、生きてるから」
エイラは床にへたりと座り込み、小さい涙をこぼした。
ビケ「だが、これで解決と言うわけにはいかないんだ。エイラ、少し協力してもらうぞ。もう一体の最強の偽について、教えてもらう」
エイラ「わかった。この学校に居る最強の偽は、私含めて二体、なのは知ってるか。もう一体の最強の偽は、教頭先生になりすましている。名前は、ゾキョウ」
次回予告
ビケ「教頭が最強の偽だったのか…」
もう一体の最強の偽「ゾキョウ」
エイラ「ゾキョウの能力は《偽造》」
そして、悲劇が起きる…
ビケ「ガハッ」
ビケとエイラは気を失う。そして、紗奈が死ぬ…
ゾキョウ「やあ、裏切り者」
偽 第3話へ続く…




