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諸君!これがプロである!!~ゲーム実況者の日常~  作者: 椋木美都
中学一年生編

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 第58話『無類の強さ』

「――ホットが3ポイントでタンドリーが5ポイント!えー凄いじゃん!二人共ナイスゥ!」


「……は?」


「え……?」


「ん?どした?」


ソロマッチ終了後。ホットとタンドリーがロビーへ戻ると、テディが穏やかな声で迎える。しかし二人は、目の前の光景が信じられないと言わんばかりの声を漏らした。


「……いやテディの試合は?」


「ほぼ同時に始まったけど……テディのグループが一番始まるの遅かっただろ。何で俺らより先に戻ってんだ」


『熱戦ウェルテックス祭』においてソロバトルを十五人ずつ三グループに分け、同時進行で試合を行う形式は、主に生放送の円滑な進行を目的としたものである。通常一試合あたりの所要時間は十五分程度であり、これを三グループ順番に実施するとソロバトルだけで四十五分以上かかってしまう。


一方、同時進行にすることで全グループの試合をほぼ同じ時間内に消化でき、配信全体のテンポを維持しやすくなる。また、この方式は大会全体の時間短縮にも大きく寄与する。大会では複数ラウンドに加え、インターバルやインタビューなども含まれるため、試合進行が長引くと配信枠を圧迫してしまう。同時進行にすることで、全体のスケジュールをコンパクトにまとめられるのだ。


加えて、競技の公平性という観点でも同時進行は有効である。もしグループごとに順番で試合を行った場合、後のグループの選手が先に行われた試合の結果を参考に立ち回りを変える可能性が生まれてしまう。同時進行であればそのような情報差が生まれにくく、より公平な条件で競技が行われる。


以上のように、同時進行の形式は配信の質と大会運営の効率、そして競技としての公平性を高い水準で両立させるための合理的な仕組みである。


「だって……終わったから」


「終わった、って……」


「まさか……」


ホットとタンドリーは、先に始まっていた試合が早く終わった理由に気づいてしまう――真っ先に脱落したのだと。ソロマッチは三人の平均でポイントが決まる。脳裏に浮かんだ『三点』という数字に、優勝の望みが潰えたことを悟った。


「あー大丈夫大丈夫。最下位じゃないから!ホラ順位結果見てよ」


テディは気まずそうに言葉を濁すと、スカイコードの画面共有を起動し――自身の配信と二人の前に公式チャンネルの映像を映し出した。


「――ではグループ③の結果を見ていきましょう。こちら!」


「うっわ……すみません。素で引いてしまいました」


「これっ……凄すぎるでしょ。つんよい」


一位、これプロチーム      8キル

二位、古参面ストリーマチーム  1キル

三位、チルアウトレックチーム  1キル――


「いやいやいやいやいや……」


「……ソロマッチっての人数って十五人だよな?」


――その結果を、ホットとタンドリーの心は俄かに受け止めきれなかった。


実況の毒島は手を組み、静かに語り出す。第①、第②グループが互いに牽制し合っていたその頃――第③グループでは、一匹の熊が嵐のように戦場を蹂躙していたと。


解説のイッサ・ヂーチンは怯えを飲み込むように声を絞り出す。自分たちが第③グループへ視点を移した時、既に画面には『CHAMPION』の文字が躍っていたと。


「その時間、まだ十分も経ってなかったんですよぉー!」


「キャーー!」


「あはは。コメント欄も皆怖がってる」


「笑い事かこれ」


ソロバトルロイヤルグループ③――『QH-J』ジェノ、『QH-S』ギバ、『こせゆ隊』まくれな、『これプロ』テディ、『ストロニアンサイト』たろいちろー、『ユニオンストリームU』歌観月天、『らむらすランチ』らむらす、『ロクラメン』ばたえるを含む十五名がこのグループで戦った。


0キル六位で終わったらむらすは口を開く。キルログが滝のように流れ、生存人数が秒単位で削り取られていったと。


「怖ぇよ……俺の味方じゃないアイツが怖ぇよ……」


一キル十四位で終わったギバが証言する。迫り来るテディに十八番の二丁拳銃で『バシュバシュバシュバシュ!』と応戦した。しかし三発を難なく躱され、ショットガンに持ち替えられた直後――ワンマガジンで命を奪われたと。


「はいぃ??」


これプロチームテディ視点での配信コメント欄も『逃げてー!』『災害熊が来る!』『あぁヤバイヤバイ!』『ぎゃー!』と阿鼻叫喚だった。


「まさにジェノサイド。キルで16ポイントを荒稼ぎしたテディ、合計26ポイントを持っていきました!」


「おめでとうございます!あの笑顔で簡単にやってのけるから怖いですね……」


同時進行という運営の計算をたった一体のテディベアが――暴力的なまでの高テンポで撃ち砕いた瞬間だった。


「に、26ポイント……」


「流石に最初の戦犯は帳消しか」


「えへへ……あ、インタビュー呼ばれてるからこのまま聞いといてよ」


運営の準備が整い、進行は各グループのチャンピオンインタビューへと移った。


「まずはグループ①のチャンピオンにお話しを聞いてまいりましょう。聞こえてますかー」


「はい。さがんです」


グループ①では『QH-S』チームのさがんが6キルで一位を獲得した。イッサは小さく拍手を送る。


「おめでとうございまーす」


「いかがでしたか。ソロバトロワチャンピオン!」


「あざす!ソロマッチって他力本願……じゃなくて助け合いなんで!自分がダメでも仲間がカバーしてくれると思って、気楽にやってました」


「イッサちゃんからいかがでしょう」


「序盤で作沼選手をグランザルク(スナイパーライフル)で落とした後、すぐに持ち替えなかったのは何か狙いがあったんですか?」


「えっ気分?」


「何だこいつ」


「あははは!」


「つまり天才ということですね――さがんさんナイスチャンピオンでした!このまま総合優勝、ぜひ掴み取ってください!」


「はい。頑張ります!」


序盤から終盤まで圧倒し続けたさがんのインタビューが締めくくられ、毒島は次なる相手の名を呼ぶ。


「続いてグループ②のチャンピオンと繋がっております。聞こえてますかー」


「はい!お疲れ様です!」


「神流ー!ほんっとにおめでとう!」


グループ②では『ユニオンストリームU』チーム寺岸神流が2キルで一位を獲得した。


「素晴らしい結果です!今の率直なお気持ち、いかがでしょうか」


「はい。実は私、初動で落下死しかけまして」


「えっ」


「落ちかけてたんですけど『これプロ』のタンドリーさんがトンネル引いてくださって!あれがなかったら私ビリで終わってました……!」


「嘘でしょ!?ソロマッチでそんなことやる人います!?」


「でも、それで逆にスイッチ入ったんでしょ?」


「はい。正直、感想は『タンドリーさん本当にありがとうございます』しかないんですけど……次は絶対、自分の手で勝ちをもぎ取ります!」


ホットは寺岸神流のインタビューを聞いて一言。


「……タンドリーまた人助けしてたの?」


「銃と間違えた」


「か、かっけぇ……」


コメント欄が賛否で揺れる中、毒島は最後のチャンピオンを呼んだ。


「最後はグループ③を制したジェノサイド!テディさんです。聞こえますか!」


「こんばんはー。公式配信を見ている諸君!戦犯チームのテディでーす」


「ぶははは!自分で言っちゃうんだ」


「やらかした後に勝ってこそ、真の強者ってヤツですよテディさん!」


「タンドリーが寺岸さん助けたくだり、僕も今初めて聞きましたよ。よかったー26ポイント取っといて」


「イッサちゃんはどうでした?」


「殺しが上手いですね」


「ちょ、言い方が物騒かもです」


三人のインタビューの中で最も笑いが起こる中、毒島は震えそうになる声をなんとか抑えて進行を保った。


「QH-Sチームは現在トップということで、このまま優勝目指して頑張ってください!」


平均値11ポイントでソロバトルを終えたこれプロチームは、総合31ポイントで二位に到達。だが背後には僅差のチームが控えている。


「第四マッチはキルポ上限ないよな?」


「そーだよ」


「らむらすのチームも今24ポイントか……引っ繰り返される可能性も全然あるな」


「……ホント誰が一位獲るかで結果決まるね」


現在の順位結果は以下の通り。


一位 QH-Sチーム        32ポイント

二位 これプロチーム      31ポイント

三位 QH-Jチーム        28ポイント

四位 らむらすランチチーム   24ポイント

五位 ストロニアンサイトチーム 23ポイント

六位 ロクラメンチーム     21ポイント


六位の『ロクラメン』チームを含め、七位『ユニオンストリームU』チームと八位『こせゆ隊』チームにも優勝の可能性は残されているが、現実的には相当な奇跡が必要な状況だった。


そして上位勢にとっても、最終試合は一瞬のミスも許されない展開となっている。『これプロ』の三人は、目前に迫った優勝を掴むべく、改めて気を引き締めるのだった。

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