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諸君!これがプロである!!~ゲーム実況者の日常~  作者: 椋木美都
中学一年生編

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 第44話『楽しんで学んで作って』

幸樹と蓮夢が警察官として働いているその頃。糸哉と敦斗はサンドイッチ屋のキッチンスタッフとなり、独自のサンドイッチ作りに挑戦していた。


四種類のパンから一つを選び、肉や野菜などの具材を挟んで、好みのドレッシングをかければ完成である。


「あれ。テディ肉入れないの?」


「今たまごサンドの気分ー。で、敦斗それは……山賊サンド?」


「俺が好きなモノしか入ってないよサンド」


「終わってるよー」


糸哉はたまごフィリングを絞りながら隣を見る。自分が店のたまごサンドを忠実に再現している横で、親友はツナにハム、ベーコン、サラミを重ね、しかも野菜抜きという我儘極まりないトッピングを生み出していた。


――それを鬼ビジュで作ってんだからタチ悪いなー。絶対ギャップ萌えになってるじゃん。


彼は帽子に髪を隠していても、同じ参加者の女子たちの視線を一身に集めていた。


作業場はガラス張りで、外から体験中の子どもたちの様子が見える造りになっている。そのため、ふと顔を上げようものなら――我が子を撮影していると思しきカメラのいずれかと目が合ってしまうのだ。


――ライアンが動画撮ってくれた時もテディとピースしたかったけどな……。


ライアンが幸樹たちの方へ行った今、目の前に知り合いの家族はいない。敦斗はあの中のどれかのカメラが自分を映しているのではないかという、曖昧で小さな不安を拭いきれずにいた。


十分後。糸哉は完成し持ち帰ったレタス、トマト、ピーマン、オニオン、たまごに塩コショウをふったサンドイッチを包み紙から少し出す。そして反対の手でスマホを員カメラにした。


「ホラ撮ろ」


「え!」


敦斗は慌てて我儘サンドを出し、糸哉とツーショットを撮る。そのまま、自分で作ったそれを口に運んだ。


「わぁ。敦斗のお母さんに送ったら『とっても美味しそうな憎々(にくにく)サンドね(怒)』って返信来たよ」


「速攻でチクるじゃん!誤字怖っ!」


――写真……ホントさぁ。それを指摘する隙見せないでやるんだからタチ悪いよなー。


察しのいい親友は、あくまで自然を装って敦斗を気遣ってくる。敦斗はそのくすぐったさを誤魔化すように、憎々ならぬ肉肉サンドを頬張った。


「――ちょっといいですか」


「え?」


「職務質問です」


二人が振り向くと、警察官の上着と帽子に身につけた幸樹が警察手帳をかざしている。警察官となった服部兄弟は、事件現場周辺で聞き込みを進めている真っ最中だった。


「ふぉれっふぇひんいんぇすよえ(それって任意ですよね)」


「ん、ふぉふふぁふぁふぉれふぇ(じゃ、僕らはこれで)」


「汚……」


――てか敦斗が作ったサンドイッチ肉とツナしかなくね?野菜先食ったのか?


「こ――巡査。お食事中のようですし、今は邪魔をしない方がよろしいかと」


「この犯罪者予備軍が……命拾いしたな」


「今ボソッとあるまじきこと言わなかった?」


「この警官悪徳だよ!」


「喋れんじゃねーか!」


四人は警察官の捜査を見物した後に合流し、糸哉たちは送電線の点検を行うラインマンの仕事と科学研究所での冷却スプレー作りを体験した。


「次は裁判所?」


「うん。皆は裁判長、裁判官、検事、弁護士のどれになりたい?」


うどん屋で仕事体験を終え、ライアンも隣の店で買ったうどんを食べる。昼食を囲む頃には、話の中心は次のアクティビティになっていた。


「敦兄なんかやりたいのあんの?」


「俺?は……」


――待って?ここって蓮夢君が裁判長やりたいから行くワケで、俺が検事か弁護士のどっちかやったらテディか幸樹が俺の敵になる……。


詭弁を自然体で並べ立てる糸哉と、理詰めで突き刺す幸樹。たとえ自分に有利な罪状であっても、敦斗はその二人と真正面から言葉を交わす自信がまるでなかった。


「俺は裁判官行こっかな!」


『あっ逃げた』


「じゃ俺が検事でテディ弁護人な」


「オッケー」


こうして彼らはそれぞれの職業に合った服装とバッジを着け、法廷に立つ。今回、審理される内容は――――リトルワークスのイメージキャラクター『トゥナー』の自作ステッカーを、許可なく二千枚も各所に貼った事件だった。


――何その事件怖っ……。


開廷を待つ法廷には、言葉にできない緊張が満ちていた。傍聴席の最前列に座るライアンも、真剣な面持ちでビデオカメラを構えている。


検察官の幸樹は書類を静かに整え、弁護人の糸哉は被告人役のスタッフに微笑みかける。裁判官席はまだ空だ。その空席が、かえって重みを感じさせている。


ただ、裁判官が入ってくるその瞬間を――全員が息を潜めて待っていた。


「――まもなく裁判官が入廷されます。ご起立ください」


全員が一斉に立ち上がると、裁判長の蓮夢と裁判官の敦斗がゆっくりと入廷する。


「それでは、これより刑事裁判を開廷いたします。被告人、前へ出てください」


木槌の乾いた音が鳴り、法廷は一層静まり返った。張りつめた空気の奥に、これから始まる審理の重さが確かに感じられる。


被告人役のスタッフは、神妙な面持ちで証言台に立った。


「まず、検察官。罪状を述べてください」


裁判長の促しに応え、検察官の幸樹は短く息を吸った。


「起訴状を朗読します。被告人は一月一日から六月一日にかけてリトルワークス中央街区および周辺施設において、リトルワークス公式キャラクター『トゥナー』の自作ステッカーを、許可なく合計二千枚貼付しました。その結果、建物や公共施設、住民の敷地の美観を損ない、清掃作業および修復費用を生じさせ、街の管理業務を大きく妨害しました。これはリトルワークス刑法第12条『建造物損壊および管理妨害罪』に該当します。以上です」


検察官が着席し、続いて罪状認否に移る。


「被被告人、起訴内容に間違いはありませんか」


「……はい。間違いありません」


裁判官が被告人への確認を促すと、被告人は悲壮感迫る表情ではっきりと認めた。


――ここドラマだと判決の次に緊張するとこだ!ひゅーひゅー!


蓮夢がワクワクしている中、敦斗は余裕綽々の弁護人――糸哉を見て嫌な予感がした。


「弁護人、何かありますか」


「はい。事実は認めますが、被告人の動機には特筆すべき情状があります。被告人の行為はリトルワークス及び『トゥナー』への純粋な敬愛の情に端を発したものであり、悪意や営利目的は一切存在しません。寧ろ独自の広報活動によって街を活性化させようという、歪ながらも献身的な意図に基づくものです。この点、寛大な裁定を求めます」


「!?」


弁護人が『これは単なる器物損壊ではなく、行き過ぎた愛の事件だ』と補足した瞬間、法廷の空気がわずかに変わった。


先程まで厳格だった視線に、迷いと考慮の色が混じり始める。


――アイツ……!そっちが台本無視すんなら俺だって!


()()()()()()()()()()()に、検察官は一拍置くことすらなく立ち上がった。


「裁判長。本件において審理すべきは被告人の主観的な心情ではなく、現に行われた客観的な破壊行為そのものです」


弁護側が持ち込んだ『愛』という情緒的なテーマを、検察官は容赦なく切り捨て、再び冷厳な事実の土俵へと引き戻した。


――ええぇ!?いきなりアドリブ!?これ、俺なんて言えば……!


審理を滞りなく進める――それが裁判長である蓮夢の役目だった。だが想定外のアドリブに対応しきれず、言葉に詰まってしまう。


『次男、俺の言葉に続け』


そのとき、耳元のワイヤレスイヤホンからシェンのアシストが届いた。


「……!け、検察官の指摘はもっともです。弁護人の主張についても、後の証拠調べや、被告人質問の中で、具体的に検討していきます。では、証拠調べに移ります」


――あっぶねぇー!


敦斗と蓮夢が胸をなで下ろしている間に冒頭陳述と証拠提示は終わり、審理は証人尋問へと移った。


参加者の一人が検察側証人として呼ばれ、証言台へ進み出る。


「証人、あなたは当日、何を目撃しましたか」


「建物の壁やお店のシャッターに、同じ女の子のステッカーをこの人が何枚も貼っているのを見ました」


「許可を取っている様子はありましたか」


「いいえ。周りを気にしながら急いで貼っていました」


検察官が「以上です」と締めくくり、続いて弁護人による反対尋問が始まった。


「証人、あなたがその様子を見たのは何時頃ですか」


「午後八時頃です」


「周囲は明るかったですか」


「……街灯はありましたが、少し暗かったです」


「距離はどれくらい離れていましたか」


「え。ちょっと……に、20メートルくらい……?」


ここで糸哉が台本にないアドリブの質問を投げかけると、証人の口調は明らかに乱れた。しかしその証人――参加者である十一歳の女子は、開廷前に糸哉から『僕らのアドリブに付き合ってくれたら、あの爆イケお兄さんと写真撮れるよ』と耳打ちされていたのだった。

少女は裁判所のアクティビティが終わった直後、次の回に参加する予定の敦斗(爆裂イケメン)とすれ違って一目惚れしました。

少女「ママ!アタイもっかいここやりたい!」

ママ「でももう証人しか出来ないよ?」

少女「いいから!」

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