第22話『ウルトラタンドリーの人でなしコース』
今回は回避が間に合わず、ゲームオーバーのカウントが1増える。敦斗はすぐ気持ちを切り替えてメテオをスタート地点に戻した。
「んー!」
「危な」
「惜しい……」
「最初のコロコロうざっ!」
またコロコロが接近し、メテオは紙一重で躱す。その勢いのまま走り抜け、四角いコンクリート製の敵キャラクター『ズドーン』が待ち構える地帯を突破しようと考えた。
「うおー!」
「いーね。後ろのズドーンが足場破壊する前に進めてる」
「待ってこの先崖だ!ジャンプするよ!?幸樹いい?」
「フッ」
「いいかって聞いてんのー!?」
敦斗が鼻で笑う幸樹に叫び、メテオが跳び出した刹那――隠しブロックが出現し、彼の跳躍を阻んだ。
「しかも落ちた!そのまま!奈落!」
「おいメテメ初心者か?こんなの王道中の王道だろ」
「いやぁ詰まってるねー。悪意の美学が」
――タンドリー凄いウキウキしてる……分かるよ。ホットの反応面白いもんね。
糸哉が幸樹母から差し出された飲み物を受け取っている間も、敦斗の奮闘は続いていた。
「こんなん覚えゲーでしょ?先に隠しブロック出して……」
メテオが隠しブロックの上からジャンプすると、落下地点に設置されたテレポートブロックに吸い込まれる。そして転移した先には――
「ギャーー!」
「あっ死んだ」
――食人植物の敵キャラクター『ビックガブリフラワー』が待ち構えていた。
「いいねー。罠がマグマやトゲとかじゃなくてガブリー置いたのめっちゃいい。画面映えするし」
「何で実況者目線?」
「てかどこにテレポートしたのかも分かんなかった……」
――とにかく大ジャンプで避けるっきゃないか。俺もテディもアクションゲームは特別上手いってワケじゃないからな……。
敦斗自身はそう評価していたものの、実際のところ開始後に目立つ凡ミスは少ない。幸樹は同じ失敗を繰り返さない安定したプレイを続ける彼を見て素直に感心した。
――コイツ思ってたよりやるな。崖の距離も結構遠めにしたけど普通に行ったし。見ててあんまストレス感じねぇ。それに全部綺麗に引っかかってくれんの気持ちっ。何回も喰らうと早く次行けってなるけど。
「えっえっパワーベリー出た!」
階段でメテオがジャンプすると、隠しブロックからメテオが強化されるアイテム『パワーアップベリー』が出現した。
「おー!これミラクルじゃない?どうですかタンドリーさん」
「非常にラッキーですね」
メテオが明らかなお助けアイテムを取り、パワーアップした次の瞬間――触れれば即アウトの棘付き鉄球が、強化を嘲笑うかのような物量で上空から投下された。
「ヒャー!」
「ブハ……!!」
「アハハハ!いいねいいね!製作者の本性出てるよ!」
「くそー!俺の喜び返せ!こんなもの無くてもクリアできらぁ!」
メテオがアイテムを見送ると、急な下り坂が画面の端まで続いていた。その斜面には等間隔に並んだコインがきらりと光っている。
「この坂滑った先に中間ポイントあります!」
「おっ予想してる」
――僕がタンドリーなら落ちた先に罠仕掛けるけど。
「早くやれよ」
「ホット、行きまーす!」
敦斗はつい幸樹の前で自分のことを『ホット』呼びしてしまうが、幸いツッコまれなかった。何故なら――
「はいはいこのま、マァーー!?」
「やっぱり即死罠あったー!」
「アハハハハハ!敦斗っ……いちいち叫ぶのやめろ!面白いだろ!」
――その先に待つ罠に引っかかるかどうかのほうが重要だったからだ。
普通に坂を滑ると下に配置された剣山の穴に落ちてしまうので、今度は素直に歩いて下る。
そしていかにもな移動ダクトが現れ、メテオは希望を胸に飛び込もうとするが……。
「……あの、タンドリー?」
「何」
「テラコッタブロックが邪魔でダクト入れません」
「どうしてだろうな」
「そもそもファイヤーバーの配置が地獄だよ!敦斗ここ抜けれる?」
次のステージへ移動するための移動ダクトはテラコッタブロックで塞がれており、パワーアップ前のメテオでは壊せない。またダクトの周りには、中心の支点から火の玉が棒状になって回転する障害物『ファイヤーバー』が五本も配置されていた。
――駄目だ。そもそもファイヤーバーが密すぎて行けないし。あれを壊すにはやっぱパワーベリーがないと……。
お馴染みのスタート地点に戻り、メテオがコロコロを避けたその時。糸哉と敦斗の電球が弾けた。
「ねぇ待って……もー!」
「いやぁ……やられたねー。言うてここまで難しくなかったのはこの為だったんだ」
「ん?敦斗マジロボール持ってくのか」
「これ必須なんでしょ!?ずっっと黙って俺たちを騙してたなぁ!?」
幸樹の爆笑が何よりの答えだった。メテオはマジロボールを両手で持ったままダッシュとジャンプを繰り返してズドーンとテレポートブロック、パワーアップベリーを避ける。
――ここまで高度なジャンプ操作が必要無かったのも頷けるなぁ。両手塞がってたら普通のジャンプしか出来ないからね。
糸哉はいやらしいさ全開のステージを見て、幸樹の性格を新たに更新した。
「ちょ、テディ交代。俺ここ初見じゃ絶対無理」
「はいはい」
敦斗はテラコッタブロックをマジロボールで破壊してすぐ糸哉にコントロールを渡そうとするが――
「うわぁー!ボールがぁ!!」
「踏んで止めて止めて!」
――投げたマジロボールが左右の壁を往復し、まさかのセルフ即死ギミックが完成してしまった。パワー前のメテオはテラコッタブロックと同じくらいの脆さである。
マジロボールが当たってゲームオーバーになる――夢を見た三人は、黙々とやり直す敦斗を温かい目で見守った。
「これ怖いのがさぁ。投げるとこ辿り着く前にコロコロが復活しそうなんだよね」
「さっきも危なかったよな。あ、これ夢の話か」
「待って?じゃあ一旦置いて復活するの待つわ」
敦斗の慎重さが実を結び、無事安全な状態で糸哉にバトンタッチすることに成功しる。
「やっぱテディうめぇ……」
「敦斗が初見殺しポイント全部踏んでくれたお陰で楽に進めるよー」
糸哉が操作するメテオが地獄のファイヤーバーゾーンを抜けて移動ダクトに入る。ちなみに挑戦回数はたったの二回だった。
「……もっと苦しめよ!ここ心折る気で置いたんだぞ!」
「観察は金なりだよ。じゃあここからはまた敦斗やって」
「いいの!?サンキュー!」
糸哉は笑いながらオリジナルの諺を作り、敦斗と場所を交代する。そして迎えた第2ステージは――
「……!?これ消える足場じゃん!」
――足場が一定のリズムで出現と消失を繰り返す『チカチカブロック』だった。
「後半はそこまで長くない」
「てことはこの点滅ブロック抜けたらゴールってこと?」
「…」
「正解!」
「テディはこれ作ってねーだろ」
メテオは『チカチカ』と鳴る音に合わせてジャンプし、出現した足場に飛び移る。途中途中で隠しブロックに阻まれてやり直すも、どうにか休めるポイントに到達した。
「チカチカブロックの配置さ、よく見たら凄い意地悪くない?」
「ん?」
「す……ごくセンスいいね!」
「ぷっ。動揺してジャンプ失敗してる……。色んなとこに置いてあるからぱっと見どこが正規ルートなのか分かんないよね。敦斗は勘で正解引いてるけど」
加えて、ズドーンが落下ではなく横方向から突進し、ガブリフラワーの亜種『ファイヤーガブリフラワー』が口から火の玉を放つ。メテオのいる地点は終盤らしい混沌に満ちていた。
「ああっ!シビアなとこに棘付きブロック……!」
「でもそこ超えたらゴールじゃない?」
糸哉の予想通り、チカチカブロック地帯を超えた先には開けた地面とゴールテープが待ち受けていた。普通はそのまま突っ走るところだが――
「うわこの妙な余白?絶対何かあるって!」
「まぁあんだけ仕掛けておいて最後に何も無いは……いや、そう思わせることこそがタンドリーの思う壺かもよ?」
「さぁな」
――初見殺しの罠を幾度となく喰らった結果、敦斗の中には強い猜疑心が芽生えていた。
「もう怖いっ……ここで終わりたい!またあのチカチカブロック最初からやりたくないっ……!?」
メテオが慎重にジャンプすると、隠しブロックからパワーアップベリーが出現する。見覚えのある演出を目にして、敦斗の表情に笑みが戻った。
――ラッキー!これ取ったらまた上から鉄球降ってくるんでしょ!?
「もらったぜタンドリー!」
メテオがパワーアップベリーを取らずにゴールへ走り出したその時。空から巨大なズドーンが落下し、ぺしゃんこになったメテオの代わりに敦斗が叫んだ。
「イヤァー!メテオー!」
「あっははは!もうホラーだよ!」
「ふっ……疑うまではよかったのにな」
最後の初見殺しが狙い通りに決まり、幸樹は満足そうに鼻を鳴らした。
正解はパワーベリーを食べる→ズドーンをパワーベリーの効果で1回耐える→そのままゴール。




