21 復讐の幕開け
遅くなりほんっとうに申し訳ありません!これからは『私の婚約者は鬼でした』と交互に毎週金曜日投稿していきます!ご了承ください
やがて馬車は我が家の前で止まる。
馬車から降りた私はちらりと柵の間から見えてしまっ
た妹の姿に足がすくむ。顔がこわばり、目を逸らした方がいいのはわかってるのに首が動かない。
徐々に乱れていく呼吸。
そんな時にふわりとよい香りがしたかと思えば私の視界は暗い色が覆っていた。
耳元で誰かが囁く。
「大丈夫だ。息を全て吐いてゆっくり目を閉じろ。」
私は言われるままに目を閉じて息を吐いてゆく。
「そうだ。そうやってオレがいいって言うまで吐き続けろ」
私はその後も引き続き息を吐き続けた。
しかし、いつまで待っても合図がない。
「…っぷはっ!これ、いつまで続けたらいいの⁉︎」
「はっはは!」
苦しくなって思わず息を吸うと、耐えきれないように笑い出した紅炎の顔が目に映った。
「お前は固い顔じゃない方がよく似合うよ」
そういうとポンと私の頭を軽く叩く。
…もしかして紅炎、私を元気付けようとしてくれた?
じわり、と心が暖かくなる。自然と笑みが溢れた。
「そうだね。ありがとう紅炎!」
「っおお…」
礼を言った私からさっと目を逸らす紅炎。
え?なんか変なこと言ったかな?
顔赤いし、やっぱりなんか怒らせるようなこと言ったのかもしれない。
「ぐえんっ」
「ほら、翠零ちゃんは先に入りなよ」
謝ろうとした声は玄瑞の声にかき消される。
私は少し不満げに玄瑞の方へと顔を動かした。
玄瑞が笑みを浮かべる。
「自分たちはちょっと用事があって少し遅れてくからさ。君も準備があるんじゃない?」
「う…まぁ…」
確かに持ち出せなかった物や、一度あの人たちと話をしてみたいとは思うけど…。
「ほらお行き。
大丈夫、自分たちは必ず君の元へ行くから」
玄瑞に強く背中を押され(物理的に)私はよろめき門の前に立つ。
逃げちゃいけない。きっと、あの人たちは急にいなくなったと思いきや、ふらっと帰ってきた私を見て烈火の如く怒り出すだろう。
それでも向かい合わなければならない。これからの自由な生活の為に。
私は一度、5人を振り返ると一歩踏み出した。
「門を開けてください。
お父さまにこう伝えて。
翠零が来た、と。」
◇◇◇
「なぜ出ていった⁉︎」
私をみた両親が一番最初に言った言葉がこれだった。お帰りでもなく、無事でよかったと安堵するようなそぶりもない。けれどその反応を見て、よかった、と思った。
わたしの、大嫌いな家族の姿だ。
これで迷いなく復讐できる。
基本、人を傷つけたくない。傷つけられてもある程度のところまでは我慢することができる。そういう環境で育ったから。
それでも、私が家族から受けていた傷跡はとっくに許容量を超えていて、私はもう我慢の限界だった。
許せない。
許さないでもなく、許せない。
彼らに私は十数年間人としての尊厳を権利を生活を心の平穏を奪われ続けてきたのだ。
私がこれから彼らにする復讐なんて、私がずっと耐えてきたものに比べたら遥かに簡単で我慢の効くもので優しいものだった。
私は笑う。
「そんなの自分で考えたらどうですか?」
「親に向かってなんだその態度は‼︎」
私はそのあまりにも身勝手な言葉にプツンと何かが切れる音を聞いた。
「親?今更何よ!親の義務すらまともに果たしていない奴が‼︎親らしいことなんて何一つしてくれなかったくせに!親の愛情すらかけらも与えてくれなかったくせに!今更になって私の親だなんて名乗らないでよ!」
涙が一条頬を伝った。
けれど、それを彼らのために流した涙を拭う労力さえ惜しくてそのままにする。
すると父は少しだけ怯んだ様子を見せた。
「っ!ま、まぁいい。この話はあとだ。
麗凛の婚約が決まったのだ。今からその方々がいらっしゃる。
お前には見当も付かないだろうなぁ」
父が嘲笑う。あぁ、麗凛の婚約だと思ってるんだ。
「皇子さま方だ!しかも五人が同時に名乗り出たのだ!
麗凛は妃となるのだ。国母となるのだ!お前とは到底価値が違う!うちは妃を輩出した家となり、格があがる!皇子と恋仲だったと言われた時は驚いたが…」
麗凛がぴくりと反応する。
麗凛は、嘘をついている。あの人たちがうちを訪れ麗凛に会ったことはない。
きっと、接点のなかった殿上人から婚約を申し込まれたことを訝しんだ両親が麗凛に聞いた時、とっさに恋仲だったなどと嘘をついたのだろう。
「お前は離れに引っ込んでいなさいな。皇子さま方に色目をつかわれちゃ大変!」
私はまた笑う。
「あらやだお義母さま。身分差のある麗凛に婚約を申し込むほど愛しているんですもの。私が色目を使ったところで揺らぐような方ではないわ。それとも、皇子さま方を疑ってらっしゃるの?」
それは不敬だと、裏に含ませた私の言葉に母は顔を赤くして怒鳴った。
「五月蝿い五月蝿い!いいわよ、じゃぁ、部屋に居なさい!でもお前は後ろで控えていなさいよ!絶対、前に出て声を出すことは許さないからね!」
やった、部屋に居続ける許可を得た。これできっとあちらも動きやすくなるだろう。




