19 私の願い
「自由に、なりたい」
私は、そう呟くように言った。
皆は黙っている。ちなみに相変わらず白嵐くんは寝たままだ。蒼風はしっかりと私の目を見る。
「具体的には?」
「家から出たい。縛られたくない。普通の町娘みたいに働いてみたい。
自由に恋して優しい人と契って、
────本当に愛してくれる家族が欲しい。」
は、と息を呑む音が聞こえた。
「それが、私の、私だけの願い」
言い切った。初めてちゃんと口に出した私の願い。夢。
これを叶えるためにいろんな根回しをしたり、努力してきたんだ。こんなところで潰れてたまるか。
「ならば僕たちはその願いを叶えよう」
「‼︎白嵐くん?」
突然した声に振り返ると先ほどまで眠っていた白嵐くんが立っていた。
私はそっと目を少し逸らして問う。
「願いを、かなえてくれるの?」
「あぁ、君が望む最高の形で君の願いを叶えよう」
蒼風が笑みを深くする。
「そんなこと言って、どうせまた…」
「いいや、あんなことには二度とさせない」
きっぱりと言い切る玄瑞。皇子なのにこんなにキッパリと言い切っていいのかな?いつか言質て揚げ足
取られそう。
すると月が私に手を差し伸べてきた。
その笑みは深く、思慮深く、そして挑発的だった。
「そうだ、翠零。
────だから、俺たちと契約を結ばないか?」
「契約…?」
「あぁ、俺たちの期限付きの婚約者になって欲しいんだ」
◇◇◇
「期限付きの、婚約者?」
「そうだよ」
すると白嵐くんは目を伏せた。
「君は自分の人生を誰かに縛られたくない。でも僕たちは生きるために王を選んでもらわなければならない。
だからこういうのはどう?
一年間僕らの婚約者として候補者を見極め、一年後、
番の儀式を行なって欲しい。
これまでは昨日言った通りだ。
ただ、昨日と違うのはその後の話。
儀式のあと、一ヶ月ほどは妃として後宮にいてほしい。
でも、一ヶ月を過ぎたらここを出て、ただの町娘として生活すればいい。
翠零は無理が祟ってなくなったことにすればいい。
そうすれば追手はもうかからないし、常に家の者の目を気にしながら外を歩くことも無くなるだろ
望むならその後住む場所や職、暫くの生活のために…そうだな、二億帮くらいあれば十分?」
そこからはもう僕たちは関わらないから、と白嵐くんは言った。
「に、二億⁉︎そんなホイホイと…
じゃなくって、そんなこと言ったって、私が抜けた穴は、どうするの?」
「新たな妃を入れればいい。
…昨日言った通り、俺たちの妃になりたい奴なんて、
そこら辺から湧いて出てくるほどいるんだから」
月は机に肘をつくと気だるげに呟いた。
「なんで一ヶ月なの?」
「それは俺が説明しよう」
玄瑞はスッと洗練された仕草で挙手した。
「番には儀式を終えたあと、力の奉納や、一ヶ月間の祈りなど、ここでしかできないことがあるんだ。だから一ヶ月。」
「なるほど」
私はふむと考え込む仕草をする。
すると月がまた更に笑みを深くした。
◇◇◇
「翠零、お前にとっても悪くない条件のはずだ。
────俺たちと契約をしないか?」
再度聞いてくる月。
自由になれる。関わらない。何より────
二億。
おっとあぶないあぶない、涎が出てくるとこだった。
私は何食わぬ顔で顔をあげると一人一人をしっかりと見ていく。
みんな真剣な顔つきをしていたが、一人だけ挑戦的な笑みを浮かべていた。
…こんな好条件飲まないはずないでしょう?
「私は
────あなたたちと契約を結ぶ。」
そう言って私はしっかりと月の手をとり、握る。
すると月は今までとは違う少し楽しげな嬉しさが滲んだ顔で笑った。
初めてみる、色づいた笑顔だった。
ちなみに帮はほぼ日本円と同じ価値だと思ってください!
一帮→一円




