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西遊異譚  作者: こいどり らく
第三章
50/51

幕間




「あなたが救えるのは命じゃない」

 だからあの時、助けを求められたのは三蔵だった。




******




 袈裟を身に付けた少年と見間違えられそうな少女が、鬱蒼と茂る木々の間を足をもつれさせながら一人ひた走っていた。昇る月の光よりも顔色を青白くさせ、今にも倒れそうなその少女こそが望まれた玄奘三蔵だ。足が萎えそうになってよろける度に、三蔵の身を支えるかのように手首に嵌められた腕輪から、しゃらんと涼やかな音が鳴る。

(助けなきゃ)

 涙が滲む眦に力を込め、ぼやけそうになる視界をどうにか押し留めた。

「……助けなきゃ」

 擦りきれるような声がこぼれた。

「助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ」

 繰り返されるのは、うわ言だ。

 彼女は、彼女自身に言い聞かせるために、出来ないと分かりきっていることをただ繰り返す。そうしなければ、保てないものがあった。

「助けなきゃ」

 見捨てたわけではない。助けたい。助けなきゃ。できない。

「助けなきゃ」

 助けたい。できない。

「助けなきゃ」

 覚束ない足下に踏めば消えるような月明かりが絡みついては、茂みに捕らわれそうになる足を救って進ませる。まるで導かれるように。

(なんで?)

 なんで私なんだ。

 一人になっても歩みを止めることは出来ない。進まなければ。望まれた。望まれている。

 救済を。救いを。助けを。

 三蔵は強く奥歯を噛みしめた。ずきりとこめかみに痛みが走る。

(助けられない、のに?)

 大事な人を一人すら。

 何かを救えるというのなら、世界よりも人がよかった。



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― 新着の感想 ―
連載再開ありがとうございまあああああああす!!! 2話同時というサプライズにあえて2話目読む前に感想を書くという暴挙! 三蔵が! 何があったの!! たったひとりで!!! 大事な人!!!!
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