第9話【ギルド結成】
前回、 清火が放置された次元迷宮の攻略を終えて数日、 相変わらず清火はいくつもの次元迷宮を攻略して回っていた。
しかしそんな清火の生活に変化が現れていた。
「……またか……」
次元迷宮の攻略帰り、 清火の家の前で何人もの人が待ち伏せしていた。
最近こればっかり……ギルドの勧誘やらマスコミからのインタビューやら……こうなると予想して公開を遅らせておいてよかったよ……本当に……
清火が放置された次元迷宮の攻略を終えてすぐ、 協会は公に清火の攻略者の情報を更新し、 公にモルスとして名を広げたのだ。
その結果世間は大騒ぎ、 数年ぶりのSランク攻略者の出現で世の中のギルドは清火の勧誘に必死になり、 マスコミも清火へのインタビューで競争している。
「はぁ……仕方ない、 あの手を使うか……」
そう言うと清火は周囲の時間を停止させた。
その隙に清火は家へ入った。
……まさかこんなことに能力を使うことになるとは……これまで色んな魔物の能力を奪ってきたけど……こんな下らない事に能力を使ったのは初めてかも……
そんな事を考えながら清火は自室のベッドに横たわった。
「はぁ……こんなのが続くなら……拳一さんの言う事を聞いた方がいいかなぁ……」
この状況になる前、 清火は拳一からあるアドバイスを受けていた。
…………
数日前……
「清火様、 公に貴女の情報を公開されたらまずはギルドに加入するか設立することをお勧めします……」
「え……何故です? 」
「Sランクの攻略者が現れたとなればマスコミや他のギルドは清火を独り占めしようと必死になります……そうなれば清火様の活動が大幅に制限されてしまいます……しかしギルドに所属していればマスコミやギルド勧誘による騒ぎから身を守ることが可能なんです」
なるほどね……一度ギルドに所属してしまえば勧誘を諦めるギルドだっているだろうし、 マスコミによる押し掛けもある程度は制圧できるって訳ね……
「なのでギルド設立などを検討することをお勧めします……」
「……考えておく……」
…………
……なんてあの時言ったけど……ギルド設立かぁ……
ギルドの設立には条件があるのだ。
一、 最低でギルドメンバーは三人いなければならない。
二、 ギルド設立には専用の施設を自身で用意しなければならない。
三、 ギルド施設の建設をする際は国と協会の許可が無くてはならない。
四、 ギルドマスターは最低でもAランクの攻略者でなければならない。
以上がギルド設立の際に満たさなければならない絶対条件である。
ランクは満たしてるけどそれ以外は全然だ……はぁぁ面倒くさい!
しばらく清火は考え込んだ。
「……やるかぁ……」
そう言って清火はベッドから起き上がり、 ある人物に連絡をした。
その相手は……
『やぁモルス君、 自分から電話をするなんて珍しいじゃないか』
「会長さん、 少し相談があるんですけど……時間あります? 」
そう、 協会の会長である修次郎だ。
そして清火はギルド設立について修次郎に話した。
『なるほど……よし! 国への許可と施設はこちらに任せなさい! メンバーは……こればかりは君にやってもらうしかないなぁ……』
「いえ、 それだけでも十分です……ありがとうございます」
意外とあっさり……会長の連絡先を貰っておいてて良かった……
そして清火は電話を切った。
……あとはメンバーかぁ……最低でも三人……一人は私として、 メンバーに適してる人材って……
すると清火の頭にある人物が思い浮かんだ。
「……いた……役に立つ人材! 」
そう言うと清火は家を飛び出した。
マスコミやギルド勧誘を潜り抜けて辿り着いた先は……
「……ローナ、 いる? 」
ローナのラボである。
「oh! キョウカ、 良く来たわね! どうかしたの? 」
そして清火は早速ローナに提案をした。
「ローナ……ギルドに興味ない? 」
「え……ギルド? あまりそう言うのは良く知らないけど……どうかしたの? 」
「私、 ギルドを設立しようと思ってて……ほら、 私……Sランクの攻略者になったじゃん……? 」
「あぁ……確かに世間がそれで大騒ぎしてるわね……そしてマスコミやギルド勧誘を回避するためにギルドを設立したくて、 それで私をギルドメンバーにしたいってところね……」
清火は黙って頷く。
でもローナはずっとラボに籠ってたしなぁ……いきなりギルドに入らない? って言われてもそう簡単に……
するとローナは迷いが無い様子で答えた。
「OKよ、 あなたのギルドメンバーになってあげる! 」
「えっいいの? 」
「勿論よ! 他でもないキョウカのギルドだもの、 興味無い訳が無いじゃない! 」
「ありがとうローナ! 」
早速一人目が加わった……あと一人か……
「それでキョウカ、 ギルドの設立には最低でも三人必要……あと一人はどうするつもり? 」
「それなんだよねぇ……」
流石にローナに頼る訳にはいかないしなぁ……何とか探すしかないか……
「まぁ頑張って……私じゃ人脈が少ないから力になれそうにないわ……」
「そうだよね……まぁまた後で連絡する……」
そう言って清火はローナのラボを後にした。
…………
さて……どうしたものか……
清火は喫茶店で考え込んでいた。
……SNSで探す? いやいやそれこそ騒ぎになっちゃう……街を歩き回って探す? マスコミやギルド勧誘がいるからそんな出歩けないし……
「だぁぁ! もう! 」
清火が難儀していると
「誰かと思えば……近頃騒ぎになってるモルスさんじゃない……」
「え……雷さん! 」
雷が清火の隣に座ってきた。
清火は雷に事情を話した。
「ははっ、 そういうこと」
「人脈が無いとこんなに大変だなんて思いもしませんでした……」
「うーん……あと一人いればいいのよね? 」
「え、 はい」
すると雷はとんでもない事を提案した。
「ならいっそ私がメンバーになってあげようか? 」
「えぇっ! ? 」
それは雷からのギルド加入の申し出だった。
嘘でしょ! 流石にギルドリーダーを引き抜くなんて……
雷はギルドランキング5位の雷神ギルドのリーダー、 そんな人物を引き抜くのは異例中の異例である。
しかし雷は冗談を言っている様子は無かった。
「私は本気よ? 正直ギルドのリーダーをやるっていう器じゃないし……そろそろリーダーを辞めたいと思ってたところなのよねぇ……」
「えぇ……でも雷神ギルドは大丈夫なんですか? 」
「あぁそれなら大丈夫、 代わりならいくらでもいるし……」
雷さん……悪い顔してる……
「それで、 OKかしら? 」
「あ……是非お願いします! 先輩攻略者に来てもらえると心強いですし! 」
「それじゃ決まりね! 私は早速ギルドに話を付けてくるからこれで……」
そして雷はその場を後にした。
……まさか雷さんがギルドメンバーになってくれるとは……世の中何が起こるか分からないな……
そんな事を思いながら清火は喫茶店を出て行った。
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それから更に数日、 清火は会長の手引きにより手に入れたギルド施設にローナと雷を呼んだ。
「へぇ、 中々綺麗な場所じゃない」
「内装はまだ空っぽだけどここから必要な設備をそろえて行くつもり」
その建物は協会本部から少し離れた場所にある元々ギルドだった施設である。
ギルドリーダーが攻略者を引退し、 長い間放置されていたものを修次郎が探し、 買い取ってくれたのだ。
結構綺麗に整備されてるなぁ……本当に会長には頭が上がらない……
「広い訓練場も付いてるみたいだし……新しい武器の実験場に最適ね……」
ローナは不気味な笑みを浮かべる。
「壊さないでよ……ローナ……? 」
まぁ何がともあれギルドは完成かぁ……あとは……
「あとは名前よね……モルスさん、 考えてた? 」
そう、 新しく設立したギルドの名前を決めなくてはならないのだ。
……ギルド名かぁ……死神ギルド……いやいや厨二過ぎるでしょ……はぁぁ前もって決めとけばよかったぁ……!
「……その様子じゃ決めてないのね……」
雷は苦笑いしながら言う。
すると雷はある案を出した。
「こうなると予想して私が考えておいたの……」
「え、 どんな名前ですか! ? 」
「殲滅ギルド……」
殲滅……物騒な名前だけど……それ以外思いつかない……
「モルスさんと初めて会った時、 モルスさんの戦う姿は正に次元迷宮を殲滅する者そのもの……モルスさんのイメージにも合ってると思うんだけど……」
「うーん……まぁそれしか無いし……いいか! このギルドは殲滅ギルドに決定! 」
「今日はお祝いね! 」
そして清火は新しいギルド、 殲滅ギルドを設立した。
その日清火達は新しいギルドの設立に祝いの宴を開いた。
…………
その頃、 協会本部にて……
「……いよいよモルス君もギルドリーダーか……しかもメンバーにはあの雷君……ふふ……面白い事になりそうだ……」
会長室で修次郎が酒を飲みながら呟いた。
しばらく修次郎が酒を嗜んでいると部屋に拳一が入ってきた。
「失礼します、 会長……先程モルス様からギルド名に関する連絡が入りました」
「ほう……何と言っていた? 」
「ギルド名は……殲滅ギルドと……言っておりました……」
それを聞いた修次郎は不敵な笑みを浮かべた。
「そうか……報告ご苦労だった……下がって良いぞ」
「はっ、 失礼します……」
そして拳一は会長室を出て行った。
静まり返った部屋の中、 修次郎は机に酒を注がれたグラスを置き、 窓の外を眺めた。
「殲滅ギルドか……ふふ……本当に……モルス君は見てて飽きないな……」
不敵な笑みを浮かべながら修次郎は呟いた。
…………
同刻、 サラマンダーギルドにて……
「フローガさん! 」
「何だ騒々しい! 」
フローガがジムで筋トレをしている所にギルドのメンバーが慌てた様子で駆け込んできた。
「あのSランク攻略者のモルスが新しいギルドを設立したそうです! 」
「ほぉ! いよいよか! どんな名前だ? 」
「協会からの情報だと……『殲滅ギルド』と……」
それを聞いたフローガは大笑いした。
「はっはっはっ! 死神のモルスに殲滅ギルドと来たか! 中々面白いじゃないか! 」
「そんなこと言ってる場合じゃないですよ! あの雷さんまでギルドのメンバーに引き込まれたんですよ! 」
「何っ……? 」
フローガは思わず持っていたダンベルを落とす。
(まさか……一体何故……雷が自ら行くとは考えにくいが……だがそうだとしたら……)
するとフローガにある考えが思い浮かぶ。
「……少し試す必要があるようだな……近い内に祝杯のパーティーがあるだろうしな……報告ご苦労だったな、 行け」
「は、 はい! 」
そしてギルドのメンバーはその場を去った。
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一方、 他のギルドでも同様の騒ぎが起きていた。
ギルドランキング3位、 ドラゴンズギルド……
「へぇ……『殲滅ギルド』……ねぇ……」
ワイングラスを片手に謎の女性が呟く。
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ギルドランキング2位、 白虎ギルド……
「……殲滅ギルド……また強者が現れよったか……」
道場らしき部屋の真ん中で一人の老人が正座をしながら呟く。
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ギルドランキング1位、 マスターズギルド……
「殲滅ギルドのマスター……死神のモルス……一度会ってみたいな……」
金髪の青年が高層マンションのベランダで夜景を眺めながら呟く。
…………
「……ここからまた大変になりそうね……ギルドマスター、 モルス……」
祝いの最中、 雷は呟いた。
続く……




