49話 自称魔王と可愛い女の子……
「おお、か、帰ってきたかお前たち」
「あ、うん。ただいま……」
暗くなって来たのでそろそろ帰ってくると思い玄関へいくと、丁度ソウタ達が帰ってきたとこだった……
「あ、えっとその……はは」
「あっと……へへ」
何だろうこの空気。
お互いが何か言い出せないというか、次の言葉がうまく言えないというか……
「どしマシたゲルオ様?」
「何やってんだぁソウタ?」
『いや、なんでもない! あ……』
ハモッてしまった。
「あーそのなんだソウタ。お前らは楽しめたか?」
「あ、ああ! おかげでな」
「そうか……」
「ゲルオ達はあの後どっか行ったのか?」
「うん? あーちょっとな、デルモンと色々あって……」
「デルモン?」
あ、しまった……
「うん? 大将よびじゃあなくなったんかぁ?」
「あ、ああ! まあほら、こういった事はお互い上下関係作ると良くないだろ?」
「そ、そうですね!」
よしよし、うまく誤魔化せた!
って、誤魔化してどうすんだよ俺!
「おお、此処に居ましたのですな! ゲルオ様!」
『えっ!?』
で、デルモン!? なんてタイミングの悪い!
「ど、どうしたデルモン?」
「おいゲルオ? それよりなんで相手は様呼びになってるんだよ?」
「あ、えーっと。何かマズかった出すかな?」
「いやいや、全然だ全然!」
「そうですかな? ああ、それよりももうお話はされましたかな。まだでしたらわしから話させていただきますが、はい」
「ああーうん。大丈夫、俺からちゃんと言うから」
「そうですか……」
「おい、ゲルオ何を隠してるんだ?」
く、そんな追求するような目で見んじゃねえよ!
なんか俺が悪いことした気分になっちゃうじゃん!
「はいはい、ちゃんというから。それよりデルモン、何か用があったんだろ?」
「あ、そうでしたな! 大変なんですよ、この街の勇者達が何者かに襲われたらしくてですな! 実はその方たちは明後日の任務で資格たりえるか、魔王ギプス様が直々に今日見定めるはずだったものでして……はい……」
「あん? なんだそりゃ?」
え、危険地帯に行くのに人数減ったって事? マジで?
「ギプス様は現在その襲った者を全力で探しているらしいんですがね、はい。とても逃げ足も速くて今なお逃げおおせているそうでして、危険ですので外に出ぬように警備隊が呼び掛けているようでしてな、はい」
「そうか、お前らは大丈夫だったか?」
「……え、ああ……うん」
うん? なぜ目を逸らす?
「なぁゲンタ、もしかして現場でもみたのか?」
「ああん? ああ、そうだな。みたいな感じだ」
うん? どうにも歯切れが悪いな。
「なあブンタ、こんなに遅かったけど実は何かに巻き込まれたりとか……」
「な、ななないです! なんもしてないです!」
あ、これは……
「ああ、そうそう! なんでも凶悪な顔のエルフに小柄なオーク、みすぼらしい恰好の黒髪の異世界人が犯人らしいですぞ、はい!」
「へぇ……」
凶悪な顔のエルフに……
「あん?」
小柄なオーク。
「な、なんです?」
みすぼらしい恰好の黒髪の異世界人ねぇ……
「て、ちょっと待て! みすぼらしいって何だよ!! あ……」
「はいソウタ君。何か言う事はないかな?」
「……すまん。気を付けてはいたんだが」
「ふーん」
うんうん、コレは使えるな。
「そ、ソウタは悪くねえぞ! 相手から絡んできやがったんだ!」
「そ、そうです! それに元はといえば僕が……」
「ふ、いいんだよソウタ」
「え?」
「お前だって無暗やたらにって訳じゃないんだろ? 仲間の為だったんだろ?」
「う、まあその……ちょいハズいけどそんな感じだ」
「ゲルオ様ドしたんデシか? それより言わないんでしか?」
「ちょい黙ってろヴォル?」
「あ、アい」
「まああれだよな。俺達はほら、クランってひとつの枠組みで今は仲間だもんな! 言えない事とかさ、そりゃあると思うよ? それに誰だって取り返しのつかないミスってのはあると思うんだ。でも、大事なのはそれをお互いに許し合って助け合っていくことだと思うんだよね!」
「はあ、よくもまあこれだけ都合の良い言葉を並べるね君は」
ボン、それはある意味俺の才能って奴だろ?
「ちょっと待てゲルオ。いったい何があったんだ」
「いやね、話は長くなるんだけどな? まあ丁度いいからデルモンとこに飯を運んでもらって皆で話でもしようじゃないか」
――――
――
「――てわけでだ。明後日のクエストはデルモンが明日準備した大量の武器なんかの物資を抱えて、異世界の危険生物から守りつつDMZにいる魔王の城まで護衛するクエストって訳だ。あ、因みに逃げたり失敗するともれなく国家反逆罪とかいうおまけつきだってよ、はは」
マジ笑える……
『……』
「えっと、皆さっきから食べてないけど大丈夫か?」
「大丈夫な訳ないだろ! ホラ見ろ! やっぱりとんでもないクエストだったじゃないか!」
「ゲルオの事だ、どうせ前金貰ってトンズラする気だったんだろ。その結果がコレ」
「め、目も当てらんないですね。僕達の騒動ナンテちっぽけですよ」
く、たしかにその通りだけどさ……
「みんな、ゲルオはゲルオなりに考えた末なんだ。お金の事と保身の事しか考えないがその分、何だかんだと言って僕たちを何とかしてくれるさ! な、ゲルオ!」
「もも、勿論な!」
う、すまんボン。でも俺ってそれだけ聞くと最低な奴だな……
「そうデシ! それにうまくいけば魔王神の奴に土下座させることだって出来るかもしれないでシヨ!! にっひひ、楽しみデシねぇ」
俺、そんなこと一言も言ってないんだけど。
「ヴォ、ヴォルデマール殿! 一応まだ彼らの目はあるかもしれないんでそういった発言は困りますです、はい」
「はあ、まあ確かに最初に会った時もふざけたこと言ってたけど最後はちゃっかりと治めたもんな。前回のヴォルの騒動も何とかしてたし……ゲルオ?」
「あん?」
「期待してるぜ……リーダー」
「あ、ああ! まあ任せとけって!」
「だな、むしろイッキにこのクランを有名にするチャンスなんじゃねぇか?」
え、それは困るなぁ
「み、皆さんポジティブですね。でも、嫌いじゃないです」
「そ、それよりですな。ソウタ君達のしでかした事ですが……」
「大丈夫だって、黙ってりゃ誰も不幸にならないんだから」
それに、ソウタ達にやられるって事は実力的には格下ってことじゃん。
そんでもって勇者とか扱いが難しすぎんだっての、もっとこう気楽に行きたいんだよね。
「いや、そのですな。このホテルの者達は皆この街の魔王の息のかかってる者でしてな……」
「え?」
「たぶん、明日にでも――」
――――
――
「勇者襲撃をした一味を連れてまいりました!」
「あん? ああ、入れ」
「はっ! さあ来い!」
ああ、こうなるのね結局。
まさか朝一でお城に連行されるなんてなぁ
こんな形で来たくなかったよ俺……
「おう、よく来たなクラン『パッチワーク』うちのとこに勝手に居た勇者を可愛がってくれたみたいじゃないか! あっひゃひゃひゃ!」
ソイツは身の丈に合わないおっきな玉座にふんぞり返っていた。いや、おっきな玉座というか本人が小さいためにそう見えたのかもしれない。薄い水色の綺麗な髪をしていて何処か神秘的な雰囲気を醸し出している。が、どうにも言動や仕草がこう――
「あ、ちょいまち。カユ、カユかゆ! あーもう!」
――うん、合わない。せっかくの綺麗な髪もかきむしってボサボサだし。こう声からして生意気なガキのような感じが漂っている。ただ、正直顔は可愛い。
そうだな、ガッキよりは幼くないが本田よりは幼い。何と言うかこう幼女から少女の中間のような容姿とでもいうか……うん……一点を除いてだが。格好もなんかきわどい水着? みたいなのの上に豪奢なマントを羽織ってるだけで目のやり場にちょい困る。
「はあ、だからお風呂には入ってくださいと」
「ああん、だって風呂とか面倒だし」
そう付き人なのかな? なんかちょび髭のダンディーなおっさんが忠言してる。
うーん、けどこのおっさんどっかで見たような……
「んなことよりもだ! お前がリーダーのゲルオだろ? 私はまあ知ってると思うが序列6の魔王『三態』のギブスだ。まあ、ギブスはブスって付くしあんまかぁいくねえから、ギ・プ・ス! って呼んでくれよ!」
「お、おう」
「まあそんな緊張すんな! あーあれだ、何だっけかな?」
「……形式的です」
「ああ、それそれ! 街の奴らの目もあってな、形だけでも捕まえたってのが必要だったわけよ。だからベッツにどうこうするつもりはないんで安心しろよ!」
「そうなのか」
それを聞いて安心したよ。
「ひゃひゃ、それよりも随分と素直に来てくれたな。正直そこのヴォルデマール辺りに暴れられるかもと思ってたんだがな!」
いや、実際はヴォルにちゃんと待てをしなかったら大惨事でしたけどね。あいつ最初イキイキと「こうなったら街ごと肉にしマシか! ゲルオ様はやくGOサインしてくださいデシ!」とか言いやがったからな。
それにしても……うん……つい目がいってしまうな。
「おおっ!? ……ニマニマ、にしてもゲルオ。さっきからチラチラ私の何をみてるんだー」
「うっ!?」
いや、違うんだその。けっしてその疚しい気持ちもヤラシイ気持ちも殆どたぶんない。ただ、体に似合わずその……大変いいものをお持ちでな……
俺もほら? 健全な精神を持ってるものでな、うん。
「ゲルオ……」
だからボン。そんな蔑むような目で見ないでくれ……
「ま、仕方ないか。ほらぁ私って自分でいうのもなんだけどこんなに可愛くて炉利っぽいのにオッパイでけえじゃん? マジでやばいと思うんだよねぇ」
「うん」
マジになんかヤバいと思います!
「うんってゲルオお前な……」
「……ボクもおっぱいでかくしまシカ?」
「いや、君は結構です」
頼むからそれ以上要素を追加しないでくれ。
「くく、ひゃひゃ! おもしれぇなぁお前ら!」
「そっすか」
うん、笑い方は汚いが可愛いなコイツ。
「よし、そんじゃさっさと済ますか! おい、あいつらを」
そうギプスがいうと隣のおっさんは手をパンパンと鳴らした。
何が始まるんだ?
「しっかしなんか一々こう、あのおっさん気障っぽいな」
「ゲルオ、そんなこと言うんじゃない。まあ、僕もちょっと思ったが」
少しすると奥から数人の異世界人が列をなしてやってきた。
「おい、こいつらで確かなんだな」
「ああ! こ、こいつらが俺らを襲った奴らだ!」
「ひょうはんだ! ひょいつらだ!」
「ふーん、そうかぁ……」
え、何? なんなん急にやってきたけどこいつらは?
しかも顔に包帯巻いた奴は何言ってるかまたくわからん。
「ゲルオあいつらだ」
「あん?」
「あいつらが昨日俺達に絡んできた勇者だ」
「え?」
てことは……
「えっと、何がしたいんだ?」
「ひゃひゃ、なに簡単な事さ。なあ勇者達?」
「な、何だよ」
「確かにこいつらに襲われたんだな?」
「あ、ああ! コイツ等が急に襲い掛かってきたんだ!」
「そうだ! そのオークと鬼みたいなエルフに不意を突かれて!」
「ひゃふはんひゃ!」
「なっ!?」
んん? あれ、ソウタ達が何癖付けられたって聞いたんだが?
「ふーんそっか。おい、どうなんだ?」
「はい、確かに街の者はそう言っておられます」
「嘘だ! 確かに俺達も非が無かったわけじゃないがコイツ等から最初に――」
「まあまあ、落ち着こうぜソウタ」
「――く、ゲルオ!?」
俺達を裁くとかで呼んだ訳じゃないみたいだしな。ここは落ち着いてフラグをたたせないようにするのが一番! 無駄に噛みついたって大抵ろくなことになんないしな!
「それに臭うぜ! あの異世界人どもから強烈な小者臭がな!!」
「お前が言うのか……」
「……ひゃひゃ、ゲルオわかってんな」
あ、ついつい声に……恥ずかしいぃ!
「じゃあ、もうお前らは用済みだな!」
「ん? 何言ってんだ姫さん」
「なあ、コイツ等が犯人ってわかったならさ、今すぐアンタの能力で――」
「うるさいなぁこの愚図」
『っ!?』
「私はね、本当にお前らを倒したのがコイツ等だったかを確信したかっただけな訳よ。別にぃお前らのどうこうを聞いてやりたいわけじゃないの。てか、あんたらさぁ……」
「な、なんだよ」
「まぁよくも散々私の街で好き勝手やってくれたなぁあ、アア!! ……それでもだ、強い奴だっていうから此処まで見過ごしてやってたんだ。なのにぃーどぉうしてーこの程度のぉー奴らに倒されてんだよっ!! マジ意味わかんないんだけど?」
この娘すごく怖いんだけど、誰だよ可愛いとかさっきから思ってた奴。
ていうかこっちほっぽってそういうのやめて欲しいなぁ……見てるこっちもビクビクしちゃうじゃん?
「……あ……う……」
「てわけでぇー今までご苦労様! なんか魔王神の奴に勇者とかに手ぇ出すなとか言われてんだけどさーお前らが弱いってわかったからいいよな!」
「い、いいよなって……」
「ひゃひゃ! ここは魔族の大陸なんですけどー? 魔族の街なんですけどー? いらないものをただ帰すなんてする分けねえじゃん?」
「え……」
「だよな? ゲルオ」
「いや、俺に言われてもなぁ」
急に親しそうに振るなよ? 勘違いしちゃうよ?
「こ、こいつらに用があるから俺達を呼んだんだろ? なぁあ!」
「そうだ! それで来ただけだぞ!」
「ふーん、で?」
「でって……」
「ちからがなくてー品もなくてー知恵もなくて中身もない。そんな愚図を生かしてやるほど私は優しくないんだなこれが。てことでバイバーイ」
「ま、待ってくれ! い、いやだ! き、消えたくな――」
だが異世界人の嘆願も虚しく、ギプスが別れを告げるとともに次々と服だけを残して中身は何処かへ消えていってしまった……
「う……」
「おいおい、此処までする必要あったのかよ……」
ソウタは今の光景みてなんか顔面蒼白だし他の奴らもあまり良い顔はしていない。
なかでも、
「ひ、ひぃい……わ、わしは……わしは裏切りませんのでどうか……」
デルモンが一番ビビってるんだが。こいつまだ何か俺達に隠してることあるんじゃねえか? まあ、俺も自慢じゃないがさっきから体が小刻みに震えてるけどな!
「ひゃひゃ! まあこれが私の能力だ、間近で見れるなんてそうそうないからな! お前ら良いもんみれたな!」
「……う、うん」
うわあ、すっごい可愛い笑顔なのに背筋がさっきから冷えるひえる!
「んでだ、こっから本題なんだがいいか?」
そうニンマリとギプスは俺に語り掛けるんだが……
正直もう帰りたい。
ああ、なんかアロマに会いたくなったなぁ




