48話ー裏話ー ソウタがゲルオに学んだもの
さてと、ゲンタの奴だいぶ先に行ってしまったな。
「おーい、待ってくれよゲンタ!」
「おう、遅かったなソウタ!」
「こっちの道に行けばあのでっかい水のお城なのかな? そこに行けるみたいですね!」
へえ、あの完全に物理法則無視してるのはこの街の城なのか……
「おう、なるほどな! おい、こっちの道からの方が早いって精霊が言ってるぜ!」
「おいおい、そんな事に精霊使うなよ……」
「とにかく行ってみましょう!」
そうゲンタとブンタが急ぎ足になっていこうとしたところ、おいしそうな匂いが漂ってきた。
「……なあ、その前に飯いかないか?」
ちょうどご飯時なのか、辺りにあるお店には観光客などが入っていくのが見える。
美味しそうな串焼きやら露店の鉄板焼きなんかが賑わい始めていた。
「あん? ああ、まあ確かに食ってからのがゆっくり見られるか」
「そ、そうですね! ここの通りならちょうどいいみたいですし」
そそ、お店があるうちに行っとかないとな。
城とか行って食うところなかったらいやだし……
「へへ、気が利くじゃねえかソウタ!」
バンッと肩を叩かれる。
「お、おう」
「じゃ、じゃああそこのお店に行きますか? ちょうど何人か出て行ったんで」
「……」
なんか、ちょっと中学の時の修学旅行を思い出すなぁ……
「どした? 行こうぜ」
「あ、ああ」
ブンタについて行って定食屋っぽい感じのお店で昼食を済ますことにした。
「いらっしゃい! 三名で?」
「おう!」
「は、はい」
「んじゃ、奥へどうぞ!」
そうして厳つい感じのおっさんに案内されて奥のお座敷みたいなとこに座ることに。
「外は洋風なのに中はえらい和風だな……」
如何やらおっさんと妙齢の女の人の二人で切り盛りしているようだった。
「で、なににしやすか!」
「ううん、おりゃ魚の煮つけ定食で」
「ぼ、僕はその、野菜炒めの肉抜きでお願いします」
肉抜きの野菜炒めって美味いのか?
「おい、ソウタは何にすんだ?」
「えっとだな……」
店のメニューは如何やら壁に張り付いている中からみたいだな。なんかホントに日本の定食屋みたいな感じだ。そこで俺はずっと焦がれていたあるものに気付いてしまった。
「じゃあ、俺は牛丼定食で!」
「あいよ! 煮つけ定、野菜炒め定肉抜き、最後のあんちゃんは牛定で! 以上でいいですかね?」
「ああ」
「おう」
「はい」
「んじゃ、ちょいとお待ちを!」
そういっておっさんは厨房へと引っ込んでいったが、今気づいたが料理してんのは女の人のほうだったのか……逆じゃないか普通?
「しっかしまさか牛丼があるなんてな!」
うう、もう半年ぶりだぞ!
「あん? お前あれ好きなのか?」
「ぼ、僕はあんまり好みでないですね」
「おいおい、牛丼の美味さがわかんねえのかよ!?」
あのうまさはどの世界でも共通だろ?
「いや、俺はなんだ? 肉って感じのが好きでなぁ。あれって米とか言うのが主体じゃねえか? それがどうにもなぁ……」
「米嫌いなのか?」
「嫌いって訳じゃねえが……ああいう混ぜる系が苦手なんだよ」
まあ、人それぞれって事なのかな?
「ブンタは?」
「ぼ、僕は何て言うかその……」
「うん」
「肉を食べると……」
あ、もしかしてあれか? 一応半分はオークだし豚肉とかこの前も遠慮してたからな。なんか思うとこもあったのかな……
「血が騒いじゃいまして」
「そっちかよ!」
こええよ、何の血が騒ぐんだよ一体……
「おまってしあした! 煮つけ、肉抜き、牛定!!」
「おおぉ美味そうじゃねえか!」
「はん! 美味そうじゃなくてうまいぜ家のカミさんの料理は!」
「良い匂いですね!」
「……ああ!」
良かった! ちゃんとあの日本で見た牛丼だ!
実はちょっと心配してたんだが、見た目はオッケーだ……あとは味だが……
「はむ……っ!!」
「うん? どうしたソウタ?」
ガっ!
「はむ! うん、あむ……ごくん! ああぁうめぇええ!」
牛丼だ! しかもめっちゃうめぇえ!
「おいおい、すげえかっこみかただな」
「お腹そんなに減ってたんですか?」
く、お前らにはわかんないだろうよ! 米食を半年近くできない日本人の苦悩は!
なんだろ、涙出てきたんだが?
「く、一気に食べてもう終わってしまった……」
「は、はええなソウタ」
「す、すごい勢いでしたもんね」
「おいおっさん! もう一つ単品で牛丼くれ!」
「おう! 威勢がいいなあんちゃん!」
よし、次は噛みしめて食べよう……
「てか、なんでお前らはせっかく水の都にいんのに魚料理食わねえんだよ……」
はん! 明日もいるんだからいいんだよ!
「おまたせしあした!」
「きたきた! いただきます!」
ああ、やっぱいいな米は、そして牛丼は……
――――
――
「おい、ソウタ行くぞ!」
「ま、待ってくれ。もうちょっと休ませて……」
「さ、三杯は食べ過ぎですよソウタさん……」
「といかソウタ、お前って案外ガキだったんな?」
「うっせ」
く、ついつい調子に乗ってしまった。なんかこう、男同士だとあんま気にしなくていいからかな? 羽目を久しぶりに外してしまった気がする。
「先に行っててくれ、お会計はやっとくから」
「はいよ、んじゃ店先で待ってるわ」
「あ、これ僕の分です」
「ああ、ありがとう」
はぁ明日もここ来ようかな……
――五分後
「そろそろ行くか」
一度トイレも行ってスッキリし、漸く店を出ることができた。
「美味しかったよ」
「ありがとうございました!」
うん、また来るよ! 絶対にっ!
「んっと……あ、いたいた。待たせたなゲンタ――」
「……だって言ってんだろうが!」
「げ、ゲンタさん僕の事は……」
んん? なんか揉めてないか?
ゲルオに余計な事をするなって念を押されたんだけどな。
「……はあ、仕方ないか。これを見なかった事にはできないよなぁ」
俺は言い争っているゲンタに仕方なしに近づくことにした。
「おい、どうしたんだゲンタ?」
「あぁん! あ、すまんソウタか。コイツがよぉブンタのことを莫迦にしやがったんだ!」
「ブンタを?」
「……うう別に僕は何とも」
いわれて相手を見ると、ソイツはどう見ても俺と同じ世界から来たであろう数人の学ランを着た学生だった。まあ、そのわりには結構カラフルな髪の色してるが……
「はん、何だお前は? みすぼらしい格好だな」
「なっ!?」
みすぼらしいだと!? 仕方ないだろ、生きてく上でいつまでも学生服でなんかでいられないし、それに機能性重視で考えるとそんなゲームのような格好でいられないんだよ!
「ふ、お前ら最近召喚された口だろ? 威勢がいいのは良いが、この世界にはこの世界のルールがあるんだ。まあ、ブンタが何かやったなら謝るからさ、穏便にしてくれないか?」
まあ、別にゲルオに頼まれたからって訳じゃないけどさ。俺だって半年近くこの世界で暮らしていつまでもガキでいられなくなったっていうかさ、うん。
あ、さっきの牛丼の件は別ね。
「ソウタ、すまねえな。つい、おりゃあ熱くなっちまって」
「いいって」
確か二人は兄弟らしいしな。むしろそうならなきゃダメじゃないか普通?
「ごめんなさい」
「ていう訳でだ。すまなかった」
俺は一歩前に出て頭を下げる。どうかな?
「っぷ、はは、あはははは!」
「だっさ、何コイツいきなりでてきて謝るとか」
「しかもお仲間がこんなブタとモヒカンのむさいのだけとか!」
こ、こいつら……っ!
くそ、大体いつもはミィやルリがついてるっての!
「てか、まさかお前も俺達と同じ世界の住人なのか? うわあ、こうはなりたくないな?」
「てかぁマジ興味ないんでさ、そこのブタが服汚したんで落とし前つけてよ?」
「てか、興味ないとか言って落とし前とかウケルー」
「はあ?」
何言ってんだコイツら?
あと、てかてか言いすぎだろ? 貧相な言葉を喋んなよ恥ずかしい……
「ちっ! てめえらがぶつかったんだろうが!」
「おいおい、俺たちゃアンタらと違って勇者様なんだよ? わかる? この街の勇者様なのっ!」
「そそ、これからこの街の姫様みたいのと会わなきゃいけねぇんだわ。だからさ、こんなブタの鼻が付いちまった臭えままでいられねえって、わ、け!」
「てかこれってオークっしょ? 退治? 退治した方が良くね?」
コイツ等マジでムカついてきたな。
「おい、いい加減にしろお前ら? 勇者だかなんだか知らないけど何やってもいいって訳じゃないんだぞ?」
ああ、ちょっとブーメランな一言だったな。
「うわ、なにムキになってんだよ?」
「てかさー面倒だからやっちゃわねぇ?」
くそ、言いたい放題言いやがって! こういう奴は力で――
『一応余計なことやらかすなよ?』
「……くそ、ゲルオの奴め!」
クールになれ俺、あの緊急クエでのやらかしを此処でまたするわけにはいかないんだから。
「おいソウタ? おりゃマジでブチ切れそうなんだがよぉ」
「落ち着けゲンタ、周りの目を見ろ」
「あん?」
見ればこの状況でも周りの人間にはこっちが悪者で相手がヒーローにみえるらしい。
どれもどこか非難めいた目をしている、特に何故かブンタを見る目がことさら厳しい。
「……ご、ごめんなさい僕のせいで」
「いや、謝るなよブンタ。お前のせいじゃないんだろ?」
「うう、ソウタさん」
ただ、本気出したらブンタにコイツ等瞬殺されるんじゃないかな?
この前ゲルオに見せて貰ったステータス、ヤバかったからな。
「んで、そっちのお前どうすんのよ? あ?」
「はあ、こんなのが俺と同じ世界の住人だと思うと情けないな」
一応相手の鑑定をしたが……まあそれなりには強いな。だが、誰一人鑑定持ちは居ないし強いとは言ってもこっちには敵わないのはわかる……わかるが……
「俺達が悪かったよ……」
「おい!? ソウタ!?」
「ゲンタ、明後日には大事なクエストだろ? こんな下んない事でゲルオ達に迷惑かけらんないだろ」
「う……はあ、そうだな」
「あん?」
「……悪かったよ」
「ご、ごめんなさい」
「……おいおい、言葉だけじゃあなぁ」
「せ、い、い! 見せてよ」
「誠意?」
「土下座だよ土下座!」
「そうそう! たく、獣臭くしやがって……」
「……はあ、しかたない」
我慢だがまん、我慢がマンガマンがまん!
「ソウタ……よし!」
「あ、ぼ、僕も……」
そういって俺に続いて二人もやってくれた。
何だよくそ……お前ら良い奴だな……
まあ、力でスパッとやっつけていいんだけどさ。でもそれやっちゃうとなぁ……今はクランっていうものの一員でもあるし、ほかの皆にまで迷惑かけてしまうかもしんないし……
きっとゲルオなら、サッサと土下座してタダで終わったやりぃ! とか言うんだろうな。こんなことで何が損するわけでもないし、形だけ形だけ……ミィ達が居なくて良かったよホント。
「くっひゃははは! マジでやってんだけど!」
そう、形だけ形だけ……
「はは、写メとっとこ!」
パシャッ!
く、かたちだけ、カタチだけ……
「このブタが二度と出歩くんじゃねえよ」
ガっ!
「わわっ!?」
あ……
「ブンタ! てめぇ……」
「ゲンタ……」
「おい! ソウタ、流石にっ!!」
パンっ!
「あえっ――」
ドサっ!
起き上がると同時に振りぬいた拳は、如何やら一発でバカを一人倒したようだ。
「潰すぞ」
ついでにさっきの奴が落としたスマホもゴミ屑にしといてやる。
写メなんて取りやがって……
「おおソウタっ! おらぁこのクズどもがぁああああ!!」
「ブンタ、本気でいいからな?」
「え、で、でも今のも全然いたくなくて驚いただけで……」
「俺が嫌だったんだ! だからぶっ潰すぞこの野郎どもがぁああ!!」
「はん? なにキレブゥううれぇえ!!」
すまんゲルオ! 我慢できなかった!
「オラオラ! 威勢だけか勇者様よぉ!」
「ご、ごめんなさい! ごめんなさい!」
ああ、やっぱ気分いいな! こういうバカをぶっ飛ばすのは!
「ひ、なんなんだよコイツら!?」
「てか、マジつよくね? 俺らやば――」
ドサッ
「うん? どうした……てっ! 嘘だろ!?」
「よそ見してんなよ! 誰一人逃がさないからな!!」
ああ、なんか周りでキャーキャーいってるなぁ……
まさか俺がこんな悪者の位置で騒がれるなんて……でも……
「仕方ないよな?」
因みに戦闘自体はあっさり終わった。
結論から言うとだ、ブンタが強すぎる。
「えっと、あんまり手加減できなくてそのぉ」
「ふん、自業自得だろぉがよ!」
「むしろまだ息があるのが不思議だな。トドメ差しとくか?」
うん、弱っているうちにやるだけやっとく。
ゲルオから身をもって教わった事だな。
「ぅうう、ひ、ひぃいい! か、かか、かんべんしくりゃはい! し、しにたくにゃいへふ!」
顔が原型とどめんくらいひしゃげてるせいで何いってるかわかんないな?
「おい、今度俺達の前に出てみろよ。今度は顔だけでなく体全部をひしゃげるからな!」
『ひぃい……い、いいぃ……』
「ブンタが」
「ちょ、ソウタさん!」
いや、だって因縁付けてきたのはブンタに対してだったし……
「そういうのゲルオさんっぽいですよ」
「うっ」
ま、マジか……
「あ、あそこです! オークと鬼みたいなエルフと変な異世界人が勇者様を!!」
「む、あれか……おい! 貴様ら何をやっている!」
「やべ……」
そりゃそうなるよな……
「逃げるぞゲンタ! ブンタ!」
「おう! 捕まってゲルオ達に迷惑かけらんねえしな!」
「だ、だったら最初から我慢してたらよかったのに……」
いや、それは無理だったな。大体、一番あいつらをボコボコにしたのブンタだしな。
「んじゃ、分かれて行動しよう! 日が沈んだ頃にホテルでな!」
「おう! ヘマすんなよ!」
「は、はい! ご武運を!」
そういって三者三様に散っていった。
それから、まあなんやかんやでサラッと追いかけていた警備兵を撒くことは出来たが……
「はあ……ゲルオに何て言おう……」
「あ、ソウタさん無事でよかったです」
「おう、二人とも無事だったみてえだな!」
「お、ブンタにゲンタ」
「しっかし、これじゃあ明日は出歩けないかもな?」
「はあ、なんでこんなことに……」
帰るのがこんな億劫なのは小学生の時にテストの結果が全滅だった時いらいだよ……
「あ、明日もあの定食屋行こうと思ったのに……」
やっぱトドメ差しときゃ良かったかな。




