チーム復活、雨降男、退治成功、空白退治任務達成。湊復活
世界が、軋んでいる。神代湊の周囲だけ、現実が歪む。
黒が、呼吸するように膨らむ。
もはや、人の形を保つのが限界だった。「……進行率、臨界」
雨降男が静かに呟く。
目の前の存在は―もう“人間”ではない。だが。
「……残す」
その言葉だけが、残っている。壊れながらも。
選び続ける、それが、神代湊という存在だった。その時、遠くから、光が走った。
一直線に、迷いなく、ここへ。
「――湊!!!」
声、白峰ルナだった、ボロボロの体。
それでも、走ってくる、止まらない、止まれない。
「来るな」
湊が言う。
初めての、明確な拒絶。
「……壊れる」
それが事実だった。これ以上近づけば。
巻き込まれる、消える、それでも。
ルナは、止まらなかった。
「いいよ」
あっさりと、答える。簡単だった。
「それでもいい」
その言葉に、湊の動きが、止まる。
「一緒に壊れるなら、それでいい」
笑う。泣きながら。それでも、笑う。
「でも――」、
一歩、近づく。黒が、触れる寸前。
「一人で壊れるのは、ダメ」
手を伸ばす。震えている。それでも。触れた。
その瞬間。世界が、止まった。黒が、止まる。
侵食が、止まる。時間が、凍る。
「……なんで」
湊の声が、揺れる。初めて。はっきりと。
「なんで、来る」
理解できない。合理的じゃない、でも。
ルナは、答えた。それは、簡単な答えだった。
「好きだから」
それだけだった。理由としては、あまりにも単純で。
でも。それ以上のものだった。
「忘れてもいい」
手を握る。強く。
「何回でも言う」
目を見て。逃げずに。名前を呼ぶ。
「あなたは、神代湊」
その言葉が。深く、深く沈んでいく。
消えかけていた場所へ、届く。
触れる。そしたら、なんと、
「……俺は」
湊の声が、戻る。
かすかに。それでも。確かに。
「……残す」
その瞬間。黒が、崩れた。暴走ではない。
制御でもない。選択。“残すために削る”。
その力が、初めて完成する。世界が、再構築される。
消えかけていた空間が、戻る。空白が、押し返される。
そして、雨降男が、初めて一歩下がった。「……確認」
静かな声、でも怖かった。
「到達」
その目に、初めて“変化”があった。
興味ではない。評価。「最終段階」
その瞬間。雨降男が、本気で構えた。
空間が、完全に凍る。世界が、消えかける。
だが、もう違う。湊は、一人じゃない。
ルナがいる、シンがいる、楓がいる。
全員が、戻ってきていた。
「……遅れたな」
シンが笑う、ボロボロで。それでも。
「ラストは、全員だろ」
楓も、静かに並ぶ。
「……補助、最大」
そして。四人が、並ぶ。最後の戦い。
「―行くぞ」
湊の声。
初めての、はっきりとした意思。
その瞬間。
全ての力が、重なる。
黒、光、重力、圧縮、ぶつかる、世界ごと。
雨降男へ。静寂。
そして―光が、弾けた。すべてを包み込むように。
飲み込むように。
終わりと始まりを、同時に告げるように。
――
どれくらいの時間が、経ったのか。
誰にもわからない、気がつけば。
空は、静かだった。風が吹いている。
壊れていた街は、少しずつ、戻っていた。
完全ではない、でも、確かに、“残っている”。
「……終わった?」
ルナが呟く。隣には。湊がいた。少しだけ、疲れた顔で。
でも、ちゃんと、“そこにいる”。
「……ああ」
短く答える、そして、少しだけ、間を置いて。「……覚えてる」
その一言に。
ルナの目から、涙が溢れた。
「……そっか」
笑う、泣きながら、その光景を見て。
シンが、肩をすくめる。
「やれやれだな」
楓も、小さく息を吐く。
「……完了」
世界は、まだ完全じゃない。問題も、残っている。
でも、それでも、選んだ、自分たちで。
何を残すかを、その選択が、未来になる。
――物語は、ここで終わる。ルナは、幸せだった。
だが、選び続ける限り、この世界は、きっと続いていく。




