レッツ・パーティー 1
試験は散々な目となったが心機一転。
残りの授業も無事おわり、今日は夏休み前のパーティの日である。
ティナに私をとびっきり可愛くしてほしいと伝えると目をらんらんと輝かせ「任せてください!」と鼻息を荒くした。
パーティは夜から始まるのだがティナに起こされて私は朝早く、目をしょぼしょぼさせながら体を起こした。
体を流し、全身をマッサージしてもらい、顔には美容にいいパックをつけてまた横になる。
(極楽だ・・・貴族になれてよかった)
その後は髪のセット、ドレス、コルセットをつけるつけないの戦い、お化粧をしているとあっという間に夜になった。
ドレスは白を基調とした暑くないよう薄めの素材でできている。
首周りと腕周りは水色で縁取られており、胸の真ん中に大きなリボンが一つついてある。
髪はハーフアップにしてもらい、バレッタと首飾りはシンシーリアの目と同じ色のエメラルドで着飾った。
「かわいい!とても可愛くできてるわティナ!まるでおとぎばなしに出てくる女神のようだわ!」
姿見で自分の姿を見てはなった言葉は自分を讃頌する内容だった。
「当然です!お嬢様はもとよりお綺麗な方ですのでこのようなこと朝飯前です!!」
ティナが自分のこととのようにエッヘンと胸をはって自慢する。
するとコンコンと部屋をノックする音が聞こえた。
「シンシア、準備はできた?」
扉を開けたのはリリィだった。
髪を高めに結び、ホワイトローズ聖騎士団の隊服をきっちり着こなしている。
「とってもきれいね!シンシアによく似合ってるわ。」
「ありがとう!リリィも相変わらず素敵よ!今日はリリィに合わせて私も白を基調としたドレスにしたの!お揃いみたいでよくない?」
「えぇ、さぁもう行こう、パーティ始まっているよ。」
パーティ会場である建物に向かう。私はリリィと腕を組みながら歩く。
「楽しみすぎてドキドキしてるわぁ!今日は美味しいご飯がたくさん出るんでしょ?
ねぇリリィいっぱい踊っていっぱい食べましょう!そのために私すこしドレスゆるくしてもらったの!」
「いいけど、シンシアはパーティなんていっぱい参加してきたでしょ?それなのにそんな興奮することなの?」
「リリィと一緒にパーティに参加するのは初めてだもの!私こっちで初めての友達がリリィでよかったわ」
「こっち?」
つい口がすべり余計なことをいってしまった。
「が、学校でってことよ!」
「そっか私もシンシアと友達になれてよかったわ。でも初めのころはシンシアがこんな子だったなんてわからなかったな。」
初めというのは私ではない、本来のシンシーリア・レバートリーのことだろう。
「初めの私はどんなイメージだった?」
「・・・怒らない?」
「えぇ」
私ではあるが私ではないのだし。
「うーん、簡単に言えばどこにてもいる貴族令嬢って感じだったかな。気高くて、プライドが高くて平民とは関わらなさそうで決してホワイトローズ騎士団に入りたいなんて言う人じゃなかったよ。」
思った以上に直球だったな。
シンシーリア・レバートリーがいい人だったわけではないが乙女ゲームの時のように人に意図的に悪意を当てつけるような人でもなかったのだろう。
カイニスが攻略対象の時は婚約者を奪われたということで主人公をいじめた理由はまだわかる、しかし他二人の攻略の際も彼女が主人公を目の敵にしてた理由は今ではわからない。
なんとなく癪に障ったのかもしれないし彼女にしかわからない思いがあったのかもしれない。
「それにカイニス・アルファランス様をすごくお慕いしていた。」
それは知っている。
カイニスが攻略対象の場合だがゲームの終わりである彼女が断罪される日、カイニスとの婚約破棄とともに貴族としての爵位も失った。
連れ出される瞬間、彼女が泣き叫び伝えたのは主人公を最後まで罵倒することでも許しをもらうことよりもカイニスに思いを告げる事だった。
私は今までシンシーリア・レバートリーを嫌っていたが少し同情してしまった。
何よりも大切にしていたものを奪われた悲痛の思いは分からなくもなかった。
(乙女ゲームをやってた時はなんとも思わなかったけど政略とはいえ愛していた人が横から掻っ攫っていかれるんだから怒るのも当然よね、浮気されているようなものだもの。
その怒りを男に向けるか女に向けるかは人それぞれ、シンシーリアの場合は主人公である女だっただけ。私だって彼氏が私以上に他の女の子と一緒にいたら腹立つもん。いやまぁ彼氏いたことないけど。)
「シンシア」
リリィが声をかけてくる。
見るとパーティ会場はすぐそこにある。
その前に一人の男性が立っている。
「アルファランス様・・・・」