↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
39/39

バグ2


 私とカイニスはギリギリながらも入学式に間に合い、空いている席を探す。


「シンシア!こっち!」

 

 すると私の名を呼ぶ声が聞こえたのでそちらを見るとホワイトローズ聖騎士団の見習い騎士であり私の親友のリリアン・バルトラが手を振ってこちらにくるよう伝える。


「あ、リリィ、おはよう!席とってくれてたの?ありがとう!」

「えぇ、シンシアの分はとっておいたわ、シンシアの分は!」


 そういうリリィは私の隣にいるカイニスをじろり見るもカイニスは気にすることなくスンとお立ちになられている。

 私は二人の仲の悪さに呆れながらも今更席を探す時間もないため私の隣に座るようカイニスに勧めた。


「やぁシンシーリア、おはよう。」

「ポーテルド様もおはようございます。冬休みにポーテルド様のお店に遊びに行った以来ですね」


 リリィの隣から顔を出したのは商家の息子であるポーテルド・グレンであった。

 

「そうだね、たった数週間会っていないだけでシンシーリアは随分変わったね」


 変わったというのは私の姿形ではなく私の周りで起きた出来事の事を言っているのだろう。


「高位精霊と契約とか、もうすごいとしか言えないよ、さすがシンシーリア」

「あ、ありがとうございます。」


 本当は精霊姫と契約したのだがそんなことを伝えてしまうともし人に話した場合、身体が灰になるという恐ろしい誓約書を書かなくてはならないため少し胸が痛みながらも私はポーテルドの話に合わせる。


「今、学校ではシンシーリアの話で持ち切りだよ。」

「私ですか?光の魔法所持の方ではなく?」


 確か入学式では珍しい光の魔法所有者が入ってくるためその話で持ち切りだったはずだ。

 ゲームの中でも主人公が沢山の人で見られて緊張するシーンでもあるのだから。

 そういえばシュレーンはどこにいるのだろうと思った私は周りをきょろきょろ見るもシュレーンらしき姿は見つからない。


「確かに光の魔法所持者が入学してくるって話はあったけどそれよりも高位精霊と契約した方が珍しいよ」

「え、そうなんですか?」

「当たり前だよ、高位精霊、ましてや火の高位精霊と契約なんてこの国では数十年ぶりじゃないかな。」

「そんなにですか!」


 ポーテルドの言った内容に私は驚いてしまう。

 精霊姫のチェリートと契約は歴史初であるから比べ物にならないがそれでも高位精霊と契約も大した話ではないか。

 この式場に入った時、一気に視線が集まったのはカイニスが原因だと思っているシンシーリアは本当は自分に集まっていたことに気づかないままである。

 私は驚いて呆けていると壇上に一人の男性が上がって入学式が始まる。

 

「皆さま、初めまして。私はこの高等学校の生徒会長を務めているエルノクス・ランプルドです。皆さんが充実した3年間を過ごせることを願っています。」


 そう、彼こそがこの国の王子であり乙女ゲームの攻略相手の1人でもある男だったのだ。

 少しクセのある金髪で水色の瞳に重そうなほど長いまつげを伏せている姿が少し儚げに見え、まるで触ると壊れてしまう陶器のような男だった。

 そしてシンシーリアを殺す男でもある。

 学年が一個上のため中等部の時は一度も見かけることがなかったが、今初めて目にした彼は乙女ゲームに出てくる姿そのままであった。

 みんなの前に余裕綽々と立っているはずなのにそれを隠して微笑む程度の笑顔をしているのが逆に女性たちの心を鷲掴みにした。

 所々でエルノクスを褒める声が聞こえてくる。


「エルノクス様、本当に素敵だわ」

「あの方が将来この国の王になるのならこの国は安泰ね」

「まだ添い遂げる相手はいないらしいわよ」

「あぁ、エルノクス様とお近づきになれないかしら」


 そんな声を聞いた私は少し文句を言う。


「あんな儚げ王子様より絶対カイニス様のがかっこいいのに・・・」

「ありがとう、私もシンシアがこの世で一番素敵だと思っている。」

「ちょっとこんなところで惚気るのやめてくれない?」


 私は決して惚気ているわけではなく、乙女ゲームの中で選ぶのならカイニスが一番いいに決まっているということで言ったのだ。決して惚気ではない!

 しかしそんなこと分かるはずもないリリィは私たちの犬も食わないような会話にすごく呆れた顔でこっちを見てくる。

 私が慌てて言い訳するも通じるわけもなくポーテルドが肩を震わしながら笑いをこらえている。


 その後もエルノクスは何かを話していたがそんなこと聞いている場合じゃなかった私はリリィに説明するのに必死でエルノクスがこちらを見ていることに気づかなかった。


----------------------------------------------------------------------------------------------


 今日は入学式だけで終わるため人々は早々と寮に戻ったり貴族たちは庭でお茶会をしたりする。

 私たちもお茶をしようという話があったが、私は用事があるから先に始めててくれと一人であるところに向かった。

 勿論、それはこの世界の主人公、シュレーンの後を追う事だった。

 カイニスの次に会うのは先ほど新入学生に挨拶をしていたこの国の王子、エルノクスである。

 入学式が終わった主人公はまだ親しい友人もいないため一人で寮に帰ろうとしたところ、いきなり強い風が吹き、もらったプリントを噴水に落としてしまうのだ。

 濡れてしまったプリントを拾おうとしたところ、ちょうどその一部始終を見ていたエルノクスが噴水に入ったプリントを拾い、代わりに新しいプリントを主人公に渡すのだ。


 今度こそ誰にも見つからないよう草むらに隠れ、先ほどより姿勢を低くし主人公を見守ることにする。

 もうすぐこの通りを主人公が通るはずだ、カイニス達も今は庭に向かっているため私を邪魔する人間はいないはずだ。

 私がじっと主人公が来るのを待っていると声をかけられる。


「こんなところで何しているのかな?」


 聞き慣れない声のため思わず振り返ると想定外の人物がそこにはいた。


「え、エルノクス王子・・・」


 今、私が見物しようとしていた人物がなぜか私の目の前にいるのだ。

 嘘くさい笑顔を張り付けた顔でこちらを見下ろしてくる。さっさとこの場から立ち去ってほしいがそんなこと言える立場ではないため私は諦めて声をかける。


「こ、こんなところでなにをされているのですか?」

「こんなところでほふく前進をして草むらに隠れている人物がいたら生徒会長として声をかけないといけないと思ってね。」

 

 やはりほふく前進で進むのは良くなかったか。

 私は渋々立ち上がりエルノクスに頭をさげる。


「エルノクス王子にお目に描かれて光栄です。私はシンシーリア・レバートリーと申します。」

「頭を上げてくれ、君の事は噂に聞いていたよ、高位精霊と契約したみたいだね、そんな人がどうしてこんなところでほふく前進をしていたのかな?」

「そのですね、実はアクセサリーを落としてしまったので探していたのです。」

「そうかい、アクセサリーは生きているようにそんな草むらの所まで隠れてしまうのだね。」

「知らないのですか、エルノクス王子。アクセサリーというのは失くすとまさかこんなところに、という思いがけないところで見つかるのですよ。」


 こんな生産性のない会話などしなくていいからさっさとどこかに行ってほしいのだがエルノクスは一向に動く気配がない。


「それは参考になったよ、しかし意外だったな、君はアクセサリーなど着けないタイプかと思ってたよ。」

 

 なんで知っているんだと思うも私は必死に話を合わせる。


「ま、まさかぁ、私も女ですから。アクセサリーの一つや二つ着けてますよ。」

「それは失礼だったね。ちなみにどんなアクセサリーを落としたのかい?私も手伝うよ。」

「いえいえ結構です!すっごい小さいアクセサリーなんですよ!きっと見つけられないので諦めるところだったんです!」


 ありもしないアクセサリーを探すのにこの国の王子を手伝わせるなんて出来るはずがないし、何よりこんなところでエルノクスが立ち止まっている時間もないのだ。

 もうすぐでエルノクスは乙女ゲームの主人公に会わなくてはいけないのだ。

 すると穏やかな天気だったのにいきなり強い風が吹く。


「あっ!」


(もしかして!)


 気づいた時にはもう遅い。

 噴水の近くにいた主人公は強い風を受けて、持っていたプリントを噴水に落としてしまった。

 それをエルノクスが拾うはずだがエレノクスは主人公が噴水にプリントを落としたところを見ていなかった。そのため困っている様子の主人公に気づくも動く気配がない。


(え、なにこれ、どうすればいいの?)


 エルノクスの背中を押せばいいのか、私が動くべきなのか考えていると主人公が自分でプリントを取ろうとする。

 しかしプリントとの距離があるため体を伸ばしている彼女が噴水の中に落ちそうであった。


「ま、待ってください!シュレーン様!」


 私は居てもたってもいれらず声をかけてしまった。


「え?シンシーリア様?」


 シュレーンは近づいてくる私を見て驚く。


「水の中に落ちてしまいますよ、私が取りますので待ってください。」

「あ、ありがとうございます」


 シュレーンよりもシンシーリアのが身長が高いため、私は余裕でプリントをすくい出す。

 しかしプリントは随分水につかっていたため字はぼやけて読むことが出来ない。


「どうしましょう・・・」

「よければ私のプリントあげますよ。」


 そういって私はポッケにしまってあったプリントを取り出す。四つ折りにして少しよれているものの読むのに支障はない。

 しかしシュレーンが慌てて断る。


「そんなことしたらシンシーリア様が困ってしまいますよ!」

「私は他の方から見せてもらうので大丈夫ですよ、気にしないでください。」

「すみません・・・本当に何度も助けていただいてありがとうございます!」


 シュレーンが何度も頭を下げきたため私は気にしないでいいと伝える。


「ではシンシーリア令嬢には私がもう一枚プリントを渡そう」


 すると一連の流れを見ていたエルノクスが予備で何枚か持っていたプリントを私に差し出してきた。

 そのプリントは本来主人公が受け取るはずなのだ。

 私が困っているのにエルノクスは気にする素振りも見せず笑顔をこちらに向けてくる。


「その新しいものをシュレーン様にお渡しした方がよろしいのでは・・・?」

「彼女にはもうすでに君のプリントが渡っているじゃないか、今プリントを持っていないのは君の方なのだからこのまま受け取ってしまえばいい。」


 ちらりとシュレーンを見るもシュレーンもそれに納得したように明るい笑顔をこちらに向ける。


「あ、ありがとうございます・・・」


 私は王子からの好意を無下にすることなど出来ず、諦めてエレノクスからプリントをもらうことになった。

 カイニスに続き、エルノクスまでもストーリーからずれてしまった。一体何が原因なのだ。


「じゃあ私はそろそろ行くよ。シンシーリア令嬢、今度ゆっくり話す機会を作ろう。」


 するとエルノクスはシュレーンと一度も話すことなく立ち去ってしまった。

 シュレーンと二人残された私は表情を作り直して話しかける。


「シュレーン様はもうお帰りですか?」

「はい、そうです。」

「それなら門まで送りますよ。」

「いいんですか!」


 そう言うとシュレーンは嬉しそうに顔を高揚してくれた。

 私も笑顔で頷き二人で門の方まで向かったがこれには訳がある。

 門を出るところで最後の攻略相手である精霊王が待っているのだ。

 今までの要因を考えると私が余計な行動をしてしまったがために攻略相手がそちらに気を取られてしまったのかもしれない。

 そうであれば今度は主人公と一緒に行動を共にすればいい。攻略相手からしたら邪魔な存在がいると思うかもしれないがそんなの些細な事だろう。

 門に向かうまでの間シュレーンが話しかけてくる。


「シンシーリア様は本当にすごいですね。困ったときにいつでも駆けつけてくれて、まるで騎士様みたいです。」

「いえ、本当に騎士なんですけどね。」

「あ、そうでしたね!」


 天然な発言をするシュレーンが可愛くてつい私も笑ってします。


「シュレーン様は光の魔法を持っているのですよね、すごいですね、光の魔法所有者は少ないですので」

「全然そんなことありません!そんなこと言ったらシンシーリア様のがすごいです!高位精霊と契約を交わしていられるのだとか、私なんてたまたま光の魔法所有なだけで・・・」

「そんなこといったら私だって精霊と契約できたのなんてたまたまですよ。シュレーン様がちゃんと努力しておられるのは分かりますのでそんなに自分の事、過小されないでください。」

「あ、ありがとうございます・・・」


 シュレーンは少し顔を俯いて赤くなってしまった顔を隠す。

 それに気づいていない私は精霊王にのんきに会おうとしているがそんなことしたら精霊王の機嫌を損ねて今すぐに殺されてしまうのでは、と思い始め焦り出した。


「あのシュレーン様!」

「はい?」


 急に立ち止まった私に不思議にしているシュレーンだが、私の顔は真っ青だ。


「門まで案内すると言いましたが急用があったのを思い出しました。申し訳ありませんがここでお別れとさせていただけないでしょうか。」


 ここからであれば門が見えるためシュレーンも迷子にならずに帰れるだろう。


「そうだったんですね!こちらこそここまで案内してくれてありがとうございます!」


 疑う素振りもなりシュレーンと別れの挨拶をして、私は少し隠れたところでシュレーンを見送る。

 ここであれば精霊王も気にならないだろうと思い、シュレーンの後姿を見守るもそこでも異変があった。

 シュレーンが門を出てすぐに精霊王が姿を現すはずなのに一切姿を見せないのだ。

 まさかと思い自分の周りを見渡すも私の所に精霊王が来ることもない。

 そのままシュレーンの姿が見えなくなるまで私は彼女の姿を追った。

 しかし精霊王が現れることはなかった。


 このゲームに何らかの支障が起きているのは分かる。

 だがそれが何故なのかまでは分からない。


「一体どういう事・・・?」


 私は一人呟くもそれに答えてくれる者はいるはずもなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。