天才少年の日々(1)
20XX年の5月の半ば頃……。
……最近は、なんとなく教室の窓から、
よく外の景色を見るようになったと思う。
僕の通っている公立中学の校舎の敷地内、
運動場の隅の方に
植えられた桜の花弁が
すっかりと散って、若い緑の葉を茂り、
風が吹けば頼りなく揺れる……。
五月晴れに恵まれた空は、
言うまでもなく、青空に白い雲が
穏やかに漂っている……。
いつもと変わらない街、
いつもと変わらない風景、
……そして、いつもと全く変わらない日常。
……そんな光景が、僕の視界にあった。
まるで、同じ出来事を
ずっと繰り返しているような。
例えるなら、同じ映画を何度も何度も
見せられているような……、そんな感じだ。
実に気味が悪い。
こんな毎日がこれからも
ずっと続くのかと思うと、
気分がとても重い。
……しかしながら、時間は決して
止まっているわけでもなく、
時間割に日付、授業内容や話の話題は、
日々変わっている。
……そう、あの空に浮かぶ雲でさえ、
一分一秒……否、
それ以上の速さで、絶えず形を変えている。
……僕の周りは、誰が何を言われることもなく、
変化し続けているのだが、僕にとっては、
やはり、あまりにも小さな事なので、
何かに比べればそんな物など、
無いにも等しい、ちっぽけな事だ……。
僕はそう思いつつ、
窓際の自分の席でぼんやりと外を眺めた後、
すぐに読んでいた本に目を戻した。