僕も一緒に
迷宮での騒動から、さらにいくつもの季節が巡った。
過保護なお姉さんたちと賑やかな妖たちという、奇妙で騒がしい合同パーティーの旅は、多くの波乱を呼びながらも無事に終わりを迎えていた。
気がつけば、僕の【限定空間収納】の中には、一生贅沢をしても使いきれないほどの報酬と財宝が貯まっていた。
僕たちは冒険者を引退し、広大な土地を買って、皆で一つ屋根の下、毎日のんびりと、笑いの絶えない温かな日々を送っていた。
ある日のこと。
僕は一人、西の大陸の奥深くにある『山神の森』へと足を運んでいた。
木漏れ日が差し込む緑の匂いは、以前ここへ飛ばされてきた時のままだ。
「……懐かしいな」
僕がそっと目を閉じ、森の空気を胸いっぱいに吸い込んだ、その瞬間。
「アレンッ!」
背中から、しなやかで温かい体が勢いよく飛びついてきた。
振り返らなくてもわかる。獣の耳と、ふさふさの尻尾を持つこの森の主だ。
「ルウさん。……会いに来たよ」
「会いたかった……! ずっと、お前が来るのを待っていたんだぞ。さあ、一緒にご飯を食べよう!」
僕は空間収納から調理器具や新鮮な食材を取り出し、彼女のために腕を振るった。
温かいシチューと、こんがり焼いたお肉。ルウは幸せそうに目を細め、何度もおかわりをして、二人でお腹いっぱいになるまで森の恵みと手料理を堪能した。
やがて日は落ち、森は静かな夜の闇に包まれる。
僕たちは落ち葉を集めた柔らかい寝床で身を寄せ合い、甘やかで、穏やかな時間を過ごした。肌を重ね、互いの熱を感じ合う、深く静かな夜。
「……ねえ、アレン」
まどろみの中、僕の胸に頭を乗せたルウが、ふと寂しそうな声でぽつりと呟いた。
「明日には、またあの賑やかな家へ帰っちゃうの?」
その問いかけに、僕は彼女の背中を優しく撫でながら、静かに首を横に振った。
「いや……帰らないよ。僕も、これからはこの森を守る」
ルウの肩が、小さく震えた。
僕の脳裏に、かつてこの森で出会った、あの巨大で威厳ある白い狼の姿が浮かぶ。
フェンリルさんは、人間との闘いの末に、卑怯な罠と毒を使われて命を落としてしまった。人間を信じようとしてくれた、あの不器用で優しい大妖を、僕は今でも鮮明に覚えている。
彼女がたった一人で背負うことになってしまったこの森の重みを、僕も一緒に分かち合いたかった。
「フェンリルさんから託されたこの森を、誰にも脅かされない場所にする。しっかり守り切るまでは……ずっと、君のそばにいるよ」
「アレン……」
ルウは潤んだ瞳で僕を見つめ、やがて、花が咲くように美しく微笑んだ。
「……嬉しい。お前を私の番にして、本当に良かった」
彼女のしなやかな腕が僕の首に絡みつき、そっと、温かいキスが落とされる。
賑やかな家族たちの待つ家も大切だけれど、今の僕には、この森で果たすべき約束がある。
木々のざわめきだけが響く静けさの中、僕たちは互いの温もりを確かめ合うように寄り添い、山神の森の夜は、どこまでも深く、優しく更けていくのだった。
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