表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【追放】ハズレスキル〈掃除〉しか持たない俺、役立たずと捨てられたのに瘴気も魔物も全部“消して”しまい最強の聖者扱いされる  作者: カルラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/15

第十三章「魔王軍、理解する」

王都の夜は静かだった。


だが、その静けさとは対照的に。


遠く離れた魔王領では、異様な緊張が走っていた。


巨大な城。


黒い石で築かれたその内部は、重く沈んだ空気に包まれている。


その中心。


玉座の間。


「……報告は以上です」


跪いた魔族が、声を震わせながら言い終える。


沈黙。


誰も動かない。


いや、動けない。


玉座に座る存在が、あまりにも静かだったからだ。


魔王。


この世界における“災厄”の象徴。


その目が、ゆっくりと開かれる。


「……消えた?」


低く、静かな声。


だがその一言だけで、空気が凍りつく。


「は、はい……」


報告役の魔族が頭を下げる。


「拠点、及び幹部個体が……すべて、痕跡もなく」


「破壊ではなく?」


「消失です」


断言。


魔王の指が、わずかに玉座を叩く。


規則的な音。


思考している証。


だがその内容は、誰にも読めない。


「……あり得ん」


短く呟く。


魔王軍の拠点は、単なる施設ではない。


魔力を凝縮し、維持されている“核”。


それが消えるということは。


単なる戦闘では説明がつかない。


「勇者の仕業ではないな」


確認するように言う。


「はい……勇者パーティは別方面にて確認されています」


つまり。


第三の存在。


それも、勇者以上の何か。


玉座の間にいる幹部たちがざわめく。


「新たな人類側の兵器では……」


「いや、それにしては痕跡がなさすぎる」


「そもそも魔力反応が残っていない」


議論が広がる。


だが結論は出ない。


情報が足りない。


理解が追いつかない。


その中で。


魔王だけが、沈黙を保っていた。


やがて。


「……一つ、可能性がある」


静かに口を開く。


その一言で、場が再び静まる。


「“干渉そのものを否定する力”」


誰もが言葉を失う。


意味が理解できない。


いや、理解したくない。


そんな概念は。


この世界の法則から外れている。


「存在を消すのではない」


魔王が続ける。


「“存在した事実ごと消す”」


重い言葉。


それはもはや、破壊でも浄化でもない。


「……そんなことが可能なのですか」


幹部の一人が恐る恐る問う。


魔王は少しだけ目を細める。


「理論上は」


そして。


「だが、それが可能な存在は……」


言葉が止まる。


その続きを、誰も聞きたくなかった。


だが。


「この世界には、本来存在しない」


断言だった。


だからこそ。


「確認する」


魔王が立ち上がる。


その動きだけで、空気が震える。


「原因を特定し、排除する」


シンプルな結論。


だがその言葉には、絶対的な意思が込められていた。


世界の均衡を守るために。


異物は排除する。


それが魔王の役割。


同じ頃。


王都。


カイトは、城下町を歩いていた。


「自由っていいですね」


率直な感想だった。


人の流れ。

店の並び。

賑やかな声。


すべてが新鮮に見える。


リシアが少し後ろからついてくる。


護衛兼監視。


だが形式上は“同行者”。


「何か買われるのですか?」


「いや、特に」


カイトは首を振る。


ただ歩いているだけ。


それで十分だった。


だが。


ふと、足が止まる。


「……ここ、なんか変ですね」


リシアが周囲を見る。


特に異常はない。


人も多い。


店も普通に営業している。


だが。


「少しだけ、汚れてる感じがする」


カイトが言う。


その言葉に、リシアの表情が変わる。


「……まさか」


完全に消えたはずの瘴気。


だが、もし。


「……残滓」


小さく呟く。


消えきらなかったもの。


あるいは、新たに発生したもの。


どちらにせよ。


放置すれば、また広がる可能性がある。


「どうしますか?」


リシアが問う。


カイトは少し考える。


面倒かどうか。


そして。


「まあ、ついでにやりますか」


そう言って、軽く手をかざす。


――次の瞬間。


空気が、澄む。


目に見えない“何か”が、完全に消える。


周囲の人々は気づかない。


だが確実に。


危険は取り除かれた。


「……やはり」


リシアが小さく息を吐く。


この力は、場所を選ばない。


どこであろうと。


何であろうと。


対象になれば、消える。


そしてそれは。


同時に意味する。


「王都すら、安全ではない」


小さく呟く。


守る対象であるはずの場所が。


この男にとっては、“掃除対象”に過ぎない。


カイトはそんなことを考えず、歩き出す。


「なんか食べましょうか」


いつもの調子だった。


だが。


その背後で。


世界は確実に動いている。


魔王が動く。


王が動く。


そして。


中心にいるのは――。


何も知らない、一人の男。


その無自覚が。


すべてを、加速させていく。













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ