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【追放】ハズレスキル〈掃除〉しか持たない俺、役立たずと捨てられたのに瘴気も魔物も全部“消して”しまい最強の聖者扱いされる  作者: カルラ


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第一章「ハズレスキルと追放」

石造りの広間は、やけに天井が高かった。

声が少し大きくなるだけで、反響して余計にみっともなく響く。


その中央に立たされている自分の姿を、カイトはどこか他人事のように眺めていた。


「では、これよりスキルの鑑定を行う」


老いた神官が、重々しく宣言する。


列をなしていた若者たちが、わずかにざわめいた。

ここは王都の神殿。

そして今日は、“選別の日”。


勇者となる者、あるいはその候補として国に仕える者を選び出すための儀式である。


カイトにとっては、そんなことはどうでもよかった。


(早く終わらないかな)


内心でそう呟きながら、彼は軽くあくびを噛み殺す。


前世では、毎日が締め切りと上司の怒声に追われるだけの生活だった。

それに比べれば、こんな儀式はどうでもいい茶番にしか見えない。


名前を呼ばれる。


「カイト。前へ」


ゆっくりと歩み出る。

石の床に靴音が乾いた音を立てた。


神官の前に立つと、淡く光る水晶が差し出される。


「手を置きなさい」


言われるまま、手を乗せる。


ひやりとした感触が掌に伝わった瞬間、水晶が鈍く光を放つ。


その光は――弱かった。


明らかに、前の者たちよりも。


ざわり、と空気が揺れる。


神官の眉が、わずかに動いた。


「……スキルは――」


一瞬、間が空く。


それだけで、嫌な予感が広間を満たしていく。


「〈掃除〉」


沈黙。


次の瞬間、爆発した。


「は?」


「掃除?」


「なんだそれ……」


失笑が広がる。

遠慮も容赦もない、むき出しの嘲りだった。


カイトは水晶から手を離しながら、小さく息を吐く。


(掃除か)


妙に納得した。


前世でも似たようなことをやらされていた気がする。

仕事の後始末、他人のミスの尻拭い、誰もやりたがらない雑務。


それが“スキル”として可視化されたのなら、まあこんなものだろう。


神官が、形式的に告げる。


「以上だ。下がりなさい」


声には、すでに興味がなかった。


カイトは素直に一歩下がる。


その瞬間、別の声が割り込んだ。


「待て」


甲冑の軋む音とともに、一人の騎士が前に出る。

鋭い目をした男だった。


「念のため確認するが……それ以外のスキルは?」


「ありませんね」


神官が即答する。


騎士は露骨に顔をしかめた。


「……話にならん」


その言葉は、周囲にいる者たちの本音を代弁していた。


勇者候補の選抜において、スキルは絶対である。

戦闘に役立つ能力、補助として優秀な能力。

それらを持つ者だけが、この国では価値を持つ。


掃除。


あまりにも、場違いだった。


「カイト、と言ったか」


騎士が視線を向ける。


「はい」


「貴様は候補から外す。今後、王都での支援もない」


淡々と告げられる。


つまり、追放に近い扱いだった。


だがカイトは、特に驚かなかった。


(むしろ好都合だな)


内心でそう思う。


勇者だの魔王だの、そんな面倒そうなものに関わる気は最初からなかった。


「わかりました」


素直に頷く。


その反応に、騎士がわずかに目を細めた。


「……不満はないのか」


「特には」


「勇者になれる機会だぞ」


「命がけですよね」


一拍。


「だったら、遠慮しておきます」


あっさりと言い切る。


広間の空気が、一瞬だけ凍りついた。


次の瞬間、再び笑いが起きる。


「腰抜けだな」


「だから掃除なんてスキルなんだろ」


「使えねぇ」


好き勝手に言われている。


カイトはそれを、ただの雑音として聞き流した。


(関わらなくて済むなら、それでいい)


それが本音だった。


騎士は小さく舌打ちをすると、手を振る。


「下がれ。次」


完全に興味を失った扱い。


カイトは軽く頭を下げると、広間の端へと歩き出す。


その背中に、誰の視線も残らなかった。


――ただ一人を除いて。


神官である。


彼は、水晶をじっと見つめていた。


先ほどの、わずかな光。


それが消える直前、一瞬だけ――異様な揺らぎを見せたことに気づいていた。


(……気のせい、か)


そう結論づける。


掃除。


その程度のスキルに、意味などあるはずがない。


神官は首を振り、次の鑑定へと意識を切り替えた。


一方でカイトは、すでに神殿の外に出ていた。


眩しい陽光が目に入る。


王都の喧騒が、遠くで波のように揺れている。


「さて」


小さく呟く。


これからどうするか。


考えるまでもなかった。


「適当に、生きるか」


肩の力を抜き、歩き出す。


その一歩が、世界の均衡を崩すことになるなど。


この時のカイトは、当然ながら知る由もなかった。


そしてまた。


彼自身が、何かを“消している”ことにも――まだ気づいていない。













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