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復讐を誓ったふたりの奴隷聖女の暗黒譚―光の勇者軍団と異端の少女―  作者: 奏楽雅


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第1話:絶対に許せない…

―勇者召喚―


異世界より異世界人を勇者として召喚する行為。

勇者は異世界を渡るときに与えられる未知のエネルギーを有する存在。

大地を割り、雨を晴らせ、嵐を呼び、炎で燃やし溶かし、氷で全てを静止させる超常の現象を引き起こす。


こんな便利な、エネルギーを見逃す手はない。この世界の国家は勇者を求めて過剰な召喚を行っていた。


勇者の能力はエネルギーを、勇者の知識は文明を飛躍的に進化させていた。




使い込まれた魔法陣が七色の光を放ち、室内を光で満たす。

ちょっとだけ幸福感のある光が心を癒してくれる。


光の中に人が浮かび上がる。

女性だ…年の頃は20代。OLだろうか…

(呼び出してごめんなさい…)


私は、そこまで確認すると、肉体的な限界から膝をついて床に倒れてしまった。

(苦しい、頭が痛い)

どんなに苦しんでも、誰も手は貸してはくれない。


私は、花月火水風(かげつきひみか)。

地球で女子高生だった。


世界中で、人の消失事件が多発していたのは知っていた。でも自分は関係ないと思い込んでいた。


しかし、そんな考えは甘かった。私はこの世界に召喚されてしまった。当事者になってしまった…


ライトノベルやアニメで見る、異世界召喚ならば与えられた能力とレベルやステータスを上げて、冒険の先に魔王を倒して多くの人から喝采や声援を送られる。そんな華やかな話だと思う。


だけど。


召喚されて、私に最初にかけられた言葉は、「お前らは勇者じゃない奴隷だ、死ぬまで役立ってみせろ」だった…


「今日は何人だった?」

召喚審議官長が、私を見張っている兵士に訪ねる。


「1人です」


召喚審議官長は兵士の言葉に眉根をよせると、倒れている私に近づいて髪の毛を掴んで引っ張り上げる。

「こいつもそろそろ廃棄だな?」

(は、廃棄?)

私は身震いした。


勇者召喚の代償は聖女だ、聖女の命を削ることでしか召喚することが出来ない。


召喚できなくなれば、卵を産まなくなった雌鶏と同じ運命を辿る。


一緒に励ましあった聖女が何人も居なくなるのを見てきた。

同時期に召喚された姉のような美華さん。

妹のように懐いてくれた、柚花ちゃん。

動かなくなってしまった、紗友里さん。

お別れすら出来なかった。

泣いても戻ってこなかった…


「ですが、代わりの聖女がまだ召喚されていませんよ」


聖女も勇者召喚で召喚される。確率はかなり低く最近は更に低下しているようだった。

こんな使い潰すように聖女に召喚をさせていればあたり前だと思う。


「だが、もう限界だろうからな、廃棄もそう遠くないだろう」


「この国にはまだ聖女が他にいますからね」


「この聖女はずいぶんもった方じゃないですか?」


「そうだな、能力が高かったのかも知れんな」

私に顔を近づける。


「それでも、使えなくなればそこまでだ」


「そうなればお楽しみですね?」

聖女は純血が必須条件のため、他のジョブと違いそちら方面では規制が厳しく目を光らせて貰えていた。でも、それも終りが近づいているらしい…


「この聖女は、若くて美人ですからね、ずっと待ってました」


(悔しい…)

この召喚陣を通って召喚された勇者は、誓約が掛けられて逆らえないようにされてしまう。

どんなに強い力を持つ勇者でも、逆らえなくされてしまっては一般人にも劣る。

魔力を奪われ都市を明るく照らす代わりに命を散らしていく…

さっき私が召喚してしまった彼女もそういう運命だ。


「今日、召喚した勇者は仕分けておけよ、早ければ午後の便で出荷できるだろう」

召喚審議官長がそう言って、私を地面に叩きつけると部屋を出ていこうとした。


ドゥオォォォォン!

  ドゥオォォォォン

 ズズズゴァァンンン!

ドゥオォォォォン

  ゴォァァァァァン!

         ガラガラガラ!

     ドゥオォォォォン


突如轟音と、破壊音、揺れが我が身を襲った。

極度の耳鳴りがする。


「な、何事だ!何が起こっている?」


カンカンカンカン


「敵襲、敵襲、長距離砲撃!」


「なな、何をしていた!」


(敵襲って言った?)

キーンと鳴る耳で必死に聞きわけようとする。


天井が崩れ、空が見えた。

(ああ、いつぶりの空だろう)


「逃げろ、逃げろ」


「こいつらはどうしますか?」


「放おっとけ、代わりなぞ幾らでもいる。俺たちの命とは比べられん」


(何ということを…とも思うが、もうどうでもいいとも思った)

「どうせ、生きていても…」


剣戟の音、銃声が近づいてくる。


「うわー助けてくれー」

「ギャァァァァァ」

悲鳴が聞こえる。


ドガァアアン

扉が蹴破られた。


剣を持った兵士が何人も入って来た。


「アグガガガガガ…」

「ヴェ…」

召喚審議官長も兵士も恐怖の表情を浮かべるも、声も出せずに殺されていく。


「おらっ!」

「――あっ……っ」

私は蹴っ飛ばされ、壁に背をぶつけると剣を突きつけられる。


「おい!お前は聖女か!」

――怖い

私は震えながら頷く。


「居ました聖女です!」


「よし、後は皆殺しにしろ!」


「これで、我が国も勇者が呼べるぞ」


(ああ、聞いたことがある。この人たちはどこかの国の聖女私掠部隊…軍の中でも他国の聖女を攫うための特別部隊だ)


「おら!立て!立たねえか!」


(もうヤダ)

「助けて!!」

死んでも良いとさえ、さっき思った。


だけど、このままじゃ嫌だ。


こんな

  こんな

物のように

  扱われるのはもう嫌だ


私は、最後の最後に救いの手を求める。


違う理不尽に対する怒りだ。


許せない。

  許せない。  許せない。

 許せない。 許せない。 許せない。 許せない。

この世界が許せない。

  理不尽な運命が許せない。

 絶対に…

 絶対に…

 絶対に…


「な、なんだこいつ」

剣を持った私掠の男が驚いている。


頭に血が上っているのがわかる。

だけど、それとも違う何かが身体に起こっている。


私の身体が眩い光に包まれている。

胸が熱い、身体が火照る。


「な、な、な、なんだ、何だてめえは…」

得体の知れなさに恐怖を覚えた男が剣を振りかざす。


が、男の剣は振り下ろされることはなかった。


私の前には光の粒子を纏った別の男が立ち。私掠の男を右肩から股にかけて切り裂いていた。


私の周りに男から吹き出た血が降り注ぐ。


「……」

私は両手で顔を覆うが眼は倒れる男を目で追い続けていた。


「なに?なんなの?何が起こったの?」


光が、何もない空間に光が現れる。


目を焼きそうな強い光。


光の穴。


それが


私の周りにいくつも開いていく。


ひとつ、ふたつ、みっつ……ここのつ、とう…


無数の光の穴。


まだまだ増える。


そこから光の粒子を舞い降らせ様々なジョブの者たちが姿を現わした。


剣を掲げる者。弓を持つ者。槍を、大盾を、鎌を、杖を、銃を…


凛々しい男性、精悍な男性、勇ましい男性、見るものを魅了する女性、慈しみ深そうな女性、可愛らしい女の子…


「本物の勇者…」

私は、本能で理解した、この人たちは私の居た世界で、物語の中に出てくるそんな勇者だと…


「貴方が呼んだのね」

見上げると法衣を着た女性が私に微笑み、回復の魔法を私に掛けてくれる。


まだまだ、光の勇者が現れる。

どんどんと…


「立てる?」

法衣を着た女性が私に手を差し伸べる。

私は頷くと、差し伸べられた手を取り力強く立ち上がる。


「おい!女!」

最初に現れた勇者が私を呼ぶ。


「お前は何を望む!」

勇者が私に問う。


私は、その人の目を真っ直ぐに見据え一つ息を吐く。

……



「正義を!」


光の勇者たちは、私を見て、微笑して頷いてくれた。


呼び出した勇者たちの戦いはまるで暴風だった。


私掠の男たちは、視認できたかもわからず血煙と化し、満足な死体さえも残らない。


「大丈夫?」

法衣の女性が私をかばい、牢獄と召喚の間しか知らない建物の中を進む。


誰も居ない…

私を、殴った者たちも、罵声を浴びせた者たちも、私が召喚してしまった人たちも。


私掠部隊がここの人を蹂躙し、光の勇者が上書いたのだろう。


ここに来て初めて外に出る。


日差しが眩しい。


(ああ、こうなってたのね)


私が居たのは…何もない砂漠に建つ教会だった。


どんな神が祀られていたのか、元より瓦解して長い歳月が経っていたように見える。

欲にまみれ、人の人生を奪う世界…



「絶対に許せない…」


そう言う私のもとに、光の勇者たちが傅いていた。


「なんなりと、ご命令を!」


お読みいただき有難う御座います。

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