104.みっちゃんと涼兄さん~2人の始まり~
社宅にの部屋に籠もる美奈のところへいく碧。
そこで、美奈が何故涼に惚れたのかという話をする。
しかし、暴露されたことでもうだめと嘆く美奈に碧は──
「みっちゃん、みっちゃん」
私は一人、社宅の自室に籠もるみっちゃんの扉をノックした。
ノウェムさんには離れた場所にいて貰う。
『碧……?』
インターフォンからみっちゃんの声がした。
「私一人だから、入っていい?」
『うん……』
ドアを開けてくれたので中に入る。
中は、のんびりうさぎのグッズや小説が置かれた、みっちゃんらしい部屋だった。
引っ越しの時より、本の数ものんびりうさぎのグッズの数も増えている。
「気づいてなかった私が言うのもアレなんだけどさ、涼兄さんのこと、いつから好きになったの?」
「……中学生の頃、碧の家で勉強会をした時に、お菓子をくれたでしょ。私と碧に」
「そういえば、あったなぁ」
私は思い出す。
中学生時代、まだ飛び級していなかった私は、みっちゃんと同じクラスだった。
当時、物覚えの悪かった私は勉強に悪戦苦闘していた。そんな時、みっちゃんから『勉強会やらない?』と誘われた。
頭の良かったみっちゃんは、当時から周囲に気後れされていたけれど、私はその誘いに乗った。
『いいの⁈ 勉強教えて‼』
『うん、いいよ。何処でしようか』
『私の家でやろう!』
『うん!』
そんなこんなで私の自宅で勉強会を行うことになった。
勉強をしていると、小腹が空いてきた。
『お腹空いた』
『あ……ごめんね。お菓子を持ってくればよかったね』
『ううん、いいよ。ちょっと探して──』
『碧、友達か?』
『涼兄さん、うん、友達』
『で、何してるんだ?』
『勉強会、だけど小腹が空いてきちゃって』
『ちょっと待ってろ』
そう言って兄さんはクッキー類の入った木製の器と、紅茶パックを持ってきた。
『勉強には甘いもんがいいだろ。紅茶は、そこのお湯を使って淹れてくれ。えっと……』
『み、美奈です! 楠木美奈って言います』
『美奈さんね。妹の勉強を見てくれてありがとう。んじゃ、俺はこれで。碧ー、いい友達は大切にしろよー』
『分かってるよ!』
「……そんなこともあったなぁ」
「碧、凄い懐かしそう」
いつの間にかみっちゃんは泣き止んでいた。
「でも、私、みっちゃんに言ったよね。涼兄さんは女性同士の陰湿なやり取りを何度も目撃して、現実の女性が苦手だから二次元に走ってるって」
「う、うん。それでも……ううん、それも含めて好きになってたの」
「マジか」
私は衝撃を受ける。
まさか、趣味ひっくるめて受け入れていたとは、なんと懐が深いのか。
「今一緒に会社でお仕事してて、普通に接してくれるから、その関係を壊したくなく付き合ってほしいとか言わなかったの……」
「そっか……」
「なのに……なのに……お父さんは……」
「お父さんの馬鹿ー!」
部屋中に響き渡るみっちゃんの声。
そしてまた泣き出す。
「私の初恋これでおわりだよ、だってそういう風にみられるの嫌なんだもんね碧のお兄さん!」
「いや、違うぞみっちゃん!」
私は否定する。
「涼兄さんは確かにオタクで、二次元愛が強すぎる。でも、それだけピュアな恋愛をしたいという願望の表れだ! その証拠に、奴のエロ本とエロゲーは純愛ものばかりだ!」
「あ、碧……それ言っちゃっていいの?」
「言ってからちょっと後悔している。さすがに兄の性癖を公開するのはどうかと思ったが、みっちゃんのためなら暴露する」
「……」
「それに、桐人兄さんが以前、涼兄さんに言ってたんだ。『お前が合コンに行くたび、傷ついてる子がいるんだよ。早く気づけ、バーカ!』って。そんなことを言われて、涼兄さんは狼狽えていた。脈はある」
「でも……」
私はどうしようかと困り果てているみっちゃんにこう言った。
「大丈夫‼ さっきの兄さんの様子からして、喜んでいたはずだ‼ みっちゃんに好意を持たれて、うれしかったんだよ‼」
「ほ、本当……?」
「ただね……」
「た、ただ?」
「純愛好きな涼兄さんだから、たぶん『まずはお友達から始めさせてください』になると思う。それでもいい?」
みっちゃんは黙り込んだ。
そして──
「うん、それでやってみる」
「さて、じゃあ行こう、多分涼兄さんは休憩室だ」
「何で分かるの」
「何となく」
私はにこりと笑って答えた。
休憩室に行くと、涼兄さんたちの声が聞こえてきた。
「おい、涼! どうするんじゃ!」
ガンツが涼兄さんに尋ねている。
「涼様、ここが勝負所ですよ!」
セムさんは、逆に涼兄さんに檄を飛ばしている。
「涼にはもったいねぇなぁ」
ドゥオが言う。
「「「「「「ドゥオは黙れ!」」」」」」
休憩室にいるであろう、多分全員が言ったと思う。
私は咳払いをして休憩室に入り、命令した。
「涼兄さんを残して、全員、今から休憩室を退出しなさい。これは社長命令です!」
「「「「「「了解!」」」」」」
「え、ちょ、面白そうなのに、ぐぇー!」
ドゥオが軽く締められた音が聞こえる、私はみっちゃんの背中を押して休憩室を出るフリをして影に隠れる。
ノウェムさんも一緒。
「あ、あの……その……」
「え、えっと、美奈ちゃんで良かったかな。それとも美奈さんがいい?」
「えっと……さん付けの方で……」
兄さんたちのもどかしい会話が聞こえる。
「美奈さん、その……俺、二次元が大好きなのをやめるつもりはないけど、それでもいい?」
「はい」
「……あの、よかったら恋人として付き合ってもらえませんか? 最初は友達からとか思ったけど、今まで会社で社員としてやり取りしてきたのに、友達からっていうのも……って、なんで泣いてるんですか⁈」
ワーオ、兄貴、予想以上のことを言ったよ。
「違うんです、嬉しくて……ありがとうございます、どうぞ、宜しくお願いします……!」
みっちゃんはそう言って、涼兄さんに抱きついた。
涼兄さんは真っ赤になって硬直していた。ありゃー、こりゃ先に進むのは大変そうだなぁ。
そして二人は、医療室へ報告に向かった。そこでは、殴られて出血したみっちゃんのお父さんをトレースさんが治療しており、みっちゃんのお母さんも付き添っていた。
「……恋人になるには条件がある。君の二次元グッズを──」
「あなた‼」
「痛い、痛い! だから靴の底で私を殴るのはやめてくれ、美代!」
「美奈はそれも込みで恋人になるって決めたんだから、私たちが口を出すことじゃないのよ! いい加減、分かりなさい!」
また靴の底で父親を叩くお母さんを見て、みっちゃんは頭を抱え、涼兄さんは「ま、まぁ言いたいことが言い合えるご両親じゃないか」とフォローしていた。
その間に、ドゥオには、みっちゃんと涼兄さんの関係に絶対に関わるなと血判を押させた。
もしちょっかいを出そうものなら、肉塊もどきの刑で済むと思うなとウヌスさんにも脅され、ドゥオは半泣きで頷いた。
私にはちょっかいを出さなくなってきたから、放置でいいや。
だが、みっちゃんと涼兄さんのことは許さんぞ、ドゥオ。
美奈の恋愛成就のお話でしたね。
話でちょっと分かりにくかったかもしれませんが、美奈が涼に惚れたのは美奈を涼が特別扱いせず、なおかつ妹(碧)の友達として大切にしろよと、碧に言っていることに感激して美奈は惚れたんです。
まぁ、そんな美奈の気持ちも知らないまま涼の情報を一部暴露していましたが、今回全面暴露しましたね。
そして、涼も頑張りました。
美奈のお父さんはちょっと空気読もうね、だから奥さんに叩かれるんだよ、靴で。
ドゥオは先に先手打たれたので美奈たちにはちょっかい出さないでしょう、碧とノウェムは少なくなってきているから放置されていますが。
さて、ここまで読んでくださりありがとうございました!
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