~エピローグ~
「ノクスちゃん復帰おめでとうを祝して――」
「「「「「かんぱーーーいッ!!!」」」」」
それから1週間後。《魔女》の屋敷では盛大なパーティが催されていた。
食堂にはすべての《召使》が集まり、ドンチャン騒ぎを起こしている。中にはすでに酔いつぶれて床に突っ伏している者まで。
そしてその席の真ん中に座っているのが――今回のパーティの主役であるノクスと、肩を並べてジュースを口にするミリとアナウスだった。
「ミリちゃ~ん! 私が寝ている間にガールフレンドを作ったって本当~!?」
数日前にノクスが全身を修復して目覚めた時、彼女は速攻で飛び起きたらしい。
そして真っ先にミリの自室へ向かったノクス。扉を開いて彼女が見たのは、知らない銀髪の少女と戯れるミリの姿だったという。
「そうだよ! アナウスはね、私の最愛の女の子~!」
「ちょ、ちょっとミリちゃん……恥ずかしいですって……」
アナウスにギューッと抱きつくミリ。
口では色々と言っているが、アナウス自身もまんざらではなさそうだ。
「ミリ、最近浮かれすぎ。昨日は朝番で料理を焦がした」
「ルクス! アナウスの前でそういう格好悪いこと言わない!」
ジト目でミリを見ながら、ジュースをチビチビと飲むルクス。
「だってミリ、最近私と遊んでくれない……」
魔法に目覚めたことで、自身を蝕んでいた膨大な魔力波長のコントロールができるようになったアナウス。彼女が邸宅の出入りを許されるようになってから、ミリは毎日のようにアナウスと蜜月を過ごしていた。
「ご、ごめんって……今日は4人で集まろう? ねっ?」
「やったーーっ! なにするなにする!? チェス総当たり戦でもする!?」
「ノクスさん、意外と硬派なんですね……」
「遊ぶにしても……アナウス、目は見えるの? 腕が作れるのは聞いたけど」
ルクスが対面にいるアナウスへ問いかける。
アナウスはあれから目を瞑って過ごすようになった。彼女曰く「こちらの方が、魔力をコントロールする時に集中できるんです」とのことだった。
「それについてなんですが、1週間の練習の成果が出まして……ほら!」
そう言うと、アナウスの身体の周りに黄金の炎が立ち上がる。
纏った炎からは、いくつかの丸い球体が創り出された。
「これ……なに? 真珠?」
「簡易的な目です。まだ不完全ですが、それなりに周囲の様子が見られるんですよ」
真珠のような黄金の瞳たちは、机の上を周りだす。
「ある程度の距離ならこうやって動かせるので、今後練習を続けていけば、むしろ以前の目よりも便利になるかもしれません」
「す……すごい! やっぱりアナウスは天才だよ~!」
「だから恥ずかしいですよ……ミリちゃん……」
もう一度抱きつくミリ。まんざらではないアナウス。
(でも……私だって、やられてばかりじゃないんですから!)
決意したアナウスは、黄金の腕をミリの背中に回し――唇を重ね合わせた。
その時間は一瞬。
ノクスとルクス、そして周囲の《召使》までもが、目を点にしてその光景を見ていた。
――唇が離れる。
「……? あっ、ああ、ああああアナウス! ななっ、ナニヲ!」
一瞬フリーズしたミリ。
彼女はすぐに顔を真っ赤にし、慌てふためいた。
「ふふ……ちょっと、魔法の操縦が上手くいかなかったみたいです♪」
ニコニコと微笑むアナウス。
その顔も――見事に真っ赤であった。
◆
パーティの端っこ。
「……それで? これはどこまであなたの計画ですの?」
「なんのことだね?」
壁に寄りかかってワインを嗜んでいるのは、セレノアと《魔女》だった。
「とぼけないで下さいまし。あなた、わざと調査を遅らせていたでしょう」
あの後、労災の原因が判明したセレノアは、数日徹夜して資料をまとめ上げ、総会でそれらの事態が解決したことを発表した。もちろん娘たち ”悪魔憑き” のことはボカして。
「そう怒らないでくれたまえ。総会についてはワタシも手伝っただろう?」
その衝撃の内容に世間はザワついたが、セレノアの大商会自体には大きな批判がくることもなく、事業はその後も順調に再稼働している。
「怒っているのは私のことではありません! あなた、今回の件にワザと娘も巻き込んだでしょう! 自分で書いた本まで使って!」
セレノアの持つワインの中身が揺れ、数滴が地面に落ちる。
「落ち着きたまえ。今回のワタシは、あくまで彼女らを ”観察” しただけに過ぎない。選択を下したのは――全て彼女らの自由意思によるものさ」
《魔女》はワインを一口舐める。
「見たまえ」
セレノアはそう言われて《魔女》の視線を追いかける。
そこには、真ん中で楽しそうに笑うミリと娘の姿があった。
「アナウスは、ワタシたちが生んだ大切な子供だ。そんな彼女を、まさかあのまま閉じ込め続けるつもりだったのかい?」
アナウスは、かつてセレノアと《魔女》がとある方法で産んだ子供だった。
本人はそのことを知らないが、昔から男親の影が全くないことを不審に思っている様子はあった。聡明な娘のことだ、いつか気付くかもしれない。
「あなたの遺伝子が混じらなければ、あの子が ”悪魔憑き” として生まれることもなかったかもしれませんわね」
「――セレノア。まだ ”悪魔憑き” についての研究は世界でもほとんど進んでいない。勝手な憶測はワタシではなく、アナウスを傷つけるだけだ」
セレノアは押し黙る。
少しお酒が回りすぎたのか、余計なことを口走ってしまったことを軽く後悔しているようだった。
「FM052に関しては、残念だったね。魂の核となる部分が破壊されていると、流石のワタシでも完全修復は不可能だ」
「……いいのです。あれは、私が過去を引きずっていた証ですから」
セレノアが目を伏せる。
FM052の魂は、学生時代にセレノアの婚約者である男性が元になっていた。
「彼が ”悪魔憑き” の学園テロによって死んだ日。あの日から私の中の時間は止まっていましたわ」
婚約者を失い、絶望したセレノア。
そこで彼女は当時学園の非常勤講師をしていた《魔女》に交渉を持ちかけた。
彼の遺体を研究材料として使う許可を出す代わりに、その魂を元に自律型の魔導機械を作って欲しい、と。
「ようやく……動き出したかね?」
「ええ。そしてこれまで私は、娘が同じような悲しみを味わうかもしれない恐怖に、ただ怯えていた」
アナウスを ”外の世界” から遠ざけ、 ”悪魔憑き” から遠ざけ、安全な家業を継がせる道に固執していた。
「――だが彼女たちなら、これからも訪れるであろう無数の試練を乗り越え、そして辿り着いてくれる……そうは思わないかい?」
笑う《召使》たち。
はしゃぐノクス。呆れるルクス。
お互いに肩を寄せ合いながら幸せそうに微笑むミリとアナウス。
「………………」
しばらくボーッと目の前の景色を眺めるセレノア。
そして彼女は目を瞑り、ワインを一口舐めた。
「当然でしょう? だって私たちの娘と――その最愛ですもの」
――第一章:完
これにて第一章完結です! お疲れ様でした!
ここまで読んでくれた人はどこまでいるのでしょうか? もしいたとしたら、目の前にいるあなたはきっと、この作品を多少は気に入ってくれた……のかな? どちらにしても、ありがとうございます!
さて、この物語はまだまだ続いていく予定ではありますが、その前に1つお願いがあります。
なんでもいいです! 反応をください!
コメント、評価、ブックマーク……なんでもいいです! なんなら批判でもいいです! 皆さんの反応1つ1つが、私のモチベーションになり、この物語を前に進める一番の原動力になります!
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それでは、また第二章でお会いしましょう!




