第三十四話 サツキと愉快な仲間たち、全員集合!
スヴィーニツお兄様の組織『幸福評議会』が、わたくしの家を襲撃なさるという情報を手に入れました。
『幸福評議会』の皆さんを迎え撃つため、わたくしはリオン様に相談します。
「リオン様、敵さんは777人もの方々がいますわ。わたくしの家を無傷のまま追い返すには、こちらの戦力を増強した方が良さそうですわ」
「そうだな。ではヨイチとトウカを呼んでこよう。彼らには稽古をつけていたのだが、そろそろ実戦も経験させてやりたい」
「お願いします。わたくしにもアテがありますわ。『魔術クラブ』の皆さんです」
リオン様はヨイチお兄様とトウカお兄様を呼び、お二人を連れてきてくださいました。
わたくしも『魔術クラブ』のメンバーに来てもらうため、ヤマト先輩のお家に行きます。
快く迎え入れてくださったヤマト先輩に事情を説明し、『魔術クラブ』の精鋭達を呼んでいただきました。
そして、わたくしのお家に集まった精鋭たち!
人数では『幸福評議会』の皆さんには全く敵いませんが、総合的な実力なら全く負けていないと思います。
まず前衛部隊として、最強剣士リオン様と、その弟子達の狂剣士ヨイチお兄様、凶拳士トウカお兄様。
彼らには攻勢に出ていただき、敵さんの数を減らしていただきます。
次に中衛部隊には、『死の山』踏破者シン先輩、紫電の探求者ライデン先輩。
お二人は強力な魔術を扱うだけでなく、防御力も高く、物理攻撃もお得意でいらっしゃいます。
彼らは庭に侵入してきた敵さんを排除してもらいながら、前衛部隊のサポートをしていただきます。
そして、後衛部隊の魔術師軍団。
魔術の天才ヤマト先輩、火葬王女ヤヨイお姉様、彼女のライバルのフレア先輩、雷撃王女クコロお姉様、そしてわたくしサツキ。
わたくし達は家の屋根やベランダから、圧倒的な火力で『幸福評議会』の方々を狙い撃ちにいたします!
万が一、この絶望的な壁を乗り越えて、家の中にたどり着けたとしても、そこにはわたくしの膨大な魔力を供給してある魔導人形のミナヅキが待機しております。
わたくしの家に侵入するようなおバカさんには、地獄をみていただきましょうね。
ちなみにウヅキお姉様もわたくしの家にいらっしゃいましたわ。
外に出るのは危険なので、彼女には司令塔としての役割を与えておきます。
すると彼女は「司令塔が一番偉いのよね!? 私に任せなさい!」と言って、やる気に満ち溢れたお顔で頷いていらっしゃいますわ。
ホホホ、なんて扱いの簡単なお子様なのかしら!
非戦闘員はツバメお姉様(とウヅキお姉様)だけです。
エミリーさんは一通りの武器の扱いを習得されているようですわ。
なんでも『上級侍女たるもの、どのような武器も扱えて当然』だそうな。
エミリーさんにはツバメお姉様と一緒に待機していただきます。
それから近所の方が巻き込まれないように、わたくしの家の近くには近寄らないように注意喚起をしてあります。
後は夕方になるのを待つだけです。
***
わたくし達は『幸福評議会』の皆さんがやってくるまで、家の中で親交を深めます。
男子は剣や魔術の話、女子はガールズトークに花を咲かせておりますわ。
「シン先輩は『死の山』でどんな魔物と戦ったのですか?」
「そうだな……。よく遭遇したのはB級の魔物『幻想孔雀』だな。奴らは至る所に巣を作っているので、俺が寝床によさそうな洞穴を探すたびに襲われた」
「スッゲー! あの『幻想孔雀』と日常的に戦っていたんスか?」
「いや、俺はずっと逃げてばかりだった。しかし、ある時『幻想孔雀』の幻術にかかり逃げることができなくなった。俺はヤツの晩飯になるハズだったんだ。だがそんな時だ。俺が女神様の啓示を受け――」
男子グループはシン先輩の体験談に耳を傾けています。
そして、わたくし達女子グループは……、
「ツバメさんの婚約者の方はどんな方なんですか?」
「ええ、傭兵家業をしていたせいか、ガサツで口が悪いところもありましたが、優しい人だったとも思います。私のことをちゃんと気遣ってくれる人でした」
「まあ、ツバメお姉様を気遣ってくださる優しい方ですのね! 彼とのステキなエピソードはありますか?」
「ステキかどうかは分かりませんが、こんなことがありました。彼が、私を同業者達に紹介した時の話です。他の傭兵たちが私を見て言いました。『財産はないくせに、兄弟姉妹は多すぎるほどいる。お前の想い人はおかしなヤツだ』と。すると彼は立ち上がって――」
ツバメお姉様と婚約者さんのステキエピソードに聞き入っていました。
わたくし達が親交を深めていると、来客があり、エミリーさんが玄関に向かわれます。
もう『幸福評議会』の皆さんがやってきたのかしら?
まだ襲撃までは時間があるはずです。
もしかして、『チキン剣士』さんは時刻をお間違えになっていたのでしょうか?
わたくしが緊張しながら玄関の方をそっと窺うと、サングラスを掛けた黒服の方が、黒いハットを取りながらエミリーさんに何か話しています。
『幸福評議会』の方ではないようですが……。
その黒服の方はわたくしを目ざとく見つけると、
「あっ! サツキお嬢さん! サツキお嬢さんですね!? アッシの話を聞いてくだせえ!」
と、ドスの利いた声でおっしゃるのですわ。
リビングで話していた精鋭の皆さんはその声に驚き、一斉にわたくしの方を見ました。
「ホホホ、わたくしに来客のようですわ。『幸福評議会』の皆さんがいらっしゃるのはまだ先のようです。もう少しお待ち下さいな」
わたくしは精鋭の皆さんにそう言って、玄関へと向かいました。
黒服の方はわたくしに向かって頭を下げました。
「サツキお嬢さん、アッシはブラック商会のホワイトという者です。以後、お見知りおきください」
「はあ、ホワイトさんですか。ブラック商会の方がわたくしにどんなお話があるのですか?」
わたくしが首を傾げて尋ねると、ホワイトさんは真面目なお顔でおっしゃいます。
「実はサツキお嬢さんにお願いしたいことがあるんです。ブラック商会を建て直すために、サツキお嬢さんに会長をやって――」
「お断りします」
彼が言い切る前にわたくしはお断りいたしました。
悪名高きブラック商会の会長になるなんて、冗談でも考えたくありませんわ!
そんなことになれば、『ブラック商会を乗っ取った魔王サツキ』という学園で流れていた噂、そのまんまではありませんか!
絶対にお断りいたします!
「そ、そう言わずに最後までアッシの話を聞いてくだせえ! 今ブラック商会は――」
「『ブラック商会』がどうなろうと、わたくしの知ったことではありませんわ! 大体会長さんはまだいらっしゃるのではなくて!? 逮捕されたのは若頭のティレニア姐さんだけでしょう!?」
「いえ、『治安維持省』が徹底的にブラック商会を洗い直し、会長も逮捕されました。そして、構成員の大半も牢にぶちこまれたんです。残されたアッシらが生き残るには、サツキお嬢さんのお力が必要なんです!」
「あなた達の事情など知りません! わたくしはこれ以上ブラック商会には関わりたくないのです!」
どうして、ホワイトさんはわたくしをブラック商会の会長になってもらいたがっているのでしょうか?
おかしいではありませんか。
わたくしはブラック商会の本部を潰した張本人ですのよ?
なぜわたくしは、学園の皆さんに怯えられ、ホワイトさんのようなアウトローな方々に慕われてしまうのでしょう?
なぜわたくしにこのような不運ばかりが――
ハッ!?
もしや、わたくしがブラック商会の会長に祭り上げられようとしているのも、スヴィーニツお兄様のせいなのでは!?
……ゆ、許せません!
スヴィーニツお兄様も、『天運の短剣』も、『幸福評議会』も、ブラック商会も!
どれもこれも、滅んでしまえばいいのですわ!
わたくしが怒りに燃えていると、ホワイトさんが恐る恐るお尋ねになられます。
「あの、サツキお嬢さん?」
「お嬢さん、などと言わないでください!」
「ではサツキ姐さん、でしょうか?」
「もっとダメですわ! とにかく、わたくしは悪名高きブラック商会の復興を手伝う気はありません! お帰りください!」
「そんなあ、ブラック商会だって、もともとは地域の皆さんの困ったことをお助けして報酬を頂いていた優良商会だったんでさぁ。それが先代の会長がトップになったときから――」
「そんなことを聞かせないでくださいませ! わたくしはブラック商会の歴史などに、詳しくなりたくはありませんわ!」
「そうなんですか。スミマセンでした……。それで、先代の会長がトップになったときからアッシらの地獄がはじまったんでさぁ」
「何をしれっと、話をお続けになろうとしているのですか!」
「まあまあ、それでアッシらは――」
「お止めになって!」
わたくしとホワイトさんが押し問答をしていると、二階で家の周りを見張っていたリオン様が降りてきておっしゃいます。
「サツキ、『幸福評議会』のお出ましだ。迎え撃つぞ。キミも遊んでいないで、準備をしなさい」
「なっ!? あ、遊んでですって!?」
わたくしがリオン様に一言申そうとした時、リビングから精鋭の方々が各々の配置場所に向かって移動し始めます。
「ほら、もう時間がない。その男は邪魔にならないところで待たせておきなさい」
リオン様はそう言って、家の外へと歩いて行かれました。
「もう! 仕方がありませんわね! ミナヅキ、この方を見張っておいてちょうだい。怪しい動きをなさったら、遠慮しなくてもいいわ、やっつけてしまいなさい!」
「分かりました、サツキお姉様」
わたくしとミナヅキのやり取り聞いていたホワイトさんは、
「へへ、ご安心くだせぇ。何が始まるかは知りませんが、床にでも座ってじっとしています」
と言って、リビングの床に体育座りするのでした。
***
わたくしは後衛部隊の皆さんのあとに続いて二階へ移動しました。
そしてベランダに出ると、道の遠くからキラキラと輝く服装の軍勢がコソコソと近づいてくるのが見えました。
あの方々が『幸福評議会』ね!
なんて悪趣味な服装なのかしら。
あのような悪目立ちする服でいらっしゃるなんて、本当に奇襲をするつもりがあるのでしょうか?
口の滑りが良すぎる『チキン剣士』さんもオマヌケですが、あの方々も相当オカシイわ。
『幸福評議会』の皆さんが家の周りを取り囲みます。
すると彼らの中でもいっそうキラキラした服を着た方が、わたくし達が防衛の準備を完了していることに気づいて叫びました。
「な! なぜだ! なぜお前たちは準備万端なのだ! なぜ我々が奇襲を仕掛けることを知っている!?」
わたくしは二階のベランダから、彼に向かって叫びます。
「ホホホ! そちらには内通者がいらっしゃるのではなくって!? 獅子身中の虫ですわ!」
「バカな! 『幸福評議会』に内通者などいるはずがない! 我々は選ばれし777人……! そうだ! こちらには777人もいるのだ! 奇襲がバレたところで作戦に影響はない! 第7777王女を差し出さないと、貴様らも血祭りにあげてやるぞ! さあどうだ! おとなしく第7777王女を差し出すか、777人の我々に歯向かうか! 返答はいかに!?」
「これが返答ですわ! 核撃爆破!」
「ぎゃあ!」
わたくしの核撃爆破を受けて、彼とその周りにいたキラキラの服の方々は吹き飛ばされました!
それを合図に、リオン様率いる『バーサーカー』達が『幸福評議会』の皆さんに襲いかかります!
さらに魔術師達による魔術のフルコースが追い打ちをかけ、わたくしの家の周りには『幸福評議会』の皆さんの悲鳴が響き渡ります!
さあ、決戦開始ですわ!




