0、◆プロローグ
(;^_^A 初めましての人、久方ぶりの人、閲覧ありがとうございます。ひっそりこっそりお恥ずかしいですが、ご興味のある人は読んでいただけたら嬉しいです。
ペテンや詐欺を養護するつもりも推奨するつもりもありません。
シンデレラという題材はベースがあるから弄るのにおかげで少し楽させてもらい今回は執筆がかなりハイペースでしたが、変化させた作品は色々ある上に他の作家の作品と被らないようにしたつもりです。
ただメインエピソードや必要最低限の登場人物は決まったけど、エンディングはぼやっとしか決めてません(をい)。行き当たりばったりで5話か?登場人物たちに頑張ってもらうか…と思ったら、中盤で登場人物増やさざるを得なくなり(犠牲者2名とか王妃とか王太子とか)途中経過も前後入れ替えて14話と予定より長くなりましたが、ラストはどうなることやら?作者も楽しみです(え)w
◆序話
── 貧乏生活の始まりと、廃鉱山の秘密と大白金貨50枚、50億相当もの大借金を背負う? ──
ちょっと魔法があるかもしれない? 不思議異世界。
ヘッジホッグ王国の首都から少し離れたとある地方の閑静な地区に、スタンダードグレー伯爵家の屋敷はひっそりと佇んでいた。
かつては小規模ながらも華やかな舞踏会が開かれ、親しい仲間内だけのお茶会も催され、1部の貴族たちの間では羨望の的となるほどの豊かで平和な家だったが、今では借金の重石に沈み、主を失った寂しさが漂っている。
「はあ~パール、またこの屑野菜のスープだけ?」
食堂で、燃えるような赤い髪と夕暮れのような深い紫眼のベルベット伯爵夫人が深いため息をついた。かつては絹のドレスに身を包み、宮廷でも注目を集めた美貌の夫人も、今では質素な服を着て痩せ細り、野菜のスープを前にしていた。
「ごめんなさいお母様、お姉様たち。市場で掃除の手伝いをしてやっと手に入れたのですが……」
1か月前に16歳のデビュタントをなんとか終えたパールは申し訳なさそうにうつむく。母親に似た紫色の瞳だがやや朝焼けに近い薄い紫の瞳を持ち、母方の祖母の色を継いだ彼女の明るい金茶色の髪は、かつては丁寧に手入れされていたが、今では簡単に結われているだけだった。
ベルベット夫人は微笑んだ。
「仕方ないわね……」
20歳になりたての、これまた母親と似た紫色だが夕焼けの桃色が少し混ざった瞳と、父親と母親の中間の色を受け継いだ明るい橙色の髪の長女のエボニーがスプーンを置いた。
「大白金貨50枚分もの借金を返済するためには耐え忍ぶしかないわ……」
数か月前に18歳を迎え、唯一父親と同じ灰色の瞳と愛くるしい桃色の髪のベージュも水をがぶ飲みして何とかお腹を膨らませる。
「また当分、水だけのたぷたぷお腹だけでやり過ごすしかないのね」
これは、パールが虐げられているわけではない。ただ、状況がそうさせているだけなのだから。
だって仕方ないのだ。人の良い父親が作った借金のせいで、使用人を雇えなくなったのだから。
最後まで頑張ってくれた年老いた執事には、身体の不調を理由に退職金はなんとか工面してやり、娘夫婦のいる実家に帰ってもらった。他の使用人も、給料が渡せなくなると説得し、紹介状を渡して辞めてもらうしかなくなったのだから。
「パール。ここはいいから、片付けが終わったら洗濯をお願い」
「は~いお母様」
パールは笑顔で返事をした。
もちろん、パールに前世の記憶が戻るという、特殊な条件のせいで虐げられているわけでもない。それに、パールだけでなく、家族全員がそれぞれの方法で稼ぎに行くしかなかったのだから。
*****
── 伯爵一家に訪れた突然の不幸とは? ──
前述で説明したように、首都から少し離れた地方の閑静な地区に建つスタンダードグレー伯爵家には、今や暗い影が落ちていた。
すべては半年前、故グレイ・スタンダードグレー伯爵が亡くなったことから始まった。
ある日。
彼ら一家に突然の不幸が訪れたたためである。
生前のグレイ・スタンダードグレー伯爵は、アグーチ・ブルーパッチド侯爵から
「絶対もうかるから。絶対損させないし、しないはずだから」
という投資話を持ちかけられた。侯爵は巧みな話術で、海外貿易で莫大な利益が得られるという話を信じ込ませ、伯爵に多額の投資をさせるのが目的で近づいたとも知らずに。
誠実すぎる伯爵は侯爵の話を信じ、家族の将来のためにと、ありったけの財産を投資に注ぎ込んだ。
しかし、その投資商品を積んだ船が海難事故に遭い、すべてが失われた。それだけでなく、伯爵はなんと総額大白金貨50枚分、金貨にして5000枚、50億相当もの借金を抱えることになってしまったのである。
スタンダードグレー家の年収の10年分にも相当する額を。
「な、なぜだ? どうしてこんなことに……」
伯爵は蒼白になり焦った。
やがて伯爵は、借金返済のために金策に奔走することになった。ただ、父母の前伯爵はすでに亡く、頼れる親戚もいない。
そこでせめて妻であるベルベット伯爵夫人とは離婚して、彼女の実家の男爵家を頼ってもらい、妻と子供達だけでも借金から引き離そうとした。
が、男爵家はベルベットの弟夫婦が継いでいるし、彼ら家族に迷惑はかけれないと固辞した。
それにベルベットも3人いる娘たちも、助け合ってこそ家族ではないかと、夫であり父でもある伯爵の助けになればと、身の回りの物を売り内職をして助けようとさえした。
しかし一向に減らない借金に、伯爵の過労はたたり、病に倒れあっけなくこの世を去ることになった。享年35歳という若さでこの世を去ったのである。
「父上があんなに……」
次女のベージュが涙をぬぐった。
「あの優しい父様が、どうしてこんなことに……」
ベルベット夫人は娘たちを優しく見つめた。
「あなたたちのお父さんは、人を疑うことを知らなかったから……それがあの人の良さでもあり、弱点でもあったのだけどね……」
残されたのは未亡人となったベルベット夫人と、3人の娘たち ── 長女のエボニー、次女のベージュ、三女のパールたちだ。
だが実はこの投資話、全ては侯爵の言葉巧みな嘘であり、罠であったのだ。
夫人は知らなかった。侯爵がベルベット夫人自身に横恋慕していた上に、スタンダードグレー伯爵領地にある廃鉱山と、夫人の両方とを手に入れるために、わざと偽りの投資話を持ち込んだことを。
しかし、侯爵が知らなかったのは、その鉱山が伯爵のプロポーズの条件として、すでにベルベット夫人の名義になっていたことだ。
*****
── 伯爵夫人が侯爵からの好意的で利益のある申し出に頑なに拒絶する理由とは? ──
伯爵の葬儀ための弔問時、アグーチ侯爵は早速動いた。
借金の抵当として、スタンダードグレー家の領地と資産を差し押さえようとしたのだ。しかし、1つだけ手に入らないものがあった。
領地内にある廃鉱山だ。
けれどベルベットは、どんなに侯爵から
「あの何の役にも立たない廃鉱山をさっさと手放してしまえば、簡単に借金を全て帳消しにできるのですよ?
ベルベット夫人。私が生前の伯爵と懇意にしていた誼だ。どうか意を組んで私に全ての負債を任せてはもらえまいか。
このままでは、残された娘さんたちを3人も抱えた上に、一族郎党落ちぶれることになりかねん。
だが、もし私に負債の件を任せてくれるなら、これからも娘さんたちに貴族としての生活を続けさせれるし、いい縁を組ませることも出来るだろう?」
侯爵は優雅に紅茶をすすりながら言った。彼の黒髪が燭台の光で銀のように輝き、銀色の目は夫人を貪るように見つめていた。
「申し訳ありませんが、それはできません」
ベルベット夫人の声は静かだが、確固たる意志に満ちていた。
「ベルベット夫人。それならばせめて、その廃鉱山を抵当に入れるのはどうだろうか? そうすれば借金の返済期限を延長してさしあげましょう」
だがベルベット夫人は頑なに鉱山を手放そうとはしないと首を振るばかり。
「なぜです? ただの廃鉱山でしょう? もう何十年も採掘されていないと聞いていますよ」
「お申し出はありがたいと存じますわ侯爵様。ですが、あの鉱山は、夫が生前プレゼントしてくれた、いわば形見のようなものですから……
それに、夫が生前言っていたのです。あの鉱山には希望と秘密があると。
夫は冗談でそのようなことを言う人ではございませんでした。ですから、あの鉱山だけは、何があろうとも売ることもお渡しすることもできませんわ。侯爵様」
夫人の紫の瞳が一瞬潤んだ。グレイ伯爵がプロポーズの時に言った言葉を思い出していたからだ。
『ベルベット、この廃鉱山を君にあげよう。一見価値のないものに思えるかもしれないけど、僕にとっては宝物であり、希望とちょっとした面白い秘密があるんだ。それに何よりも……君と出会った場所だからね』
伯爵はそう言って、廃鉱山の所有権を夫人名義に変更していた。当時はただのロマンチックなジェスチャーと思われていたが、今となってはこれがスタンダードグレー家最後の砦となっていた。
「ふん……」
侯爵は不満そうな顔をした。
「では仕方ありませんな。法律に則り、他の資産は差し押さえます。ただし……」
侯爵は夫人に近づき、小声で囁いた。
「もしあなたが私のものになれば、借金など帳消しにしてあげてもいいのですよ」
「失礼ですが、そのようなお話はご遠慮ください」
夫人はきっぱりと断った。
侯爵は舌打ちをして去っていった。
*****
── 前世の記憶想い出しちゃった? 偽?シンデレラに転生しちゃったかもしれない? 女の子の話 ──
父の死のショックが冷めやらぬまま、慌ただしく葬儀を終えたベルベットたちだったが、葬儀が終わった途端、今度はパールが高熱に倒れてしまった。
3日3晩、夢うつつの中で、彼女はある記憶を思い出した。
前世、日本人として生きていた記憶だ。
目が覚めた時、パールは混乱した。
「どうしよう……もしかして私、パールさんをのっとってしまったのでは? 彼女と中身が違う人間だと気付かれたら?
私がパールさんとは別人だってバレたら? シンデレラみたいに嫌われて、家族じゃないって蔑ろにされたりしないかな?」
事実。熱が引いた後も、彼女は前世の日本人の感覚に引きずられ、貴族らしい振る舞いができにくくなってしまった。
転生者として目覚めたパールは、びくびくしながらも、見舞いに来た母親たちと対面した。
「パール? 病気が治ってから、あなた……本当に私の娘なの?」
ベルベット夫人は怪訝な表情を浮かべた。
「ご……ごめんなさい! 実は私、前世の記憶があって……私がパールさんを、転生前の記憶がのっとって消してしまったのかもしれません!
許してもらえるとも思えないし、パールさんと思えないのなら、使用人でも何でもやりますから! ここにおいてもらえませんか?……」
パールは泣きながら謝った。
「そう……そういうこともあるかもしれないわね。でもあなたは間違いなく私の可愛いパールだわ」
「ベルベット夫人……お、怒っていないのですか?」
すると、長女のエボニーも口を挟んだ。
「そういえばパールは幼少時、意味の分からない言葉をよく使ってたわね。『おにぎり』とか『たこ焼き』とか……」
次女のベージュも続く。
「スカートを履くより、ズボンや半ズボンを履きたがったのよね。動きやすいからって言って」
ベルベット夫人は思わず笑った。
「覚えてないの? うちの料理人が使ってる泡だて器や、お菓子の型抜きなどの道具は、あなたが教えてくれたものじゃないの」
「え?」
パールは目を丸くした。
「いわれてみれば……」
「ええそうよ。私のパールに間違いないわ。でもそれも、お転婆過ぎて転んだあとから、急に温和しくなったのよね」
「そうそう」
エボニーが頷く。
「パールのおでこに、大きなこぶができるくらい転んだのよ。その時私が看病したのに覚えてないわけ?」
パールはうつむいた。
「伯爵様に……お、お父様に抱き起されて、ひどく泣いたことだけは思い出したわ……あっ! じゃあその時に1度、前世の記憶が隠れちゃっただけなの?」
「そうみたいね」
ベルベット夫人はパールを優しく抱きしめた。
「だから、もう他人行儀に夫人なんて呼ばないで。いつものように母親だと呼んで欲しいわね」
「で、では私は、わたしのままでいていいの? ベルベット夫人……いえ、お母さま……」
「おかえりなさい、私の可愛いパール」
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