↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/17

終話、◆エピローグ

 ◆終話:~ハッピーエンドの道へ続くための幸せの予感かもしれない?~



 ── シンデレラかと思ったら、実はペテン師にならざるを得なかった一家だが、詐欺を働いたのに、いい意味で裏目の結果になり、なぜかみんな幸せに? ──






 数年ぶりのある日、スタンダードグレー伯爵家の屋敷で家族全員が集まっていた。


 ベルベット子爵夫人の夫となったブレイズ子爵は、隣国の支店に呼ばれて出張中である。


 チーラは、ご褒美のドライフルーツを山ほどもらって、幸せそうに頬張っている。


「私たち」


 ベルベット子爵夫人が紅茶を一口すすりながら言った。


「詐欺師から始まったかもしれないけど、今では立派な職業人よね」


「そう言えば」


 ベージュが口を開いた。


「あの侯爵、どうしてるのかしらね?」


 エボニーが鼻で笑った。


「聞いたところによると、幽閉された小さな領地でレース編みを習い始めたらしいわ。なんでも『ベルベット夫人のようになりたいんだ』とか言ってるそうよ」


 一同、思わず吹き出した。


 パールは窓の外を見つめた。


 かつては


『シンデレラに転生したのかも』


 と怯えたこともあったが、今ではそんな考えはどこへやら。ここには、前世でも今生でも経験したことのない「家族」との幸せだけが確かにある。


「ねえ、お母様」


 パールがふと尋ねた。


「もしあの時、私が前世の記憶を隠し通していたら……どうなっていたと思います?」


 ベルベット夫人は優しい目で娘を見つめた。


「それでも、あなたは私のパールよ。だって」


 夫人はウインクした。


「あなたが教えてくれたあの変な言葉……『おでん』がどんなに美味しいか、私は知ってるもの」


 家族の笑い声が、スタンダードグレー家に響き渡った。


 パールは、家族のために特別なディナーを準備しながら、ふと考えた。


(王子様との関係は……今後どうしていけばいいのかな)


 その時、玄関のベルが鳴った。


 エリナセウス王子が、照れくさそうに花束を持って立っているではないか。


「えっと……先ぶれもなく突然にすみません。今日は公式な訪問じゃなくて……ただ、パールに会いに来ただけなんですが……」


 家族全員が、一斉に王子を見つめると、やがて笑顔になった。


「お入りくださいな、殿下。婚約者なのですから、どうかご遠慮なく」


 ベルベット子爵夫人がドアを大きく開けた。


「ちょうどディナーの準備ができたところです」


「喜んで御呼ばれするよ。あ~それと……パール、あなたに……お願いがありまして」


 エリナセウスは、厨房でディナーの仕上げをしているパールに声を掛ける。


「私に……ですか?」


 パールは目を見開いた。


「ええ。来月、隣国からの賓客を迎える晩餐会があるのですが、そのデザートをあなたに作ってほしいのです。僕の誕生日に作ってもらったあのケーキ……本当に素晴らしかったから」


 パールの顔がぱっと輝いた。


「喜んでお引き受けしますわ、殿下!」


 こんな風に王子からは、週に3回ほどは個人的なデザートのリクエストも含め依頼が来るようになっていた。


「あ~それとね、パール」


 エリナセウス王子がさらに恥ずかし気に告げる。


「もしよかったら……その晩餐会で、最初のダンスは僕と踊ってくれないかな?」


 パールはしばらく考えてから、いたずらっぽく笑った。


「殿下、私はダンスはあまり得意ではありませんよ。でも……」


 彼女はデザートを仕上げながら続けた。


「もしお望みなら、特別なデザートを作りますわ。『シンデレラ・ケーキ』とでも名付けましょうか」


 王子は大笑いした。


「君は相変わらずだね、パール。でも……それも悪くないかな」


 そんな伯爵邸の応接室の1角で。


「チー!」


 チーラが、新しく買ってもらったドライフルーツの山の上で得意げに座っていた。首には小さな金の鈴が下がっている ── 王宮からの難事件を解決した「特別顧問」の褒美として贈られたものだ。





 *****






「パール、ちょっといいかな?」


 食事が終わると、ベルベットはパラエ・キヌスへ仕事のやり残しがあると戻り、エボニーとベージュは婚姻後の邸へ帰った。


 パールと2人で後片付けを手伝いながら、エリナセウスが真剣な面持ちでパールに尋ねた。


「はい、殿下。何でしょうか?」


 王子は深く息を吸い込んだ。


「実は……とうに引退した父上と母后なんだけど、とうとう僕の結婚話を勝手に進めようとしているらしいんだ」


 パールの胸が少し痛んだ。


「それは……おめでとうございます?」


「違う!」


 王子は慌てて言った。


「僕が結婚したいのは本当に君だけなのに! だから……そろそろ正式に伯爵家に婿入りさせてくれないか?」


 パールは目を見開いた。


「で……ですが、私はただの……」


「ただの何?」


 バッグを忘れたことに気付いて戻ってきたエボニーが突然現れた。


「我が家の可愛い末っ娘の三女で、王子の心を射止めた立派な1人の女性じゃない!」


 肩掛けのショールを取りに戻ったベージュも駆けつけた。


「それに、あの第二王子殿下の婚約者選定パーティが開催される以前から、実はお忍びでパン屋に通ってたって話、もうみんなとっくに知ってるわよ」


 チーラを肩に乗せ、チーラの告げ口で取って返して来たベルベット夫人もゆっくりと近づいてきた。


「パール、あなたの気持ちは?」


 パールは王子を見つめ、そして家族の笑顔を見回した。


「……ずっと、詐欺に合わせた人達への返金をしたり慰謝料を払うからとか、他にも奴隷として売られた女性や国民たちを全員見つけ出して故郷に戻すまではとか、何かと理由をつけては誤魔化して後回しにしてきましたが……


 ……これ以上延期する理由は、ありませんよね」


 こうして、スタンダードグレー伯爵家はさらににぎやかになった。


 王子の正式な婚姻による伯爵家への入籍による婿入りは、王国中を驚かせたが、誰もが


『あのタフな伯爵家ならあり得る』


 と納得したのだった。


 こうして、ペテン師から始まったシンデレラ一家の物語は、それぞれが真の才能を発揮し、幸せをつかむ物語へと変わった。






 *****






 そしてある春の日。


 パールはついに、王国で一番心の綺麗な女性として、エリナセウス第二王子の花嫁となった。


 きな臭くなってきた王太子派に余計な詮索をされないためと、第二王子派や貴族派にもう第二王子が王位に立つチャンスはないのだと諦めさせるためにも、入籍と伯爵家への移籍は既に済ませたエリナセウスとパールたちであったが。


 しかし披露宴と式は、さすがに元王族なため、省略やおざなりにはできなかった。


 ただし結婚式では、王家主体というわけでもなく、王家の伝手やコネは多少利用させてはもらったものの、母と姉たちがほとんどを手配してくれた。


 ベルベット夫人デザインのウェディングドレスと、ブレイズ義父デザインのタキシード、エボニーが選んだ宝石、ベージュが手掛けた花嫁のメイク。


「まさか」


 パールは、ウェディングベールの下で微笑んだ。


「泥棒や詐欺から始まった私たちが、こんな幸せになれるなんて」


 ベルベット夫人は、娘の頬に優しくキスをした。


「人生って、そういうものよ、大切なのは最後に幸せになれるかどうかよね」


 式場の隅では、チーラがドライフルーツの山の上で幸せそうに眠っていた。もう盗む必要も、偵察に行く必要もなくなったと安心したのか?


 それとも……ただ、愛する家族たちと平和に暮らせれば、それで充分なのだと言う意思表示なのか?


 こうして、ペテン師シンデレラ一家の物語は、本当の意味でのハッピーエンドを迎えたのだった?





















 *****





















 それから伯爵家はエリナセウスとパールの家となったが、エリナセウスを加えた5人はたまに集まってはディナーを楽しむようになった。


 エボニーは、新しい絵画の下絵を見ながらうなずいた。


「でも、悪徳貴族をこっそり懲らしめることはやめないわよ。この国には、まだまだ侯爵のような人間がいるんだから」


 ベージュは、妹たちの髪を整えながら笑った。


「最近はパールや元殿下に表向きのごたごたや事件解決を任せっきりな部分も確かに多いけど、私達にもまだまだサポートはできるからね。で? 次はどの悪党をやっつける予定なの?」


 チーラがテーブルの上を走り回り、皆の注意を引いた。何かを描いた小さなメモを小さな前足に抱えている。


「ほんと? 『最近新しい鉱脈を発見した男爵家から、不正の証拠を見つけた』???」


 パールが読み上げた。


「チュイ!」


 ベルベット夫人はため息をついた。


「また忙しくなりそうね」


 でも、その表情は幸せそうだ。


「どうやら……次の慈善活動が決まったようだね?」


 元王子も、すっかり彼らの懲らしめ世直し隊?の事業が板についてしまったようだ。


 パールとエリナセウス、ベルベットを始めとする彼ら5人は面白そうににんまりと笑った。


「さあ、世直し隊の出番だね」


 そう、彼らは時々チーラが持ち込む情報をもとに、数々の事件を解決していく世直し隊をするようになっていたのだ。

 

 パールは前世で培った新体操とバレエの経験を活かした柔軟な身体能力とで、エリナセウスはどんな些細なことも見逃さない鋭い観察力で。


 そして、他の3人の元伯爵家の女性たちもそれぞれの能力を相変わらず活かして。


 否。もちろん彼女たちの伴侶も陰日向となり、密かに情報収集や護衛など、愛する妻たちの為にサポートしているのではあるが。


「なあ、俺達、いいチームだと思わない?」


 エリナセウスがパールの肩を抱きよせると、チーラが抗議するように2人の頬の間に飛び乗った。


「チーチー!」


「ああ、ごめんごめん、チーラを入れて5人?……8人と1匹でね」


 パールがドライフルーツを差し出すと、当たり前だとでも言う様に、5人と1匹は大笑いした。


 彼らはもう詐欺師ではない。


 だが、不正を見過ごさない正義感と、家族を守る強さは、これからも変わらず持ち続けることだろう。


 なぜなら、これは単なる復讐劇ではなく、失われた尊厳を取り戻し、本当の幸せを見つける、ちょっと風変わりな家族の再生の物語なのだから。






 END


(;´▽`A゛まさか、王子まで主要メンバーに加わると思わなかったよ。もしや王命による公認だったりしてね? どうしてこうなった? ホントにそれでいいのか?w


とか、紆余曲折あったけど今回の主人公たちは夫人も姉妹たちもどの娘も書いてて楽しかった~♪

けど、ペテンや詐欺を養護するつもりも推奨するつもりもありません。


m(_ _)m 拙い架空話を最期までお読みいただき本当にありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。