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第31話 私を救ったのはグレーなのか、それともピンクなのか?

右手はアンディの手首を掴み、左手で私を抱きしめている。

抱きしめられた時の香りで、顔をみなくても誰だか分かった。


「ライリー……!」


「セイラ、大丈夫なの?なんでこの人に掴まれてたの?」


「あうあう……」


何をいってんだと思ったでしょうが、安心したら言葉が出なかったんですよ……。

ガクガクと震える肩を強く抱きしめてくれる。


『……怖かった!!』


声にならない唇の動きで、ライリーの顔が険しくなる。

唇を噛み締め涙目でアンディの方を見ると、彼も私の顔を見てハッとした顔をした。

そしてライリーが掴んでいた手を振りほどき、私に小さく『ゴメン』と呟くと、足早に屋敷の方へと入っていった。


残された私とライリー、そして何故かハラハラしていたメイド。

私は気が抜けてその場にへたり込んでしまった。


+++


ライリーに手を借りながら庭の端にある東屋に移動し、落ち着くまで座り込んでいた。


「一体アンディ・ワイナードと何があったの?」


ライリーの質問に、ぽつりぽつりと話し始める。


「彼は私の母方の従兄弟なのですが、ちょっと思い込みが激しいタイプのようで……。」


ライリーはノーマンほど私の裏事情に詳しくないから、所々をぼやかしながら説明した。


どうやらアンディとは顔見知り程度には知っていた様子。

ライリーは私の話を黙って聞いてくれた。


「……なるほどねえ。マリア叔母さまのお姉様の願いを叶えたいのかしらね……」


「……それは私にはわからない、です。」


カップを持ちながら深いため息を落とすライリーは私をチラリと見ながらいった。


「でも本当に一目惚れだったらどうするの?」


「どうするって言われても、そこに私の気持ちはどこにもないですよ……」


今度は私が深いため息を落とした。

ガーデンテーブルに頬を枕に顔を置く。


乙女ゲームってヒロインの気持ちって置き去りなんだろうか?

これは私だからなのかな?


ゲームではなくこれは私の現実なのは理解できる。

ここにいる人たちみんな、本当にちゃんと自分で考えて自分の気持ちで行動しているのかな……。


「誰かを好きになるって、こんな簡単じゃだめだと思うんだけどな……」


思わず口に出てしまった言葉に『あっ』と口を塞ぐ。

私の言葉にライリーは人差し指で唇を撫でながら、考え込んだ。


「そうねえ、でも簡単に見えて簡単じゃないのかも。」


「……どういう事ですか?」


口を尖らせライリーを見上げると、にっこりと微笑んで私の鼻を人差し指で突いた。


「一目惚れってあるじゃない?あれって一目で見て『好き』になった訳じゃないのよ。

初めて見た時、第一印象が自分の好みに当てはまったから『好き』って錯覚していると思うのね。

だからこそ『好き』って思っちゃうから気になって目で追うし、姿を見たり会ったりする分『好き』が募るから好意が持続するでしょ。目で追ってる時に『好き』でどれだけ視野がぼやけていても、何か好みに反することをされたり、幻滅することがあったらそこで『好き』って無くなると思うから、簡単じゃないって事。」


意気揚々と説明してもらったが、2個目の好きってあたりからさっぱりな私の答えはこうだ。


「……難しくてよくわからない!」


ライリーは私の答えにクスクスと笑った。


「とにかく、アンディがあなたに執着しているのは、もしかしてワイナード夫人に唆されただけじゃないかもね?って事よ」


「……てことは、強制力じゃなくて、本当の気持ちってこと?接触したの初めてなのに?」


「キョウセイリョク?」


「ああ、自分語なんで気にせずです……。」


危ない、うっかり言ってしまったが……。

私の答えに気にしていない様子のライリーに、ちょっとホッとした。


強制力でもなんでも、とにかく婚約は阻止しなきゃだし、これ以上の接触は個人的にも拒否したい。

本当に怖かった。

私はものじゃないし、収納されて閉じ込められたくもないのだ。


そんな片鱗見ちゃったら、流石のチョロ子も身にしみて分かったのだ。

アンディは危険が危ない。

要注意だ……。


ブツブツ何かを言いながら猛反省中の私をライリーが眺めていたことは気がついていなかった。

どうやら彼も何かを考え込んでいたらしいが、そんな余裕なんか私にはなかったから……。



夕食時にアンディは体調が悪いという事で部屋から出てこなかった。

まぁ流石に私も気まずかったので、ちょっとホッとしたけどさ。

後で部屋に軽食を運んでもらうように手配はしたけど。


食事前にチラッと叔母さんにライリーを紹介したら、露骨にものすんごい嫌な顔をされたのはちょっと笑ってしまったが。

とにかく根掘り葉掘りとライリーに家紋を聞いてきた。


そういや何だっけ?ってついでに聞いてみたら『言いたくないのよ、そのうちね』と言われてしまった。

叔母さんはライリーが平民だと思ったらしく、私に相応しい友達を作れと唾を飛ばしながら言っていた。

要は『平民と付き合うな』ということでしょう。

うふふ。

なので私、言ってやりましたよ。


「平民でも貴族でも、友達は自分で選ぶので、オバサンに心配していただく必要はありませんから!」


ニッコリと微笑みながら言ってやりました。


私の言葉にパクパクと口を動かして震えていた叔母さんは、クルリとママに向き直ったかと思うと、すごい剣幕で捲し立て始める。


わぁ……ママごめんなさい……。


ママは困った顔をしていたけど、直ぐに頬に手を当てニッコリと微笑んだ。


「そもそもね、私のお嫁に行った家の事まで心配しなくていいと思うのよね。

うちの事は旦那様が考えてくださるから大丈夫よ。」


そしてママは続けた。


「アンディも将来、いいお嫁さんが見つかると良いわね。」


といった。


ワナワナ震える叔母さんはママと私を睨みつける。

そして食事もそこそこに捨て台詞を吐いてテーブルを叩き上げた。


「本当の娘でもないくせに!」


この言葉にママは立ち上がってオバサンを睨みつけた。


「いいえ、セイラは私の大事な娘よ。姉さんと言えど娘を侮辱するのは許さないわ。」


ママの迫力に叔母さんが口籠ったが、直ぐにフンッと鼻息荒く、部屋から出ていった。


大きな音を立てて扉が閉まる。

それと同時に、ドサリと座り込むママにライリーと2人で駆け寄ると、ママは微笑んだ。


「……頼りないママでごめんね……。」


「そんな事ない!かっこよかったよ、ママ……」


思わず涙ぐむ私をみて、ママもウルウルと目に涙がたまる。

そして、それをみたライリーも、もらい泣きするのにはちょっと笑ってしまった。


こんなほのぼのしている私たちを他所に、出ていったはずの叔母さんは、扉の前で怒りの炎を燃やしながら手を固く握っていたようだ。


「……絶対許さないわよ。」


小さくそう呟くと、ドカドカと音を立てて自室へと消えていった。


とりあえず投稿しましたが、後で書き足しするやもです。

内容は大幅に変わる事はないと思う今日この頃……。


すごい関係ないんですが、カクヨムで短編あげるかもなので……よかったら……!(宣伝すんな

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