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7.ドラゴンの髭を見よう


 リアがいない今、俺達は基本的に外食だ。

 俺やトロープさん、ナナは当然自炊用の道具なんてない。

 マイもそんなものを持って来ていない。

 厨房で道具を借りて自炊という訳ではないし、明日にもマーシュへのポータルの修理が終わるはずだ。

 無理することはないだろう。


 今日食べているのはパスタっぽいものだ。

 だが、麺の色が白く太い。

 恐らくパスタというより、うどんに近いものだ。

 食べ方はパスタだが。


 俺は葉野菜多めのものだ。

 どうしても旅の途中は野菜が食べられないからな。

 特に洞窟を迷走している時はまず無理だった。


「へー、野菜いっぱい食べるんだ」

「そういうお前は肉食系女子だなー」

「育ち盛りですから」


 ナナは結構ガッツりと肉を食う。

 ぶっちゃけて言うとこの世界の料理はそんなに美味しくは無い。

 リアは確かに料理の腕は非常に良い。

 しかしそれはマズい食材を美味しくする技術があるという意味だ。

 肉の質と言い、野菜の食べやすさと言い、パンの硬さと言い。

 どうしても日本と比べると雲泥の差になるのは仕方ない。

 そもそも食材がそこまで良くないからだ。


 とはいえやっぱり肉は肉。

 焼いて味付けをすれば大体美味い。

 この世界では生な物の流通はさほどない為、肉は基本的に新鮮だ。

 その代わり魚はあんまり食べないけどな。

 港自体がそんなにないからな。


「ユーハさま、何やらナナさんの様子が昨日と違うんですが」

「そうか?」

「はい、何故か太ももを隠すように妙に色気のないズボンをはいてますし」

「ま、まぁそういう気分だったんじゃないかな?」

「機嫌も悪いみたいですし」

「俺にもちょっと分からないけど、女の子は難しい日もあるからな。うん」


 ナナの奴、そりゃ怒ってるよなぁ。

 何せ男から「太もも! 太もも!」とか言われながら縛ってくれと頼まれた訳だしなぁ。

 冷静に考えて絵面とか色々酷い。


 ちなみに今は飲食店の中なのでカー君はいない。

 衛生上の問題だ。

 今一人……いや一羽寂しく部屋で餌の木の実を突いているだろう。


「そういえばユーハさま、今日はどうする予定なんですか?」

「今日か。魔術協会に行って何か情報とか仕事無いかなと」

「仕事ですか? お金あるじゃないですか」

「クエストが稼ぎ口にならないなら、内職でどんなのがあるか知っておきたくてさ」

「あーそうですね」


 内職と言っても街の中であれさえばいい。

 大体こういう事を言うと街の中で敵が攻めてくるフラグだが、まだそういうのは発生しないと思う。思いたい。




 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~




 マイを引き連れて魔術協会へ向かう。

 場所はピートに聞いたから大丈夫だ。

 今歩いている通りを真っ直ぐに向かって、酒場の反対側にある。

 そういやなんだかんだで、魔術協会自体には結構行ってるなぁ。


「ふんふふーん」

「あ、そうだ。マイ、そこの道具屋寄っていいか?」

「はい。何か買うんですか?」

「武器の手入れに使う松脂と、念の為に接着剤が欲しくて」

「ならこっちの店ですね」


 マイに武具の手入れに使う道具等を扱う店を案内された。

 割と近くを歩いていたようで助かった。

 彼女がナフィに初めて訪れた際に一度だけ立ち寄った店らしい。


「へぇ、割と良い品揃えしてるな」

「私もちょっと弓関連のものを見てきますね」

「分かった」


 マイを待って、まとめて会計を済ませる。

 品揃えが良くて割安な店なのはいいが、店主がおじいちゃんだったせいで計算が凄い時間かかった。

 口を出そうとしても「お客様に計算させるわけにはいかない」とか言ってるし。


 その間暇になったので、店内をもう一度見まわす。

 ……ん?


「あれは……いやまさかな」


 立派なケースの中に、紙が入っていた。

 何かが書かれている紙という訳ではない。

 何かを包んでる紙だ。

 そして見覚えがある。

 ケースには凄い立派な字で『神の祝福を受けしドラゴンの髭』と書かれていた。


「あ、店主さん。若干多めに払っていいですから! というかお釣りは結構です!」

「ふぁ?」

「ではこれで!」


 急いで店を後にした。

 マイの手を引っ張ってどんどん距離を開ける。

 あの紙の中身は、間違いなくエレフトラの陰毛だろう。

 いや、正しくはブラウン君のお腹の毛だが。

 お釣り程度じゃ許されないものだが、まぁマーシュの人から馬鹿正直に買う方も買う方だが。




 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~




 この街の魔術協会は、ほんとに一応設置してある程度の小さなものだ。

 立派な建物のあるホーガン支部や、専用の宿舎のあるフマウンとは違う。

 靴屋の二階を借りて事務所を設置しただけのような質素なものだった。

 扉の前に立って、ノックをして中に入る。


「すみませーん」

「はーい?」

「ここが魔術協会の支部で合ってます?」

「そうですよー」


 ちっこいカウンターと机が2つある程度の余りの質素さに聞いてしまった。

 棚に詰められた大量の資料が、ここが魔術協会の支部だということを感じさせる。

 むしろ区役所の出張所って感じだが。


 スタッフは2人の女の子だった。

 1人は暗い茶髪の子で、奥で調べ物をしている。

 もう1人は真っ赤な髪の子で、カウンター担当の元気な雰囲気が出ている。


「俺、ライトベルと一緒にパーティーを組んでいるユーハと申します」

「ほーう!」

「訳あってここに色々用事があって来たのですが……」

「そーですかそーですか。まーまーとりあえずこちらのソファーにお座り下さい」


 俺がソファーに座ると、隣でちょっと緊張してるマイがちょこんと座った。




「……という事なんです」

「ほー、それは大変でしたねー」

「まずはライトベルと連絡が付けばと思うんですが」

「とりあえずその辺りはあの子にお任せですー」


 茶髪の子が何かの作業を猛スピードでこなしている。

 その間こっちの赤い髪の子は俺と会話しているだけだ。

 まぁ、ある意味役割は合ってるんだろうなぁ。


 ……赤い髪の子が俺の方をジロジロと見てる。

 何だろう、聞いてみよう。


「……あの、俺の顔に何かついてます?」

「あぁ、すみませんー。あのユーハさんを間近で見られてちょっと嬉しいんですよー」

「あのユーハさん?」

「はいー。何でもライトベル先生の唇を目立つ場所で奪い、惚れさせて言う事を聞かせつつ他の女もはべらせるとかー」

「ひでぇ……」


 あの噂、ここにも伝わってたのか。

 しかし強い否定も出来ない悲しさ。

 実際今別の子が俺の腕に寄りかかってる訳だし。

 一応やんわりと否定しておくが、ニヤニヤした受付の顔は治らなかった。


「そんなことより、何か内職みたいなの無いですか?」

「うーん、そう言われましてもー」

「……とっておきのがある」


 奥の子がようやく口を開いた。

 おぉ、三点リーダが2つだ。

 これは一人前の呪術師の証だ。

 雰囲気もどことなくライトベルに似ている。


「とっておき?」

「……ユーハさんは魔力が凄いと聞いている。だから、魔力結石の魔力の補充をお願いしたい」

「あぁ、それぐらいなら構わないけど」


 魔力結石は冒険者だけのものではない。

 一番顕著なのは病院だ。

 エレフトラは魔力が多めだが、普通のヒーラーは大人数を回復させ続けようとすると自前の魔力じゃ足りない。

 そこで、病院から支給された魔力結石を使ってそれを補うのだそうだ。

 しかし普通のヒーラー程度の魔力では魔力結石の再補充が大変だ。

 だから魔力の高い者に再補充をお願いするらしい。


「構いませんけど、持ってるだけじゃ時間かかりませんか?」

「……大丈夫、この石を持ってて」

「ん? はい」


 渡されたのは黒曜石のように黒い水晶だった。

 これを左手に持ち、右手に魔力結石を持つと早いらしい。

 ……おぉ、おおぉ!?

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