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5.窮地に陥ろう

「ユーハ、ちょっと」

「ん? 何だ?」

「ピートから話しがあるって」

《余りよろしくない情報が入って来まして》


 ナナに呼ばれたので、団欒の輪を抜ける。

 よろしくない情報かー。こいつらが言うよろしくない情報ってのは、本当によろしくない可能性があるんだよなぁ。

 マイとトロープの耳に会話が届かない位置まで移動する。


「で、何だ? 情報って」

《フマウンとマーシュ、まだ認定されてませんがエルフの里以外にも大侵攻が発生しているのをご存じですか?》

「あぁ、ペガサスだっけ?」

《そうです。その大侵攻の結果が出ました。防衛は一応成功です》


 息を飲む。

 わざわざよろしくない情報という前置きまでしたんだ。被害が全くない訳がない。

 防衛が成功という言葉は喜ぶべきだが、一応というのが凄い気になる。


《街の被害はほとんどと言っていい程ありません。しかしながら、防衛隊の約3分の1が死亡する程の激戦になったそうです》

「そうか……」


 やはり一筋縄では行かなかったか。

 今回フマウンのポータルが壊れていた影響で、出稼ぎの冒険者の多くはペガサスへと向かった。

 ペガサスはフマウン程の防衛設備は無いものの、かつて砦として使われていた場所を元に作られた街の為、防衛に不向きな街という訳でもない。

 街にまで被害が及ばなかったのはそのお陰だろう。


《ユーハさん、ペガサスへ向かわれたお知り合いはいますか?》

「あぁ、リーナとエリックだったと思う」

《そうですか。少々お待ちください》


 ナフィで会った冒険者の男女だ。

 一時期共にクエストをやったりとそれなりに知り合った関係なので、やはり安否がきになる。


《お待たせ致しました。えーっとエリックさんがですね、自らの剣を……》

「自らの剣を……?」


 腹に刺してジャパニーズハラキリとかやめてくれよ?

 追い詰められたとかで。


《整備している時に軽く指を切ったぐらいですね。お2人とも被害が多かった場所じゃなかったようで無事です》

「そうか、なら良かった」


 何故発言をちょっと溜めたんだ。


 どうやら今回被害が多かった理由の1つが、敵を迎撃していたら側面から別働隊が現れたのが原因らしい。

 被害を受けたのはその側面からの攻撃を受けた冒険者がほとんどだった。

 リーナとエリックは反対側にいた為に無事だった。

 逆に言えば、彼らも逆の位置に配備されていたら充分危険だったと言える。




 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~





「ユーハさま、そろそろ銭湯へ行きましょう!」

「あー、今行く……ん?」


 日も傾きかけたので皆で銭湯でも行こうとしたら、ふとついこの前買ったばかりのナイフが目に入った。

 そのナイフは当然ながら投擲用のナイフで、値段としては特別高いものではない。

 とはいえ量産物の中ではそこそこの値段の物を買っている。

 基本的にすぐ壊れるものだからと言って、一番安いものばかりだと実戦で役に立たない可能性がある。

 いくら使い捨てとはいえ命を守るものだ。

 どうせ缶ジュースぐらいの値段のものを缶ジュース2本分ぐらいの値段にするぐらいに変えるぐらいの話だけどな。

 セットだと安くなるし。


 とはいえやはりそこは量産物。

 初期不良が時々ある。

 今回もソレを見つけてしまった。


「あー、何か角度がおかしいと思ったらやっぱりか」

「どうしたんですか?」

「売れ残りだったのか何なのか、刃と持つ所の接着が甘いわ。これは緊急時にスポーンと抜けるかも」

「それは……困りますね」

「ちょっと武器屋に交換して貰うわ」

「明日の朝すぐに行きます?」

「多分この時間ならギリギリ開いてるだろ。先に入っててくれ」

「分かりましたー」


 ナイフを持ったまま銭湯に入ると盗まれる恐れがある。

 面倒だが武器屋へナイフを持って行って、交換して一旦宿に戻ってから銭湯へ行く。




 さっさと行って帰って来る予定が、武器屋の店員がゴネたお陰で少し時間を食ってしまった。

 全く、自分の責任にしたくないからって店長にひた隠しにするのはやめてもらいたい。

 結局俺が銭湯に到着したのは、女性陣が銭湯に到着して15分ぐらい後になってしまった。


 男湯に入り、さっさと体を洗う。

 ここに来る時の注意点だが、紙幣は必ず持ってこない事だ。

 入る時希望者は麻製の袋を渡され、そこにお金を入れて一緒に風呂に入る。

 地元の人は入浴料ピッタリだけ持って来て前払いするのが一般的らしいが、平日と休日で料金が違う為俺らはソレが出来ない。

 そもそもこの街の休日がいつか知らないしな。




 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~





「あー極楽極楽」


 思わずそんな言葉が口から零れる。

 俺は普段余り長風呂をしないタイプだが、今日はゆっくり入りたい気分だ。

 昨日は宿を確保する前だったからゆっくり入る余裕がなかったしな。

 大きな浴槽には、俺1人。

 へへ、ちょっとリッチな気分だな。

 俺は天井を見上げながら、ボーっとしていた。








 突如、全身がドクンと脈打った。

 体が熱い。急に全身の血が駆け巡り始めたような感覚。

 決して普通ではない。

 脳内を何か欲求が駆け巡る。

 理性が外れそうだ。


 頭が何も考えられなくなる一方、冷静な自分もいた。

 何だこれは。

 精神攻撃?

 敵か? 例の精霊魔法使いの?

 いや、こんな精霊魔法無いだろ。


 下半身に違和感を覚える。

 見ると、俺の息子が激しく昂ぶっていた。

 それを見て、自分の抱えている欲求に心当たりを覚えた。


 これは欲情。性欲だ。

 性欲がまるで爆発したかのように体を支配しようとしている。

 何故だ? 何故このタイミングで。

 いや待てよ。たしか俺の性欲解放のタイミングは、ポートが何か言っていたような。

 確かマイが浴槽を出て8分……。


 そうか、エレフトラ邸には浴槽が無い。

 そしてマイはさっき銭湯にゆっくり入っていた。

 俺は彼女より圧倒的に後に入っている。

 つまり、マイが浴槽から出たのは今から8分前だったのか……。


「ポートの……馬鹿野郎……」


 リミッターかけ直してなかったのかよ……!

 息子が荒ぶる。

 脳が性欲に染められ、理性が吹っ飛びそうになる。

 何でもいい。何でもいいからブチ込みたいという欲求が。


 しかし、ここは男湯。

 完全に絵としてマズい事になっている。

 筋骨隆々な戦士や、ハゲたおっさんがいる男湯の中で、息子をギンギンにしながら性欲に耐える俺。

 何でもいいからブチ込みたいという欲求があるが、本当に何でも良い訳がない。

 せめて、せめて女の子にしてほしい。

 そういう趣味はないんだよ俺は。


 足をツネって何とか理性を留める。

 外だ、とりあえず外に出るんだ。

 外には女性がいて余計刺激になるかもしれないが、このままここにいるよりはマシだろう。

 いいか、目はなるべく上か下を見ろ。

 男女問わず人物を極力目に入れるな。

 宿に戻ったら、仕方ないが女性陣になんとかしてもらうしかない。

 トイレで自分でなんとかするのもアリだが、ポートの話だと一度や二度じゃ満足できない可能性もある。


 手ぬぐいを手にとり、息子を隠す。

 覚悟を決め、出ようとしたその時だった。


「パパー、さき入ってていい?」

「ダメだぞ。滑って転んだらどうするんだ」

「ハーイ」


 幼女だ。

 幼女の声がした。

 声からして推定3歳程度。

 そんなものが裸で中に入って来るというのか。


 俺はロリコンでもペドコンでも無いと言いたい。

 しかし、今この性欲の状態で幼女を見たら……。

 俺は襲いかかる可能性が高い……!

 ペドは、ペドだけはダメだ。

 しかし、声からして幼女はもうすぐそこまで迫っている。

 今にも戸を開けようとしている。

 ええい、仕方ない。

 浴槽のフチを掴むと、俺は覚悟を決めた。


「……せいっ!」


 ガン! という音と共に、頭を打ち付けた俺は意識を手放した。

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