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20.作戦会議のような何か


 とにかくこの状況を打破しなければならない。

 今俺達を苦しめているのは精霊魔法が呪術を打ち破っているという事実。

 ならば、これをなんとかするのが正攻法だ。


「ライトベル、ガンガン意見出してくれ」

「……うん」

「ポートも周囲を気にせずガンガン意見出してくれ」

《分っかりました!》


 さて、とりあえず意見を出そう。

 まず俺がガンガン口を出す。

 叩き台だ。

 それが失敗な策だとしても、話しはとりあえず進む。


「精霊魔法を阻害する方法はないのか?」

《阻害ですか?》

「あぁ、たしか銀行とか銭湯とかにあるんだろ?」

「……アレは、設置に時間がかかる」

《そもそもこの街にはあの装置がありませんしね。正確には存在してましたが、五年ぐらい前に壊れちゃいました》

「……そもそも屋外では効果が薄いし」

「うーん、違う方法にするか」


 とすると……そうだ。

 供給元を断てばいいんだ。


「精霊魔法使いを探し出すとかは?」

《ユーハさん、貴方がそれを言っちゃ駄目ですよ》

「へ? 何で?」

「……ユハは気配を消せる。それは相手も同じ」

《このレベルの使い手なら、魔力も気配も姿も完全に消せるでしょうね》

「あー……そうだよな。ポートがなんとか探し出すとかは?」

《無理ですねー》

「そうか……難しいな」


 重力で術者が潰されてるなんて状況なら美味しいが、それならアリ達にかかっている精霊魔法が切れているはずだ。

 本体はどこか遠くの場所にいると考えた方がいい。

 もしかしたらフマウンとの間ぐらいにいて、両方に精霊魔法をかけているのかもしれない。

 だからと言って、その情報だけで捜索するのは不可能だ。

 何より20分でどうこうできる距離じゃない。


「だとすると、やっぱりライトベルが正面から相手を魔力で凌駕するしかないか」

「……それを出来たら苦労はしない」

《ユーハさんみたいに、上げたい時に魔力を上げるなんてそうそう出来ないんですよ》

「だよなー」

「……まぁ、一応私の魔力を上げる方法はある」

「何だ?」

《セクロスですね!》

「……ふふ」

「やめい」


 もう最終手段すぎるなそれは。

 だが、20分しかないのにそんなこと出来ないって。

 いや、色んな意味で俺が急げば間に合うかもしれんが。

 その後俺の命の保証がない気がする。色んな意味で。

 すでに熱烈なキスでリアからかなり濃いオーラが出てるというのに。


 まてよ、1つだけおかしい事がある。

 違和感を感じたというか。

 相手の力量が上だと魔法が効かないなら、一回例外があった。


「なぁ、そういえばナフィでロントが負傷した時なんだけどさ」

「……何?」

「あの時、相手の精霊魔法をお前の呪術が上書きしたってことだよな? あのサイにかけられてたやつ。同一人物が相手なら、アレが説明つかないんだが」

「……あの時、相手は本気を出していなかった。それと、距離が関係するかも」

「距離?」

「……近い相手には、強い効果を発揮する。それは精霊魔法も呪術も一緒。あの時はユハの持っていた魔法陣が近いと判定されて、私の呪術が勝った」

「つまり、距離で勝てばお前にも勝ち目があるんだな?」

「……そう、だけど……」

「だけど?」

《今、ライトベルさんの呪術は雲の魔法陣を媒介にしてるんですよ》

「あっ……」


 そうか、こいつは広範囲に呪術を発動させるには魔法陣が必要なのか。

 しかし、雲から地上までの距離がある。その距離では無理だと。

 まぁ今や雲からの魔術じゃ意味をなさないわけだから、この雲の魔法陣を消しても問題は無いわけだが。


「だったらその距離をなんとか縮めればいいのかなぁ」

「……相手はかなり本気。接近したぐらいじゃ厳しい。密着するぐらいじゃないと……」

「密着か……」


 ライトベルが密着するのはかなり困難だ。

 あの重力の魔法がある以上、こちらから接近は出来ない。

 もしやろうものなら、ライトベルが潰されてしまう。

 そもそもライトベルが前線にでるなんて、そんな体力があるわけがない。


 いや、待てよ。

 密着って本人が密着する必要があるのか?


「なぁ、もしかして魔法陣を敵に貼るのが成功してもオーケーなのか?」

「……大きな問題があるけど一応」

「大きな問題?」

「……300枚の魔法陣を今から書かないといけない。それには紙が……」


 俺とライトベル、ついでに部屋でその話を聞いていた皆の視線が一点に集まった。

 部屋の隅に置かれた、大量の紙だ。


「……あった」

「あったな」

《ありましたね》


 まさかこういう形で伏線を回収するとは。

 しかしまだ問題がある。

 魔法陣を300枚書く。到底20分じゃ間に合わない。


「複写なんて出来る装置あるか?」

《ないですねー》

「……一応他に手段はある。任せて」

「おう、じゃあその方向で」


 それまでにこちらは魔法陣を直接貼り付ける方法を考えないと。

 接近は出来ない。

 アリは重力が囲っている。

 さて、どうすれば……。


「あの、ユーハさん。ちょっとお話を聞いていて思ったのですが」

「ん? トロープさん何でしょう」

「あの重力、対象は接地してる物だけですよ?」

「というと?」

「矢で直接魔法陣を打ち込んじゃえばいいんじゃないですか?」

「……あー」


 そりゃそうだ。

 正確にターゲットを狙えないならともかく、俺たちには精霊魔法がある。

 矢に魔法陣を張り付けて、モンスターに当ててしまえばいい。


 ライトベルはそそくさと魔法陣を書いている。

 まず1枚書きあがると、それをマイに渡した。


「……これを敵に向かって放って」

「分かりました!」


 マイは魔法陣を矢じりに突き刺すと、そのままモンスター目がけて矢を放った。

 矢はモンスターの前から3番目ぐらいの奴に命中。

 そのモンスターは自身にかけられた精霊魔法が、近距離からの呪術によって上書きされた。

 結果、装甲の強化等が弱体化へと変化。

 そのまま重力に潰されてペシャンコになった。


「行ける!」

「やれそうですね!」


 マーシュの街の人からも歓声が上がる。

 行けそう、これは行けそうだ。


「……ユハ、ちょっとこっち来て」

「何だ?」

「腕を出してください」

「……ちょっと痛いだけだから」


 呼ばれたので向かったら、ラーメンどんぶりぐらいの大きさの器が俺の腕の下にセットされた。

 そして、腕にそっとナイフが当てられる。

 何だ、何だコレは。


「……ユハ、ちょっと腕を切らせて」

「何で!?」

「……これから簡易魔法陣を書く。でも、それには血液が必要」

「血液? 何で俺の!?」

「……さっき、私の魔力結石食べたし……」

「え?」

「……血液には、私の魔力が混ざってる人じゃないと駄目。貴方しかいない」

「それにしたって……」

「……大丈夫、この器の中身ぐらいだけでいいから」


 ちょっと待て、この器割とでかいぞ。

 この器をいっぱいにするまで血を抜くのか?

 結構な量だぞこれ。


「てか、お前の血でもいいんじゃないのか?」

「……本来はそう、でも……」

「でも?」

「……痛いのやだし」

「俺だって嫌なんだけどなー」


 しかし、時間がない。

 腹をくくれ。

 だが1つだけ、1つだけその前に布石を打たせてくれ。


「ロント!」

「どうした?」

「トロープさんの目を何かで塞いどけ!」

「分かった!」

「ちょ、これから! これからがいいとこじゃない!」


 二次被害は防ぐ。

 これがこのハーレムを操る必須テクニックだ。


「そういえば、エレフトラはどうした?」

「……大丈夫」

「あぁ、もう誰かが呼びに行ってくれてるのか」

「……うん」


 ライトベルは、そっとナイフを俺の腕に突き刺した。

 そして、こう言った。


「……これから呼びに行く」

「これからじゃ遅いんじゃ……ないかな……」

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