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19.新ハーレム候補のような何か


 力を4倍にする精霊魔法使いがいるとする。

 力を半分にする呪術師がいるとする。

 2人が同じ人物に魔法をかける。

 するとどうなるか。

 簡単に考えると、4倍に半分をかけた2倍が正解だ。


 しかし、この世界の魔法はそうではないらしい。

 力isパワー。

 4倍かけた方が、呪術師の魔法を一方的に打ち消してしまう。

 そこに一切の猶予もない。

 正直、今この状況になって初めて知った。


『ハッ、何やら計算が崩れたようだな』

『しょうがないだろ、こんなイレギュラーじゃ』

『ま、確かにそりゃそうだな』


 マーシュの住民の放つ矢は、俺の精霊魔法の効果によって正確に関節を撃ちぬいてゆく。

 中にはそれによって関節が上手く動かなくなるアリもいたが、大半のアリはそれまでとは違った。

 どんなに矢を浴びても、それを物ともせずに前進する。

 恐らく装甲がまるで別物になったのだろう。

 呪術が効いていた第一陣と、精霊魔法が効いている第二陣では。


「ユーハさん、あれ!」

「なっ、あんの馬鹿ども」


 矢が効かないと察した荒くれの一部が、槍を握って突撃を始めた。

 これはいけない。急いでそいつらだけ精霊魔法を切る。

 冷静になってくれればいいが。


『ハッ、このままじゃどの道ジリ貧だぜ?』

『そう言われても、考える時間も無いんだよ』

『仕方ねーなー。ここはこのカラス様の出番かな』


 そう言うと、颯爽と上空へ羽ばたいて行った。

 そうだ。ここにはもう1人、いや1羽チート持ちがいたんだった。

 トロープさんが、俺に近づいてくる。

 おそらくカー君関連の事だろう。


「ユーハさん、私とカー君に魔力を強化する精霊魔法をかけてください」

「あぁ、大技出すのか?」

「はい、カー君の本領発揮ですよ! 一見私がやってるように見せますけどね!」


 そう言うと、トロープさんはバルコニーの手すりの上によじ登り、手に持った棒を天に掲げた。

 多分これも杖の一種だったのだろうか。

 空を飛ぶカー君は、アリたちがバリケードに足止めを食らうその一瞬の隙を突いて翼を広げ、魔法を発動した。


 その瞬間、地面に大きなクレーターが発生した。

 直径数百メートルはあろう巨大なクレーターだ。

 アリたちは一斉に動きを止め、地面に生えていた草も踏みつぶされたように這いつくばっている。


「これは……風の魔法か?」

「いえ、重力の魔法ってカー君は言ってました」

「なるほど重力か……」

「ユーハさんも、重力という言葉を知ってるんですね」

「え? この世界には無いのか?」

「はい、そういう言葉は私はその時初めて聞きました」


 いや、そうか。万有引力の法則が発見されていないという事なのかな。

 もしくは似たような概念はあっても、一般人には知られてないとかかな。


 カー君が降りて来た。

 発動する時はその中心の上空にいる必要があるらしいが、一度発動すれば戻って来ても大丈夫だそうだ。


「かー!」

「あら、やっぱりそうでしたか」

『駄目だな、全力でやっても精霊魔法が強すぎて潰すまで行かない』

『何だ、敵を一掃してくれるのかと期待したのに』

『アリはそもそも土の中の生物だからな、圧力に耐性があるんだよ。それに、こんな強い精霊魔法はチート持ちとかぐらいしかいねーだろ』


 いや、その通りだ。

 明確にチート持ち、もしくはそれに値するぐらいの実力者の妨害を受けている。

 現状足止めぐらいにしかなっていないが、それで十分と考えるしかない。

 もしこの精霊魔法が無ければ、あのアリたちは潰れて全滅していた事だろう。


『おいユーハ、この魔法は永遠じゃない。せいぜい十五分が限度だ』

『分かった、それまでに対処を考える』


 しかし、どうしたものか。

 あのアリたちには呪術が効かない。

 逆に言えば、アリに呪術が通用すればあるいは……。


 ライトベルを見る。

 じっとしているようだ。考え事か?

 いや、これは精霊魔法の恐怖に当てられてしまってる。


《呪術と精霊魔法が対抗した時、負けた側は相当な精神負担があるようです》

(見りゃ分かる。でもこの勝負はライトベルがなんとかしない限りは……しょうがない!)


 助手がライトベルをなんとか説得しようとしている。

 だが、この精神状態では耳にも届かないだろう。


「リア、ちょっと洗濯バサミ貸してくれ」

「へ? あ、はいどうぞ!」

《よく持ってますね……》

(こいつはいつでも必要な道具は持ち歩いてるタイプなんだよ)


 リアから1つ洗濯バサミを受け取り、地面にへたり込むライトベルをそのまま地面に押し倒す。

 ライトベルの鼻に洗濯バサミを装着し、肩をガッツりと掴んでキスをした。

 軽いキスなんかではない。舌をガッツりと突っ込む方だ。


 ライトベルが肩をタップしてきたのは、30秒程経過した頃だった。

 何だ、肺活量が無いな。


「……何するの」

「正気に戻ったか?」

「……うん」


 とにかく、俺達はこの状況を打開しなければならない。

 その為には、後でリアが暗黒面に落ちようがマイが発情しようが、気にしている場合ではない。





 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~






 とりあえず、俺が真っ先に思いついた手はインスタントキスだ。

 複数の女性にキスをして、能力を一気に上げて何か打開するというものだ。

 20人ぐらいにキスしてしまえば、どんな状況でも打開できる。


《ワタクシはちょっとそれはおススメしませんね》

(何でだ?)

《ユーハさんは、昨日今日とかなり目立ちました。街中の女性がユーハさんの名前を知ってます。おそらくインスタントキスが成立する方がいません》


 ぐぬぬ……。

 そうすると、知った仲でキスをしてもいい人物になる。

 心当たりは何人かいる。

 まずはエレフトラだ。

 彼女とはまだキスをしていない。

 しかし、パーティーに抜ける決意をしている彼女とキスするのは如何なものなのか。


 次に助手のレナ。

 この状況なら仕方ないと言えるかもしれない。

 だが、どうもこいつもう1人の助手のメルビとデキてるっぽいんだよなぁ。

 正直気が進まない。


《もう1人候補がいますね》

(誰だ?)

《ユリンちゃんですよ。どうせ重病なんだし、キスしてついでに治しちゃいましょうよ》


 いや、それはそうなのだ。

 あの子の症状は恐らく俺とキスをすれば治す事は出来る。

 ちょっとした事情でキスをする事は躊躇っているのだが、この状況なら仕方ないといえば仕方ない。

 だが、大きな問題がある。


(往復20分はかかるだろ、あの家まで)

《それは……ですねー》


 客車を飛ばせばなんとか間に合うかもしれないが、それで1人分とは割に合わない。

 とすると候補は1人な訳だが……。


「おい、カラス! お前の相方さん……」

「がぁー! がぁー!」

「駄目だよなぁ」


 トロープさんとキスするのが一番早い。

 彼女は多分キスぐらいは同意してくれるだろう。

 だが、その相方のカラスがそれに対して怒るのだ。

 もー贅沢なんだからー。


 ……いや、もう1人いるな。

 女性で、キスしてなくて、俺の事を好きになっても何も問題ないやつ。





『やめろ! やめろぉ!』

『うるせぇ、お前しかいねーだろ! トロープさんとキスしてもいいのかよ!』

『それは嫌だぁ!』

『じゃあお前で妥協するしかねーだろ!』

『大体カラスじゃハーレムのチートなんか使える訳ねーだろ!』

『うるっせぇ! 魂は人間なんだし、お前メスなんだし! 駄目元でやってみるだけタダだろ! 減るもんじゃねぇし!』

『減る! 大事な何かが減る!』


 傍から見ると男がカラスと取っ組み合いの喧嘩をしているようにしか見えない。

 いや、大体合ってる。

 俺はカー君の首根っこを掴むと、無理矢理そのくちばしにキスをした。


『ぎゃー!』

『硬ってぇ。ポート、チートはどうだ?』

《うーん駄目ですね、起動しません》

「チッ使えねぇ」

「かぁー……」


 俺は強姦された後みたいなカー君を適当にベッドの上に放り投げた。

 くそ、インスタントキスは期待しない方が良さそうだ。

 別の作戦を考えないといけないな。

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