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2.妖精乃里

 うー、暑い。

 森の中だから涼しいかと思ったが、妙に湿気がある。

 どうやらモンスターが襲ってくる気配もないし、ライトベルとリアに任せて一寝入りしようかなぁ。


「ユーハさん、膝枕しましょうか?」

「うーん、暑いからいいや……」

「そうですか」


 ちょっとシュンとしているリア。

 申し訳ないが、暑さには勝てなかったよ……。


「今度デートしてやるからな、ごめんな」

「いえ、気にしないでください!」


 露骨に嬉しそうだな。

 なんやかんやで、こういうの要求するのがリアだけで助かる。

 いや、ハーレムとしてそれはどうなんだろうな。


《一応ポジションが近いという意味では、ライトベルさんが愛人ポジションですけどね》

(まぁ、そうだけどあいつは……)

「……体さえあれば」

「ん? ライトベルさん何か言いました?」

「……いや、こっちの話」


 いや、簡単に体なんて許さないけどな。

 許したら命が危ない。

 あれ、俺って誰に手を出しても命が危ない気がする。




 横になって目を閉じる。

 ……何か、耳元がザワザワする。

 懐かしい感じだな。


(これ、精霊か?)

《そういえば久しぶりですね》

(最近もっぱら忙しかったしな)

《モンスターが多い場所では、中々出現しませんしね》


 へぇ、そうなってたのか。

 以前と違って精霊魔法もかなり上達してるからな。

 声は愚か、姿も見えるはず!


《じゃあ早速見てみましょう!》

(嫌だ)

《えー》

(どうせ大した事やってないだろ……)

《だからって耳栓する事ないじゃないですか! 聞くだけでいいですから!》

(……ったく、しょうがねぇなぁ)


 嫌々ながら、森の精霊たちに耳を立てる。

 ザワザワと耳に届いていた声が、クリーンな声へと変化してゆく……。




『どうしたんですか! 目を覚ましてください!』

『目を覚ます? いいえ、私は気づいたのよ。これこそが力と!』

『精霊B!』

『精霊Bではない。女王様とお呼び! そして、私の力の前に跪くのよ!』

『B……』





(……ロクな事してないとは思ってたが、SMプレイでもしてるのか?)

《きっと、ヤンデレの1つの形なんですよ》

(リアが女王様とお呼びとか言い出したら……)

《あれ? アリじゃないですか?》

(そっちの趣味は、俺にはねぇなぁ)


 耳栓をそっと耳に押し込み、静かに目を瞑った。




 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~




 頬っぺたにぬるっとした感触を感じる。

 ザラっとした感覚だ。生暖かい風が耳を襲う。


「……ほう」

「私もやってみたい……」


 女子たちの声が少し離れたところから聞こえる。

 ということは、これはスランか。

 スランが俺の顔をペロペロしてるのか。

 正直結構生臭い。

 人間の物とは違う、ざらざらとした舌の感覚が俺の顔面を襲う。


「スラン、もう、起きたから。大丈夫だから」

「ユー……ユー……」

「分かった、分かったから」

「ユーハさん、これで顔を」

「あぁ、ありがとう」


 目覚めとしては、最悪の目覚めなのだろうか。

 一種のプレイだよな、これ。

 リアがちょっと目の色変わっている。


「で、何で俺起こされたんだ?」

「……もうすぐ、妖精の里につく」

「あぁ、結構寝てたんだな」

「ユーハさん、最近お疲れでしたからねー」


 そうだったのかな。

 全然意識してなかった。結構まったりする時間を作ってた気はするが。


「……あっちに見えるのがエルフの里。の、櫓」

「あの高いのか」


 櫓って確か、高いとこから敵の襲来を察知する奴だよな。

 じゃあ上に見張りのエルフがいたりするんだろうか。

 俺ら警戒されてたりしてな。


 エルフの里かぁ。

 きっと、秘密主義で排他主義な感じなんだろうなぁ。

 中に入れなかったらどうしよう。


《何か嬉しそうですね》

(だってエルフだぜ! エルフ! きっと、綺麗なねーちゃんがいるんだぜ!)

《まぁ、確かにエルフの仲間とかいいですよね》

(だろ?)

《かの偉大なハーレムの先人も、最後の仲間はエルフらしいですしね》


 偉大なハーレムの先人というのが何の事かさっぱり分からないが、エルフは美人が多いイメージだ。

 どうしても期待するのは仕方ないだろう。

 ファンタジーっぽい感じ、嫌いじゃないぜ!





 やがて、俺達の目の前にエルフの里の入口が見えた。

 うん、見えた。

 見えてしまった。


「何だ……コレ……」

「……現実は、こんなもん」


 横断幕に、大々的に書かれていた。


【 よ う こ そ ! エ ル フ の 里 へ ! 】


「お、俺のエルフのイメージが……」

「……エルフは最近、観光に力を入れている」

「道路、凄い整備されてましたもんねー」




 町の中では、いたる所にお店が立っていた。

 エルフ饅頭とか売ってるぞ。洋風の世界観はどうしたんだよおい。


《ユーハさん! ユーハさん!》

(何だよ……)

《いやぁ、ユーハさんの夢を壊してあげようと思いまして!》

(やめてくれよ……)

《あっちのエルフ族の女性いるじゃないですか!》

(あぁ……)

《あの人、生まれつき髪が茶髪でした! でも、エルフっぽくないという事で緑色に染髪してますよ!》


 眩暈がした。

 うわぁ、やだよう。

 エルフは生まれつき、エルフみたいな感じをしてるんだ。

 そうだ、何かの間違いに違いない。


《あっちの人なんて傑作ですよ! ヅラ被ってますよヅラ!》

(や、やめろぉ!)


 あぁ、よく見たらあそこに歩いてるのなんて、完全に人間だ。

 冷静に考えれば、ここも町なんだからワープするゲートがあるんだよな。

 木刀なんて買ってるよ……。エルフと木刀何の関係があるんだよ……。





 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~





 森の中の里だからか、土地はいくらでも足せるらしい。

 宿も広々としたものだった。

 すげーよ。このタオル代わりの布、持ち帰っていいらしいぜ。

 煉瓦のお風呂場といい、結構な額投資されてるぞ。この宿。


「はぁー……」

「ユーハさん、元気出してくださいよ! サービスのピクルス美味しいですよ!」

「おう……一個くれ……」


 いやぁ、いい酸味だ。

 夏バテ気味なこの体に染み入るな。


 エルフの里は本当にいいところだ。旅がしやすいという点で。

 道具屋も結構遅い時間までやってるみたいだし。

 俺たちとしてはありがたい。ありがたいんだけどさぁ……。

 ええい、落ち込んでも仕方ない。俺達はここに観光に来たんじゃないんだ。


「ライトベル、犯人は分かったのか?」

「……個人にまでは特定は無理。でも、犯人の魔力を割り出す事は成功した」

「魔力?」

「……私の近くに犯人がいれば、感知できる」

「なるほど。となると、ライトベルを連れて町中を練り歩けばいいのか?」

「……違う。あんな使い手、早々いない」

「ってことは?」

「……エルフの里の長。最高の精霊魔法の使い手」


 ……そんな奴が、たかだかサイを暴走させる為だけに精霊魔法を使うのか?

 いや、そういう相手だからこそ解析に時間がかかったのかもしれないのか。


「じゃあ、お前をそのエルフの長に会わせればいいのか?」

「……そう。それと、この里の実力者を出来れば調べておきたい」

「なるほど、教えて貰うか」


 とりあえずこの里での目標は1つ定まったか。

 もう1つは、アレだろうなぁ。


《やっぱり、エルフっ娘をハーレムに入れないとダメですね!》

(エルフっ娘なぁ……凄い期待してたけど、この里の感じだからなぁ)


 結局エセエルフとかを掴まされるんじゃないだろうか。

 実は耳が尖ってるだけの、ただの髪を緑に染めた人間でしたーじゃ済まされない。


「あ、ユーハさん。ご飯が来たみたいですよ」

「おぉ、運んでくれるのか」

「……美味しそう」


 ちなみに夕飯は辛めの鍋だった。

 この森のモンスターの肉だろうか。脂身がたっぷりで美味しかった。

 夏バテにも配慮した、いい料理だ。


 だが、何というかエルフっぽくはなかった。

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