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第33話 鍛錬の日——汗と水浴びと、予期せぬ遭遇

 朝市のあとは訓練。ギルド支部の裏庭にある訓練場を借り、午前中を鍛錬に費やす。


 この日は特に暑かった。初夏のエルデは日差しが強く、訓練場の砂地が熱を反射して体感温度が上がる。


-----


 ヴァルがオーリエルの連続斬りを百本こなしたあと、訓練着が汗で完全に肌に張りついていた。


 白い訓練着が濡れて半透明になり、鍛え上げた腹筋のラインと、その上に鎮座する豊かな胸の輪郭が、布越しに克明に浮き上がっている。下着の線すら見える。今朝買った新しい下着の肩紐が、鎖骨の下でわずかに浮いている。


「ヴァル。着替えた方がいい」


「なぜだ」


「透けてる」


 ヴァルが自分の胸元を見下ろした。三秒後に状況を理解し、腕で胸を隠した。


「なぜもっと早く言わない!」


「今気づいた」


「嘘をつけ。三本目の素振りから気づいていただろう」


「……五本目からだ」


「大差ないだろう!」


-----


 ニーナの影渡り訓練は順調に進んでいたが、暑さで集中が切れかけていた。


「暑い。——訓練場の横に川があったよな」


「ある。灌漑用の小川だが、水浴びはできる」


「昼休憩で水浴びしよう。全員で」


「全員で?」


「暑いんだよ。——別に一緒に入れとは言ってない。交代で」


-----


 交代制の水浴び。男女で分ける——が、順番を決める前にティアが川に飛び込んだ。


「つめたーい! 気持ちいい!」


 訓練着のまま飛び込んだティアの薄い布が水に濡れ、小柄な身体のラインが完全に露出していた。


「ティア、訓練着が——」


「えっ——きゃっ」


 ティアが水中にしゃがみ込む。だが浅い川だ。肩から上が出ている。濡れた翡翠色の髪が肌に張りつき、白い肩と鎖骨が水面の上に光っている。


「ゼクさん、見ないでください!」


「見てない」


「見てます! 目が合いました!」


 俺は素早く背を向けた。


 背後でヴァルの声。「ティア、こっちに来い。木陰で着替えさせる。——ゼク、絶対にこっちを見るな」


「了解」


 ニーナが俺の横に来た。


「あんた、さっき見ただろ」


「見てない」


「嘘つけ。琥珀の目が二ミリ広がってた。獣人の目は瞳孔の変化を見逃さない」


「……生物学に抗えない」


「開き直るな」


-----


 水浴び騒動が落ち着いた後、リーリアが全員に回復魔法をかけてくれた。


「暑さで消耗した体力を回復しますね。——ゼクくん、目を閉じて。頭に手を当てます」


 リーリアの柔らかい手が俺の額に触れた。温かい光が流れ込む。


 だが——リーリアが前かがみになったことで、ローブの胸元が開き、至近距離で豊かな谷間が視界に入った。目を閉じていたはずが、回復魔法の光がまぶたを透過して、かえって見えてしまった。


「リーリア」


「はい?」


「回復魔法で視力が上がった気がする」


「え、そんな効果はないはずですが——」


「見えなくていいものが見えている」


「……あっ」


 リーリアが慌てて胸元を押さえた。


 この日の訓練は、暑さとは別の理由で消耗が激しかった。

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