表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢の母は娘をモブにして乙女ゲームの余波を生きる  作者: 二木公子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
55/59

お茶会の後5

 何があったのでございましょう。


「マークはご実家にでも帰っているのですか?」


 静かな空間にわたくしは再度問いかけます。

 誰も答えません。


 マークは夫の従僕ですから、わたくしと顔を合わせない日ももちろんあります。

 しかし、こちらに帰ってから姿をみておりません。なんの理由もなく、五日も姿を見なかったことはないのでございます。


 部屋には静寂が続きます。


 こうも言いにくいことですと、どんなことが起こったのでございましょうか。

 …駆け落ち、窃盗、わが家の情報をどこかに流していた、などでしょうか。

 どちらもマークがやるとは思えませんが、実際のところはわかりません。


 しばらくの沈黙のあと、やっと夫が答えました。


「…そうだ。」


 夫の答えに、わたくしはつい、ため息をもらしてしまいました。


 夫の言ったことは嘘でございます。こんなにわかりやすい嘘がありましょうか。

 執事もあきれた顔をしております。


「教えてくださらない理由を聞いてもよろしゅうございますか?」


「…。」


 また黙ってしまわれました。

 先ほどから夫は、目線の先をグラスに据えて動かしません。


 わたくしは、答えない夫の代わりに使用人たちに矛先を向けることにいたしました。

 わたくしの視線は夫に据えて、わたくしは後方にいる侍女に問います。


「ヴァネッサ。話してくださる?」


「旦那様、ピーターさん…。」


 侍女は答えではなく、助けを求めました。いつもより大分細い声を、わたくしを通り越し、夫と執事に向けております。

 おそらくヴァネッサの眉尻は最大限に下がっていることでございましょう。


 侍女の問に、二人は答えません。

 今度はわたくしが直接、執事に尋ねます。


「ピーター。何がありましたか?」


「旦那様。」


 執事も夫に助けを求めました。


 これは夫が口止めをしてるということです。

 侍女の動きから、夫の命令を執事が屋敷の使用人たちに伝えたというところでしょう。


 使用人たちの助けにも、夫はだんまりを貫いております。


 しばらく誰も口を聞かず、三人でグラスを見つめた夫を見つめておりました。



 この沈黙を破ったのは執事でございました。


「旦那様、ご勘弁を。」


 執事の言葉に夫は言葉を返さず、少しの身じろぎをするだけでございます。


 執事はそんな夫に小さなため息で答えると、つとわたくし

を見ます。

 そして、衝撃的な隠し事を共有してくれました。


「毒でございます、奥様。」


「毒? 、でございますか?」


 予想していなかった言葉に、思わず聞き返します。


「はい、毒でございます。毒に当たりました。」


 衝撃的な内容に困惑して夫をみても目が合いません。


 いったいグラスの何をそんなに見たいのでしょうか?


 毒に当たるということは、自分で飲んだわけではなく、たまたま飲んでしまった、ということでしょうか?

 なぜ、そんなことが起こったのでございましょうか?


 いえ、そんなことよりも先に確かめるべきことがございます。


「マークは、マークは?生きているのですか?…今どこに?」


「部屋におります。」


 執事が教えてくれました。

 マークの状態を確認しなければなりません。


 わたくしはすぐに立ち上がり、廊下に出ようと一歩踏み出します。


「生きてはいるよ。明日にしなさい。」


 急くわたくしを夫が止めました。


 夫が侍女に目配せし、わたくしは後にいた彼女によって椅子に座らされました。


「マークの容体は?生きてはいるというのはどういうことですか?」


 わたくしはやっと目が合った夫を逃すまいと、早口で問います。


「落ち着きなさい。手足が一部しびれて動かないようだ。看病する者はつけている。医者が言うところには、今は見守るしかない、ということだそうだよ。」


 そしてそこまで言って、執事に目配せします。


 執事は夫に向かって再びため息をついてからわたくしに説明してくれました。


「奥様、落ち着いてきいてください。いまひとつ、深く座ってください。」


 執事はゆっくりとした口調でわたくしを誘導します。 

 わたくしは、とりあえず座って聞く姿勢を取りました。本当に落ち着くことはできませんが、ふりならばできます。


 ですが、一つ息を吐けば、確かに、今すぐに向かう必要がないことがわかりました。

 マークが一刻を争うような容体でないのであれば、今から行っても皆に苦労をかけるだけです。


お読みいただきありがとうございました。

誤字報告感謝いたします。


◆お茶会の後の晩餐での会話その5

アーサー:…わかった。もう一度調べてみるよ。叔父上、アオトリ商会の顧客名簿を融通してもらっても?

伯爵:婿殿に言っておこう。

イザベラ:[ため息]まぁ、派閥を広げるための情報にもなるわね。

セシリア:先日、我が家から流した装飾品の買い手の名簿も使いましょう。

アーサー:そんなのあるのかい?

セシリア:ええ。お母様が楽しそうでございました。

イザベラ:マーガレットお姉様、さすがね。老いてなおだわ。

セシリア:それからアルフレッド、前にお願いすると言ってくださった学園内での情報はどうなりました?

アルフレッド:[びくつく]ま、まだ来てないんで、できたらこちらに届けるように伝えます。

セシリア:お願いします。

イザベラ:あら、アルフレッドが役に立つなんて。どういう風の吹き回しかしら!?

伯爵:めずらしいな。

アルフレッド:…。

イザベラ:冗談よ。ふてくされないで。実はしれっと動くのは得意だものね、あなたは。

アルフレッド:…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ