第4話
いよいよ王都を出発したユーリ一行は王国東部にある旧王都キアラに向かうため街道を進んでいた。
まず、最初の目的地は街道にある宿場町であるコクールである。
「お嬢さん方、もう少しでコクールの町ですよ」
「コクールですか。どのような町なのですか」
「そうですねえ。コクールは王都に入る上では絶対に通らなければいけない街ですからねえ。人やモノの通り道としてにぎわっていますよ」
「そうですか。楽しみですね、エリス」
「お嬢さま、あまりはしゃいで羽目を外さないでくださいね」
「分かっていますよ」
ユーリはお忍びで訪れる初めての町への期待に胸を膨らませながら、コクールへの道を急ぐ。
コクールの町の入り口には人の列ができていた。
「アルさん、あの人だかりは何なのですか?」
「ああ、あれですか。町に入る人を調べているのですよ」
「町に入る人をですか?」
「ええ、犯罪者などが町に入らないように調べているんですよ」
町は柵に囲まれており、街道に関所が設けられていた。
関所には警備兵が数人と、マフィアの下っ端のようなゴロツキが一緒に立っていた。
「おいアル、なんで関所にあんな柄の悪そうな奴らがいるんだ?」
「お嬢さん方は、王都を出たことがないからわからないかもしれないですが、地方ではよくあることですよ」
「それと、ここでの対応は私に任せてくださいな」
「なに、どういうこ」
「分かりました。」
くわしく理由を聞こうとするエリスを遮り、ユーリが返事をする。
「よろしいのですか」
「はい、旅慣れていない私たちより、アルさんに任せた方がうまくいくでしょう」
「ええ、任せてくださいお嬢さん方」
そして順番は進み遂にユーリ一行の番となる。
警備兵のなかで一番階級の高いであろうものが一行をよびつけ、町に入る理由などを聞いてくる。
「お前たちはこの町に何の用があってきた?」
「はい、こちらのお嬢さん方がキアラに商会の用事で向かいます。私はその護衛の冒険者です。こちらにギルドからの依頼書もあります」
アルは依頼書を渡すために近くにいるチンピラに渡す。勿論そのときに賄賂も添えてである。
チンピラは賄賂の存在に気付くと、ニヤリと笑い、依頼書と賄賂を隊長に手渡す。
「旦那、特におかしいところはないようですぜ」
「ふむ、確かにギルドが発行する依頼書だ。よろしい通っていいぞ」
アルが渡した賄賂が利いたのか関所を通る許可がおりる。
3人は関所を通り町の中へと進んでいく。
(ふむ、なんとか町の中に入ることはできたな。まあ、賄賂についてお嬢さんはよく思っていないようだが…)
ユーリは、アルが関所の警備兵に賄賂を渡したことが気に入らなかったのかほおを膨らませてアルを睨んでいる。
(やれやれ、これは納得させるのに手間がかかりそうだなあ)
アルは、世間知らずなお嬢さまを納得させることの難しさにため息を吐いた。