第一話 悪役令嬢、気弱令嬢になる
「この場で、ソフィ男爵令嬢との婚約を破棄する!!」
やっと終わった。王子に勝手に惚れられたあの日からヒロインを目立たせるためだけの18年間に終わりを告げる日が来た。堂々とヒロインの腰に手をまわし宣言する第一王子、最後に落ち着いて顔を見たのはいつだったか。
今日、私の役目は終わりこの舞台に幕を閉じる___________はずだった。
『,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,嘘』
伸ばした手は空を切り地面に落ちていくのを感じる。
お願い神様、来世があるならどうか幸せな人生を送らせて。
_________「おい出来損ない!聞いてんのか!!」
誰だこいつは。
『!?』
ふと後ろの鏡に映った”私らしき人”は”私”ではなかった。少なくとも私が金髪になった覚えはないし目じりはもっと吊り上がっていた気がする。
「おい!聞いてんのかって言ってんだよ!」
先ほどからかなり威圧的な目の前の男性を見る。見覚えもなければ怒られる覚えもない、そもそも私は死んだのではなかったのか。
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▶叩く
▶水をかける
▶殴る
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目の前に突然現れたそのパネルはどうやら彼には見えないようだった。それなりに物騒なコマンドだが私になる前のこの子はそんなに物騒な子だったのだろうか。
とはいえ、”私”になったこの子と彼は初対面だ。彼の服は高そうだし水をかけるのは難しい、叩くと殴るなら叩くのほうがいいだろう。
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▶叩く
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突如私の体外資と反して動いた。________バシッ
「は?」
目の前の彼があっけにとられると同時にそれまで気づかなかったが後ろにいた使用人たちがざわめきだした。
「…うそ…ベルお嬢様がライ様を叩いた............」
「お嬢様............急にどうかしてるわ」
「兄を叩くなんて............」
兄妹だったのか。ずいぶん物騒な兄妹なんだな。数人が目の前の彼に駆け寄るが彼は唖然としたままあほ面で私を見つめている。
使用人の中で一番偉そうな中年の女性がこちらを向いた。
「お嬢様、これは看過できない事です。理由を説明していただけますか。」
『............えっと............テガスベリマシタワ』
おほほほほほほと我ながら不自然な笑みで部屋がどちらかもわからずにその場を離れた。コマンドの中では一番ましなものを選んだがどうやら元の彼女とは違う不自然な行動だったようだ。




