16 布津の神移し#6
うつむいたイズシのおっちゃんか口を開いた。
「ヤエ、後を向け。」
俺「どういうことや!」
イズシ「ええから、はよせい。助けるんやろ。」
霞む視界の中、微かにおっちゃんと目があった。
確かな覚悟の目だ。
背を向けて待つと、手のぬくもりが分かるが触っていない位置におっちゃんが掌をあてた。
イズシ「もう何も言わんぞ。」
俺「分かってる。」
俺への心配、期待、信頼が込められているのは掌から伝わっている。
イズシ「サソの儀・・・サ!」
「ソ!」
「キ!」
まだ始まったばかりだから何ら変化見られない。
やはりチカラは解放されていたのかと疑う。
「ユ!」
その瞬間、いきなり症状が出た。
全身から一瞬で大量の汗が出始めている。
體の中から熱い。
さっきまで、乾いていた顎を大量の汗が流れ落ちる。
汗が目に入る。急な體の異常に俺が対処できない。
「ケ!」
イズシのおっちゃんが言った瞬間、意識が遠のいた。
また昏睡してしまうのか?
走馬灯のように思い出がフラッシュバックしてくる。
しかし・・・よく見るとこれは俺の思い出じゃない。
ここよりも更に昔の美和か?
縄文時代?
おっちゃん似た王様がいる。
弟っぽいなぁ・・・
また争いをしている・・・
すげぇな・・・チカラがやばい・・・
そもそもチカラって何だ?
ミワキ様に似ている?
いや、よっぽど精悍だなぁ・・・
モモ様そっくりな・・・・
俺は何時代の誰に転生したのだ?
違う!そんな事はどうでも良い!!
「ヤエ!!ヤエ!!」
「ヤエ様!!」
いきなり鮮明に目の前が見えた。
曇りのない、ノイズもない超精密な一眼レフカメラのような視界だ。
視界が透き通る。
自分の掌を見る・・・・霊力が溢れ出ている。
尋常じゃない勢いで霊力が中から溢れ出す。
キマッた
これは確実にゾーン(全知全能)と言われる状態だ。
事前に修練していたものできそうな気がする。
結果も出していないのに確信がある。
「おっちゃん・・・いけそうや・・・」
イズシ 「ヤエ・・・・」
ノロヰは?
ヒコの言う通り30体程度か・・・・
俺 「行ってくるわ。」
ヒコ 「ヤエ様、手槍はもうありません。代わりを探してきましょうか?」
確かに手槍は使い切っている。
俺 「大丈夫や。」
右の掌を開き、自分に向けた。
掌を見つめる。
【カムナのチカ】
手槍をイメージする。
【ウン!】
3Dプリンティングのように複数の光源が俺のイメージする手槍を高速で具現化していく。
一度も成功する事の出来なかった技を簡単に実現することができた。やはり俺のチカラは解放されたのだ。
ヒコ 「こっ・・・・これは?・・・・」
イズシ 「古より家に受け継がれたチカラ・・・が、長くそれを使えた者おらんと聞いておる。ヤエは父を超えおった。」
ヒコ 「何のチカラなんです?手槍がヤエ様の掌で生まれましたよ・・・・」
イズシ 「思うた物を作れるチカラ・・・まさしく神の御業と言える。ヒルメ様の裔 たるミマキ様とも並ぶことのできる美和の極みチカラ。もうヤエは人の域を超えた者となったと言える・・・・」
俺の前にいる大量のノロヰの1体に狙いを絞る。
左手で狙いを定め、腰を落とし、右手を引いた・・・
【ケン!!】
発射された手槍は速度が圧倒的に速くなっている。
「パァァァン!!」
ソニックブーム・・・
手槍が音速の領域、時速1,236km を超えた証。
「バァババシュュ ュ ュ ュ ュ ュ ーーーーーー!!」
壮絶な衝突音と共にターゲットのノロヰとその後ろのノロヰまで打ち抜いた。
殺傷性能も格段に上がっている。
一瞬だ・・・一瞬で終わらせてやる。
ヒコ 「何なんですか?このチカラは・・・人のチカラやない・・・ヤエ様・・・・」
イズシ 「現人神じゃ。ヤエは神の力を手に入れたんや。」
【ウン!】
一気に手槍を10本、創出させた。
左手で10体分のターゲットをロックする。
【タケン!!】
「パンッ!パパパパッァァァーーン!!」
射出された手槍が連続で音速の領域に入っていく。
「バシュ !!バババ ァババシュュ ュ ュ バシュュ ュ ーーーーーー!!」
ターゲット全てを殲滅した上で尚且つ、後にいたノロヰも大量に殲滅することができた。覚醒した俺は圧倒的な霊力量を持つに至っている。後から後から霊力が湧きだしてくる。
ノロヰはもう10体ちょいという所か・・・・
すぐに終わらせてやる。
ヒコ「人の域を超えたチカラ・・・」
目の前にいる俺を恐怖が滲んだ目で見つめる。
【カムナのチカ】
これで終了だ。
【レン!!】
????!!!
ノロヰ達の中心に球体が現れた。
俺は何も発動していない。
その球体は大きく膨れ上がりノロヰ達を呑み込んでいった。
このチカラは・・・
ミワキ「待たせた!ヤエ!皆のもの!ワシが現れた!」
ちょっと日本語がおかしい・・・
またしても最後の良いところを掻っさらうこの感じ・・・
「うぉおおおおぉぉーーーーー!!!」
曳手、鎮手から莫大な量の歓声が鳴る。
あー無理ーー!この子、無理ーー!
少年漫画の王道パターンを地で行ってる〜〜。
全部持って行かれてる〜〜無理ーー。
この物語的には最高ーー!でも俺にはむーりー。
ただ、助かるには助かった。素直に礼を言わねばいけない。
ミワキ「ヤエ!」
歓声が鳴りやまぬ中、俺に近づいてくる。
俺「この度は・・・」
ミワキ「神輿ーー!アレは良いのぅ。ワシも乗りたいのぅ。ヤエどうじゃ?」
相変わらず、話が成り立たない。
俺「まだ残ったノロヰや、ケガをしたものがおります。その後なら・・・」
ミワキ「ノロヰは全てワシが片付けておいた。後手の者は一緒に連れてきた。」
準備万端。神輿に乗りたいだけというのがヒシヒシと伝わる。
【セン!!】
後を振り向くと布津様の鎮めの儀が終わろうとしていた。
まあ無事終了というところか。
ミワキ「ヤエ〜〜。」
自分の欲求に素直というか子供のままというか・・・
俺「好きなだけ騒ぎなされ。」
ミワキ「良いのか?」
俺「はい。」
ミワキ「よぉぉーーしーー!!皆のもの神輿を持ってこいーー!!」
曳手、鎮手が一気に動き出した。
皆、現金なものだ。急に元気が出始めた。
バテバテになっていたはずの運手の美和。
超肉弾戦を繰り広げたオオヒコ勢。
オオヒコさんはもう酒を呑んでいる・・・どころか皆に駆け回っている。
先手から後手へ今回、1番苛烈であっただろう美和と纏向混成隊。ただ、なぜか騒ぐ元気はあるらしい・・・
1番の問題児は・・・オオミナだ・・・血だるまでもはしゃいでいる。
バカなのか・・・
ミワキ様を乗せた神輿を中心に皆がはしゃいでいる。
大人気なく、恥ずかしげもなく、本当に愉快そうだ。
これが後に日本各地に伝わっていく、「祭り」の雛形となるものだ。
嘘です。
嘘ではあるがそうあれ!
イズシ「ヤエ・・・體は・・・」
鎮めの儀を終えた、イズシのおっちゃんとシコオさんだった。
俺「大丈夫や。」
イズシ「ほんまに・・・ほんまに・・・」
俺の腕を掴み、しなだれる重みはそのままおっちゃんの思いそのものと思った。
俺はシコオさんを見、おっちゃんの肩に手を寄せた。
「ありがとう。」
何とかやり切った。
もう俺もボロボロだ。
と言いたいが元気だ。
解放したチカラの霊力総量は無限か?と言いたくないなる。
こんなチカラを持てば野心のひとつやふたつ生まれても仕方がない。
元気だか・・・精神は疲弊している。
もう働かん。休む。有給を申請させて頂く。
この一ヶ月は無休だ。労基を俺がこの時代に作ってやる。
この物語的には良いが本当に俺が疲れる・・・
つづく




