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ジョニー達とワーシャ達

 八雲達とアイリスが出会った日の昼休み、ワーシャとイレートが学園の校舎の裏の近くで話していた。


 「くそっ!何故俺達があんな扱いを受けなければならないんだ!」


 「そうよ!なんで私達よりあんな落ちこぼれがあの二人から守られてるのよ!私達の方がふさわしいのに……」


 二人はアイリスの言われたことを全く理解せず、自己の不満をぶつける。


 「あんな落ちこぼれさっさと日本に帰ればいいのに……それなら私達の良さに気付いて」


 イレートはイライラした感じで呟く。


 「帰らせるにも俺達が手を出すわけにはいかない。そんなことやれば下手すれば本国送還になってしまうからな」


 「なら他のやつにやらせればいいじゃない!あの落ちこぼれに恨みとかもっているやつに頼めばやってくれるはずだわ」


 「そんな上手くいくか?手伝わせたやつが下手すれば俺達にも手が回るぞ」


 「そんなの金を渡せばなんとかなるわ!あの落ちこぼれの近くにいる神崎伊織を狙ってる男は多いし、格下のやつなんて金と地位さえ用意すれば便利な駒になるのだから」


 「ふむ、それもそうだな。で、当てはあるのか?」


 「えぇ、後ろを見て」


 イレートは後ろを振り向かず親指で後方を差す。イレートの指差した先にはジョニーとその取り巻きが体育館の入り口でたむろしていた。


 一方、ジョニーは眉間にシワを寄せて苛ついている。

 自分の思ったようにいかない現実に腹を立てていたのだ。

 元々本国にいた時から不良であったジョニーは異能に目覚め、政府に頼まれ人工島に来たときには、まるで自分が映画や漫画の主人公になったように喜びに溢れていた。

 しかし、実際に来てみれば自分より何倍も強い能力者達がたくさんいることを知り、絶望する。

 それは自分が所詮は井の中の蛙であり、自らの異能をもってしても強者からすれば自分は容易く返り討ちにされる存在であるとわかったからだった。

 ジョニーは本国にいた時と同じように暴力を周りに振るおうと八つ当たりをしようとしたが、警察や十傑のような存在に知られ、排除されるのが怖くて鬱憤を溜め続けていた。

 それからしばらく時が過ぎ、ジョニーの前に二人の男が現れる。

 ヴェン・へイルという大柄の男とイーク・シランスという細身の男はジョニーと同じで不良であったが異能を持ったことにより人工島に連れてこられ、排除されるのが怖くジョニーのように鬱憤を溜め続けていた。

 そんな三人が気が合い仲良くなるまでにはそう時間がかからず、つるむことで気が大きくなり少しずつまたかつてのように素行が悪くなっていった。

 そんな時、八雲と伊織が人工島に来る。

 最初は新入りをいびる為に近づいたジョニーだったが、伊織を見た瞬間全身に電気が走るような感覚に襲われた。

 故郷や人工島にいる強い女性とは違い、触れれば容易く壊れてしまいそうな儚げな雰囲気を持つ美しい容姿の伊織にジョニーは目が離せなくなっていた。

 それからのジョニーは伊織を目で追うようになり接触しようと近付こうとしたが、彼女の幼馴染みの八雲に邪魔をされる。

 元々ジョニーの態度や行動の結果が原因で八雲は伊織を守ろうとしただけなのだが、ジョニーには弱いくせに、好意を抱いてる人物の近くにいる八雲が気に入らなかった。

 そうした思いがどんどんと積もり積もって、ストレス発散も兼ね八雲に暴力を振るうようになった。


 「ちっ、やっぱりあいつはもう少し痛めつけておくべきだったな」


 舌打ちをしながらジョニーが不機嫌そうに呟く。


 「まぁ、あの女を手にいれたいなら無理矢理襲っちまえばいいじゃねぇか。反撃される異能を持っている訳でもないし。それに氷坂が邪魔ならもっとやっちまって病院送りにすればいいんじゃねぇのか?」


 「馬鹿か。そんなことすれば警察や十傑に粛清されるだろうが」


 なにも考えてないヴェンの言葉にイークがつっこむ。

 

 「お前たち、氷坂が邪魔なら排除を手伝ってやろうか?」


 「あぁ?」

 

 話していたジョニー達に向かい、声が掛かる。

 声をかけられた方をみると、イレートとワーシャが立っていた。


 「誰だ。お前ら」


 「俺たちの事なんてどうでもいいだろう。大事なのは氷坂八雲をいかに排除するかだろう?どうする?俺達と手を組んで氷坂八雲を排除しないか?」


 「そんなことしたら警察や十傑に目をつけられるんじゃねぇのか?誰がそんなこと危険なことするか。それにそんなことをしてお前らになんのメリットがあるんだ?」


 「ならそれは俺とイレートが担当しよう。警察を買収など造作もない。理由か?お前らと同じで氷坂を排除したいからだ。それに報酬も払おう。報酬の半分だ。残りは終わった後に渡そう」


 ワーシャは懐から札束がつまった封筒を地面に投げる。


 「おいおい、マジかよ。ジョニー、イークやろうぜ!」


 「こんなにか……どうするだ?ジョニー?」


 封筒を拾い中をみるヴェンとその様子を見るイークはジョニーの方をみて聞いてみる。


 「……神崎伊織はどうする?好きにしていいのか?」


 「ん?あぁ、そちらも俺達が対応しよう」


 「わかった。俺達はなにをすりゃいいんだ?」


 「なに簡単なことだ。氷坂を痛めつけるだけでいい。俺とイレートの異能は戦闘向きではないからな。適材適所というやつだ。その方がお前たちもやり易いだろう?」


 ワーシャは口角を上げ、意地の悪そうな笑みを浮かべる。


 「そうだな。そうなるといつ行動するんだ?」


 「放課後とかどうだ?神崎を拐えば氷坂をおびき寄せるのも簡単だろう。場所はそちらに任せる」


 「わかった」


 「それでは事を終えた後、明日のこの時間にここに集まろう。それじゃあ、いい報告を待っているぞ」


 そういいワーシャとイレートは足早にその場を去っていった。

 その二人見送ったジョニー達はその場に残ってワーシャから渡された前金の分配を行う。


 「くくく、あいつを好きにしていいのか。もう我慢出来そうにねぇな」


 そう呟くジョニーの目は血走り、欲に満満ちている。

 しかしお金に目が眩んでいたヴェンとイークはそれに気が付いていなかった。

 一方、ワーシャ達はジョニー達を懐柔出来たことに喜んでいた。


 「上手くいったわね!あいつらが氷坂を痛めつければ、氷坂は暴力を怖がりここから逃げていくし、終わった後始末は罪をあいつらに押しつければ私達はなんの罪には問われないわ」


 「そうだな。日頃の奴等の行動からして俺達の言葉の方が信じてもらえるだろうしな。いい作戦だ。」


 ジョニー、ワーシャ達はあの場にもう一人・・・いることにこの時、気が付かなかった。

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