風味絶佳
ルナちゃんをストーキングして1ヶ月がたったが何の進展もなし、僕とルナちゃんとの間には大西洋中央海嶺ほどの溝がある。
何かの映画で見たことがある。
女の子はシュガー&スパイス。甘いだけじゃ、駄目なのよ。
優しいだけの男では駄目なのだ。刺激を加えてやらねば、あの子は振り向いてくれない。
ここは、イチかバチかの賭けにでよう。
「ルナちゃん。短刀直入に聞くけど、どうやったらルナちゃんみたいな豪速球を投げられるのか教えてくれないか?」
ダイレクトに聞いてみることにした。
「はあ?なんでそんなことアンタに教えないといけないわけ?
頭バグってんじゃないの?デバッグでもしたほうがいいんじゃないの?」
いつも通り辛辣なコメント頂きました。
赤い髪をたなびかせながらそのまま、僕の元を去ろうとする。
「もちろん!タダで教えてとは言わない。」
ルナちゃんが立ち止まる。そして、氷の視線を僕に注ぐ。
うーん、たまらん。
「1打席勝負だ。君がピッチャーで僕がバッター。僕がヒットを打つことができたら、豪速球の投げ方を教えてほしい。」
ルナちゃんの顔が驚きに歪む。
「はん、何を言うかと思えば。アンタみたいな3流が、わたしからヒットを打てると本気で思ってんの?私をバカにしてる?」
「ムリかどうかはやってみないとわからないハズだ。可能性はゼロ%じゃない。野球は確率のスポーツだ、打率1割のヘボバッターでも、裏を返せば10打席に1本はヒットを打てるんだ。宝くじを当てるよりは遥かに簡単な話だろ?」
「へぇ。アンタちょっと面白いわね。この私にそんなこと言ってきたのはアンタが初めてよ。」
ルナちゃんの表情が和らぐ。あっ、やっぱり可愛いなあ。
「いいわ。投げてあげる。その代わり私が勝った場合は、アンタは私に何をしてくれるわけ?」
僕は、決意を込めた真剣な眼差しでルナちゃんを見つめる。そして、言った。
「高校生活3年間、全て君に捧げるよ。僕は君の奴隷になる。」
想いよ、とどけ!
君にとどけ