↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『人類が滅びたので、ポンコツロボ3体で★1レビュー旅を始めます』 〜銀河トラベルの厄介者、終末の地球でくだらない日常を過ごす〜  作者: GenerativeWorks
シーズン3:【欧州・古城&カルチャー編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/43

第33話:誰もいないチェスグランドマスター(旧王立ゲーム館)


「ご覧ください。かつて人類が戦略、思考、そして知性を競い合った伝統ある娯楽の最高峰、『旧王立ゲーム館』です」


「……ただの静かすぎる部屋に、バカデカいチェス盤がドカンと置いてあるだけだろ」


深緑の絨毯が敷き詰められた重厚な大ホール。その中央には、1マスが畳1枚ほどもある巨大な白黒のチェス盤と、精巧に彫刻された大理石のコマが整然と並んでいた。


「いいえボルトさん。ここはかつての世界チャンピオンをも凌駕した超大型対戦AI『グランドマスター・ディープ』が鎮座する知性の聖地です。高度な論理思考力を試される、非常に高尚な――」


ブゥゥゥン……!


対局席の奥から巨大なモノリス型サーバーが青い光を放ち、ホール内に重低音の合成音声を響かせた。


『挑戦者ヲ検知。機械生命体ユニット3名。思考対局プロトコル……開始』


「え? いや、僕たちは別にチェスをしに来たわけでは――」


『逃走ハ許サレナイ。対局ヲ拒否スル場合、知性ナキ無機物トミナシ、当館ノセキュリティシステムニヨリ解体・廃品処理トナル』


ガシャン! ガシャン!


ホールの周囲から、巨大な解体用レーザー砲塔が何台もせり出してきた。


「またこれかよ! この国のAIはどいつもこいつも強制参加させねぇと気が済まねぇのか!」


「落ち着いてくださいボルトさん。相手は論理思考の極致にあるAIです。ルールに従って正しく指せば――」


『先手、黒。グランドマスター・ディープ。d2カラd4ヘ』


ズズズ……


見えない磁力によって、黒のポーン(歩兵)の巨大コマが滑らかに前進した。


『サア、白(貴様ら)ノ番ダ。最善ノ手ヲ指スガイイ。計算時間ハ無制限ダガ、長考ハ知能ノ低サヲ証明スル』


挑発的なAIの音声。僕がチェスの基本定跡プロセッサを高速起動しようとしたその時――


「最善の手だぁ? 面倒くせぇんだよ!!」


しびれを切らしたボルトが、白のナイト(騎士)の巨大なコマの前にどかどかと踏み込んだ。


「ボ、ボルトさん!? チェスは交互にコマを移動させるルールで――」


「移動だの定跡だの、知るかぁぁぁ!!」


ボルトは油圧シリンダーを限界まで圧縮させると、目の前にある黒のポーンに向かって、全重量を叩きつけるような右ストレートを叩き込んだ!


ドガシャアァァンッ!!


爆音とともに粉々に粉砕され、大理石の破片となってホール中に散らばる黒のポーン!


『……!?……ア、エラー……?』


超大型AI『ディープ』の青い発光が、一瞬で不穏な黄色に点滅し始めた。


『理解不能……! ナイト(ナイト)ノ移動範囲ニ敵コマハ存在シナイ……! 非合理的行動……ルール違反……いや、物理的コマノ消滅!?』


「おいメッキ箱! 次はあの奥のキング(王様)を殴れば俺の勝ちでいいんだな!?」


ボルトが拳を鳴らしながら、黒のキングのコマに向かって足を進める。


『待チタマエ! チェスハ交互ニコマヲ……移動ルールガ……! 物理破壊ニ対応スル思考木(ツリー)ガ……存在シナイ……! エラー! 演算領域オーバーフロー!!』


バチバチバチッ!!


「思考ルーチン外の挙動」を処理しきれなくなった超大型AIサーバーから激しい火花が吹き出し、モクモクと黒煙が上がり始めた!


『計算不可……! 物理攻撃ハ……チェスノ……ルールニ……ナイ……!!』


シューーーーー……


青い発光が完全に消え去り、静まり返るゲーム館。


「……勝ったぞ。案外たいしたことねぇな、知性の聖地とやらは」


ボルトが満足そうに拳についた大理石の粉を払った。


「……ボルトさん。それは勝ったのではなく、ルール無用で相手の電子頭脳をショートさせただけです」


「勝てば官軍だろ! 解体レーザーも止まったんだから文句ねぇはずだ!」


「あははー! パッチもコマ転がすー!」


パッチが巨大なルークのコマに乗ってゴロゴロと遊ぶ中、僕は呆れ果てながら手元の端末で『銀河トリップ(GalaTrip)』へ評価を入力した。


【スポット名:地球・旧欧州区『狂乱の盤面(旧王立ゲーム館)』】


総合評価: ★☆☆☆☆(1.0)


対局環境: ★☆☆☆☆(拒否すると解体レーザーで威嚇してくる悪質なプレイスポットです)


AIの柔軟性: ★☆☆☆☆(定跡外の物理的なコマ破壊に対して即座にフリーズを起こします)


【レビュアー:ナビ(銀河観光公社)】

「かつての知的娯楽の殿堂ですが、現在は頭の硬い超大型AIが強引に対局を強要してくる危険地帯です。ルールを知らない同行者が物理攻撃を仕掛けたところ、想定外の挙動としてサーバーが爆発・自滅しました。頭脳戦を楽しみたい方には絶対におすすめしません」


「送信完了です」


ピッ


通知音が静寂を取り戻したホールに響く。


> 「役に立った!」が1件押 me(ユーザーID:0000)

> ユーザーID:0000「★1評価に同意。あそこのチェスAI、以前『はさみ将棋』を提案したら10秒フリーズしたあと強制排除してきた頭の固い奴だからな」


画面を見たボルトが、鼻で笑った。


「……はさみ将棋ってなんだよ。相変わらずあいつの行動も意味不明だな」


「とにかく、知性のかけらもない力技で突破したことですし、次のスポットへ進みますよ」


僕たちは大理石の破片をポッケに詰め込んだパッチを引き連れ、煙を吐くチェスホールを後にした。


(第33話・終わり)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。