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カエデ  作者: アザレア
王都の近衛
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ディーナの過去~中編~

ディーナはハオウに従いハオウが言う訓練所へと案内されていた。歩き続けると森の中に入って行き険しい道を歩くことに。

慣れた道なのか森の中でも平然と歩くハオウと違いディーナは森の険しい道に足を取られたりしてまともに歩くことすらもままならない状況であった。

ハオウの後ろをしばらく歩かされたディーナは「ねえいつまで歩くの?もう二、三時間は歩いたはずよ。休憩も無しにこんな距離はさすがにおかしくない?」休息も何も無しに歩いてきたため疲労の色が隠せないディーナは文句を言った。


ハオウは振り返ることもせずに「何もおかしくない。歩くしか手段がない場合そんなこと言えるか?これも一つの訓練だ、泣き言は聞くに絶えないぞ」ディーナと違い汗のひと粒も流していないハオウ。これだけでディーナと体力の差がある事が分かる。


「ちぇ、はいはい分かりましたよ。歩けばいいんでしょ歩けば」休ませる気がないと悟ったディーナは文句を言う前に歩いた方が早いと考えて何も言わずにただ歩き続けた。


こちらの様子を見ていないハオウの隙を見て逃げ出そうとも思ったが、ハオウは恐らく足音と微かな呼吸音でディーナがついてきていることを察知しているため、逃げ出そうとした所ですぐに気づかれてしまう。

それかハオウを気絶させて逃げ出そうとも考えたが、どういった展開になっても返り討ちにあってこちらが気絶させられる。あの身のこなしに体術では勝ち目がないディーナ。

それにこの鬱蒼と広がる森の中、下手に逃げて迷えばそれこそ一生ここから出て行けなくなる。森をよく知るハオウがいるから遭難せずにここまで来れているが、一人では抜け出すのは不可能。

以上のことも踏まえればとりあえずこのままついて行くのが最善の方法だった。


それから約三十分程歩くとようやく森を抜けて、二人の目の前に大きな軍事基地があった。目の当たりにしたハオウは「ここだ、"リンドウ"軍隊の基地。我が軍の本拠地だ、ここで私の訓練もとい指令を受けてもらう」

ようやく到着したことで少し安堵したディーナはため息を吐いて「はぁ…やっと着いた。お金にも何もならない時間を歩かされちゃった。まぁこれ以上進む必要が無いのなら別にいいけど」


ハオウとディーナは基地の入口まで歩いた。入口の両端には基地の見張りをしている軍人がおりハオウを目にすると額辺りに手を当て敬礼し「ディアル隊長、お勤めご苦労様です。どうぞ中へお入りください」そう言った軍人は入口の門を開けた。


「ああ、遅くまでご苦労。今日はもういい、基地に戻り休息しろ」「ハッ!ディアル隊長のお言葉、痛み入ります。お言葉に甘え此度は身体を休ませます」軍人の二人はもう一度敬礼をした後に見張りの任務を終えて駆け足で基地内部へと戻っていった。


その様子を見ていたディーナは「ふ~ん慕われてるんだね」「軍を率いる人間が腑抜けでは壊滅する。常に憧れの存在にならなくてはならない。お前もいずれ分かる」ハオウの言葉に頷いていたが内心では「貴方に憧れるなんて、来世になったらするかもね」現状ではハオウに対して何の感情も持てないディーナ。


基地の内部へと進むと、グラウンドような場所ではハオウと同じような迷彩柄の服を着た女性が的に向かってアサルトライフルや拳銃を発砲する軍人が見えていた。夜も遅い中で訓練する兵士を見たディーナは「発砲音って、こんな真夜中じゃ近所迷惑になるんじゃない?」と、周りの心配をした。

実際に、銃弾は近くで聞くとまるで爆発音のように聞こえるものだ。したがって、このような時間帯に発砲訓練を行うことは、周囲の住民にとって非常に迷惑であると言えるだろう。


「なんのために森の奥底で基地を立てたと思う。周辺や近隣の一般人が立ち入らないためだ。森の木々が銃弾や声をかき消してくれる、真夜中でも何も問題が無い状態だ」

ハオウがここに基地を立てた理由の一つとしてどんな時間帯でも訓練が出来るからである。森の静けさの中で銃弾や声がどれだけ響いても外部に漏れることがない。

また森の中のため険しい道が待っておりそれも一つの理由であり訓練の一環である。


「へぇ~…」関心がないような返事をしたディーナだが訓練をする軍人をじっと見つめながらハオウについて来ていた。見続けるディーナにさすがに違和感を感じたハオウは顔だけディーナの方に振り返り「どうした、何か見えているのか?」視線の先について聞いた。


「いいえ、私が口出しする必要性もないし、気にしないで」何かを気にしていたようなディーナだったがそれを口にはしなかった。隠しているつもりはなさそうなディーナにハオウは「言え、私はお前の上官になる。全ての言う事は聞く必要は無いが指示には従ってもらう。何を感じ何に気がついた?」上下関係と言う立場を使いディーナが何を悟ったのかを命令で聞いた。


口答えしようとしたがどうせ言わなくてはならないと考えたディーナは「はぁ」と、ため息を吐くと自らの拳銃を取り出し「銃を構える時に上半身がブレすぎ。何発も撃って一発当たるじゃ動きの速い"マリー"相手に殺られちゃうでしょ?銃は構えたら手を止める、止めた後は相手を目で追って…」銃を構えた瞬間に的に向かい撃った。

撃った銃弾は発砲訓練する的のど真ん中に命中した。自分達よりも遠い場所から一発だけ撃った銃弾が小さな的のど真ん中に直撃した事に軍人達は一斉にディーナ達の方に振り返った。


驚きの表情を隠せずにあたふたする軍人達。そして出会ってから表情を変えることが無かったハオウだが、ディーナの離れ業に微かにだが眉を上げて驚いていた。


左手を水平して額に当てて命中したかどうかを確認したディーナは拳銃をクルクルと回し懐に納めて「ブレなければ後は制度を上げるだけ。そうすれば止まった的は当てられるよ。実際"マリー"は動き回るからこの数十倍当てるのは難しいけど」当てることが当然かのようなディーナは得意げな顔ひとつもしなかった。


咄嗟に構えた拳銃で的のど真ん中に当てる精度の高さ、偶然ではなく必然として的に当てた。ハオウはディーナと対峙した時のことを思い出すと、発砲した銃弾は避けなくても当たらなかったかもしれない程の精度だった。

だがそれは人間をほとんど相手にしてこなかったのと躊躇いがあったため。"マリー"が相手であればあの命中精度を落とさずにピンポイントで当てることが出来ると考えれば、「この女、とてつもない才を秘めているのかもしれない」ディーナの持つ可能性が想像よりも上と確信した。


「で、これからどうするの?私を訓練するなら早くしてくれない?」とにかくさっさとこの場から解放されたいディーナは訓練するなら早くしたかった。

「いや、今日は何もしない。明日からお前の訓練を始める。お前が住む部屋も手配してある。そこで休め」

「やっと休める。なら案内してくれない?」「こっちに来い」今日はこの場へと案内だけだったハオウ。明日からより"リンドウ"としての力を高める訓練が始まる。


----------


翌朝、狭い部屋で文句を言っていたディーナだが疲れからかベッドに横になるとすぐに眠りについた。

朝の六時になりぐっすりと眠っていたディーナだが突然大きなチャイム音が鳴り始めた。その音で寝ていたディーナは目が覚めて「何?何が起こったの?」体を起こして何が起きたか分からないため辺りをキョロキョロと見渡した。


朝起きてすぐのためか重たい体で立ち上がり、部屋の扉を開けて顔だけ出して様子を伺った。

すると、他の軍人が一斉に支度をし始めたことに気がついた。急いで支度をする軍人達を見て納得した。「あぁこれ起床のアラームだったのね。音大きすぎるでしょ」軍人たるもの朝寝坊など許されない。起床の音がなればすぐさま準備して訓練が出来る状態に仕上げなくてはならない。


だがディーナはそんなことはお構い無しに顔を引っ込めてベッドに戻った。「何時だと思ってるのよ。私朝は苦手なのよ」と、言ってまた眠りにつきそうになっていたディーナ。

だがここで突然部屋の扉が勢いよく開いた。そこには既に準備を整えていたハオウが立っていた。


睨みつける形相でディーナを見た。その顔にさすがに眠っていられなかったディーナは再び体を起こして「な、何よ。私がまた寝ようとしているのかを見通した顔ね」「お前の行動は分かっていた。どうせ私の朝礼など来るはずがないとな。私が直々に迎えてやったのだ、さっさと準備しろ」この状況で睡眠するのはさすがに無謀だと分かったディーナは「分かったわよ、起きればいいんでしょ起きれば」嫌々でもなんとかベッドから立ち上がって支度を始めた。


「今日から休みの日以外はこの時間に起きろ。起きなくても私が無理やりにでも引っ張っていく。自力かどっちか選ぶんだな」「はいはい、分かったわよ」ハオウに背中を向けて顔を見えないようにしていたディーナだが内心少しイライラはしていた。

「言わせておけば好き勝手。私の自由なんて一切考えていないわね」今までの生活とは真逆であり不自由な生活を強いられているディーナのストレスは溜まっていく一方だった。


逃げられる事は現段階では不可能であり仕方なしにハオウが率いる軍隊の訓練に参加することにした。このまま過ごしても退屈のため、ディーナにとっては退屈しのぎでしななかったが。


支給された服に着替えていたディーナの格好は他の軍人と同じく迷彩柄の服に着替えた。着替えた後に体を少し動かして着心地を気にした。

「へぇ、案外動きやすいのね。デザインはともかく、訓練には最適ってことね」かなり軽い素材で縫われているためか動きに妨げが無いように作られているのを感じていた。


「着替えたか、だったらグラウンドに来い。朝礼だ」着替えを部屋の外で待っていたハオウはディーナの部屋には入らずに声だけかけてその場を後にした。

大きな欠伸をした後に自らの拳銃を懐に収めてディーナは部屋から出てグラウンドに向かった。今は素直に従う方が早いと考えていた。


グラウンドに向かうと既にハオウの部下である軍人達が綺麗に整列しておりハオウが来るのを待っていた。ディーナは整列された軍人の中に割って入るのは気が引けるため、少し離れた場所で待つことにした。


すると、「ディアル隊長に敬礼!」一人の軍人がハオウを見かけると大きな声で全員に呼びかけると一斉に軍人達は敬礼をした。

ハオウは整列した軍人達の前に立ち誰か一人でも欠けていないかを確認すると「気をつけ!」と、言うと軍人達は敬礼の手を下げた。


「諸君、おはよう」ハオウが挨拶すると「おはようございます!」と、大きな声で全員が挨拶した。

「本日もいつ訪れるか分からない"マリー"の襲撃に向けての訓練を行う。日々一つ一つの努力により小さき力が強大になっていく。諸君らの力があってこそ、この世界はより守られる。

強き力は弱き力を守るためにある。そのために、"マリー"に対抗すべき力を高める。一人一人が意識を高く、常に眼前の相手を討つべく、諸君らの活躍に期待する!」

ハオウの朝礼に軍人達は再び敬礼して「ありがとうございます!」と、感謝を伝えた。


「以上で朝礼を終了にする。各々訓練励むように。何かあればすぐに私に伝えろ」「はい!」朝礼が終わると軍人達は小走りで各々の訓練場に向かった。


朝礼を聞いていたディーナは「あれで意識が高くなるの?たった一人の言葉であの人達は頑張れるってこと?」軍を率いる隊長であるハオウ。軍人は彼女の言葉を信用しているがディーナはまだ会って間もない。彼女の言葉に深みが無いと感じるのは当然である。


全員が訓練に向かったのを見届けたハオウは離れた場所で聞いていたディーナの元まで来た。

「さて、ようやくお前の訓練を行える」「で、私はどうしたらいいの?ここにいる人達と一緒の事をしたらいいの?」訓練とは言え基礎的な事を重点的にやると考えていたディーナ。訓練を見た限り自分の実力であればあの程度の訓練は造作もない事であり後はどれだけ苦労したように見せるかを考えていた。


だがハオウの口からはディーナの想像とは違っていた。

「お前の訓練は私との一体一でのタイマンだ」まさかのハオウ自らとの訓練に「えっ?」と顔に出して驚いた。


「今のお前に射撃訓練など必要ない。お前に必要なのは近接戦での対応力だ」ハオウはディーナから振り返って「ついてこい、訓練所へと案内する」


「ここじゃダメっての?」ディーナもハオウについて行き、グラウンドから基地内部に入った。

内部に入りしばらく歩くとコンテナが置かれている場所に来た。そこは少し薄暗く満足に視界には入れることが出来なかった。


ハオウは立ち止まりディーナの方に振り返って、肩あたりに装着してあった鞘に収めてあるナイフを取り除きディーナに手渡した。

ディーナはナイフを手に取り「これ、貴方のでしょ?」昨夜ハオウが扱っていたナイフだと分かった。


「くれてやる。これからお前には近接戦闘の訓練を行う。私と一体一のタイマンでお前が一度でも私の音を上げさせられれば、ここから出ていってもいいぞ」

ハオウの言葉にディーナは俄然やる気が出てきて、少し笑みを浮かべ「その言葉、取り消しはないわよね?」「ああ、約束は守る」


ハオウは肩以外に太ももにもう一本のナイフを装着してあり、ナイフの取っ手を掴み引き抜き逆手に持った。

ディーナから一定の距離を置き「ナイフを抜け、これよりお前の技量を上げてやる」逆手に持つナイフの手の甲を口元に軽く当て、臨戦態勢に入った。


ディーナもナイフの取っ手に手を掴み鞘から抜き鞘を後ろにほおり投げて「貴方を倒してさっさと自由になるわよ!」

ディーナはハオウに突っ込んで行った。ナイフを縦に斬りかかろうとしたが、すかさずサイドに避けられた。


避けたハオウだがディーナは再びハオウに斬りかかったが、今度は避けずにディーナのナイフの刃を逆手に持つナイフで「遅い!」と言って弾き返した。弾き返されたディーナはナイフを落とすことはしなかったがよろめいてしまった。


「このっ!」冷静さを欠いてしまったディーナは何も考え無しにまたしてもハオウに斬りかかったが、ハオウはディーナのナイフを持つ手首を瞬時に掴み攻撃を無効化した後にディーナの首元にナイフの刃を突き立てた。


またしても殺されかけた事に額に汗をかくディーナ。「闇雲に突っ込むな。命を棒に振るだけだ」ハオウはナイフを下ろしてディーナとまた距離を置いた。

「まだ訓練は始まったばかりだ。いくらでもかかってこい」と、言って指を前後に動かし挑発した。「言われなくても、やってやるわよ!」挑発に乗ったディーナは再度ハオウに突っ込んで行った。


----------


訓練は二、三時間経過した。一向にナイフの鋒どころか、触れることすらままならないディーナの体力は限界に近づいていた。

「はぁ…はぁ…はぁ…」至る所から汗を流し息を切らなしながら立つディーナだが立つことが限界でハオウに突っ込む気力など残っていなかった。ましてや一度触れられなければ返り討ちに合うばかりで徐々にやる気が失ってきていた。


対してハオウは一切の汗をかかずに突っ込むディーナを返り討ちにしては同じ構えを繰り返していた。

同じほど動いているはずだが音を上げる所の話では無くなっていたディーナは体力と気力の限界によりその場に座り込んでしまった。


「ちょ、ちょっと待って。休憩させて…」本当にこれ以上は動けそうにないと判断したハオウもナイフを鞘に納めて「よかろう。一旦休息だ」反対ではなく普通に休ませたハオウは一つの小さなコンテナの中を開けて水が入ったペットボトルを二本取り出し一本をディーナに渡した。


ディーナは躊躇いなくペットボトルを手に取り水を一気に飲み干した。「はぁ…落ち着く。にしても一度も何も出来なかったなんて、貴方何者?」二つ名を与えられてはいないとは言えディーナの実力はそれなりのもの。だがハオウの前ではただ手のひらで弄ばれただけの感覚だった。


ハオウも水を少しだけ飲みペットボトルのキャップを閉めた後に「経験の差だ。お前以上に私達は死地を乗り越えてきた。私は近接戦闘においては二つ名"リンドウ"に引けを取らない程の技量持っている。近接戦闘が素人のお前に遅れをとるわけがない」

ディーナも数時間戦闘を行っただけで分かっていた。"リンドウ"になっていたとしたら相当な実力の持ち主であり、間違いなく二つ名を与えられる存在だと。


「あそこまで自信があったのも納得。音を上げるのは多分私の方、貴方に勝つなんて今の私は無理ってことね」現段階でハオウに勝っているのは恐らく遠距離からの銃撃、それ以外は全てハオウの方が上回っている。半ば諦めかけていたディーナ、この先何時間やっても結果は変わらない事に。


「そうだな、お前では私に勝つのは不可能だろうな」事実を突きつけたハオウ。分かっていたことだがディーナも少し俯き今後こんな訓練が続くとなるとかなり憂鬱になっていた。


だがハオウは激励ではなく「だが筋は良い。お前の欠点はまだ闇雲に突っ込む所だ。よく敵を観察しろ、次にどんな攻撃をしてくるかをの予測しろ、自分の攻撃がどうして防がれるかを考えろ、これらを瞬時に判断すれば、私にナイフを突き立てられる事が出来るぞ」アドバイスを送った。


「何、怒らないの?」何かを言われる覚悟は出来ていたディーナだが予想外の返答に少し戸惑っていた。「お前の上官だからな、部下の成長を促進させなければ隊長失格だ」

ハオウは再びナイフを手に取りすぐさま逆手に持ち「さあ休息は終わりだ、続きを始めるぞ」すぐさま構えたハオウ。


ディーナは休憩の時間の短さに何故か文句を言わずに素直に従い地面に置いたナイフを手に取った。「なんだろう、疲れてるし全然当たらなくてイライラしてるのに、楽しいって感じてるのは、なんでだろう…?」どこか幸福感があった。高鳴る鼓動にディーナの満足感は満たされていた。


「だけどこのままじゃ一度も当てる事も出来ない…さっきハオウが言ってた、予測を立てろって。そして動きをよく見ろって。ハオウだって人、綻びは絶対にある」そう言って休息前のハオウの行動を思い出していた。すると、ある行動が分かった。

「そういえばハオウは私の一撃は受け止めずにすぐに避けてた。その後の二激目で弾き返すか動きを止めてた。それがもし癖だったら…」


「どうしたディーナ、来ないのならこっちから行くぞ」考えている最中のディーナに向かって突進するハオウ。

ディーナは向かってくるハオウにナイフで突き繰り出した。「振るのではなく突きか、だがそれでも何も変わらないぞ」ハオウは瞬時に立ち止まりサイドに避けた。


「いや、変わったわ。貴方に一撃お見舞い出来るかもしれないからね」サイドに避けまだ着地していないハオウの目の前にはピンポイントでナイフを振りかざしていたディーナだった。


「なっ!」まるで行動が分かっていたような動きを見せるディーナに驚きを隠せなかった。着地する頃にはナイフを振って自分に攻撃を繰り出す。


「まずは一撃!」なんとな触れることは出来ると確信したディーナだが、ハオウの目の色が変わった。

着地するとすぐにしゃがみディーナの足首を回転しながら蹴った。体制が崩れ、その場で尻もちをついてしまったディーナ。ハオウは追い討ちをかけるように立ち上がるとすぐさま逆手に持つナイフで倒れたディーナを突き刺そうとした。

訓練の一環ではなく、本気で突き刺そうとしている事が瞬時に分かったディーナは胸元を突き刺される前にハオウの手首を両手で掴み抵抗した。


ハオウの力の強さは受け止める事が必死のディーナ。「このっ!」咄嗟にディーナはなんとかハオウの手首を少しズラす事に成功して、ハオウの腹に蹴りを入れた。よろめくハオウの隙をつき一定の距離を離した。


危機を乗り越えたディーナは「ちょ、ちょっと!今本気で殺そうとしたよね!?」明らかに今までとは違って力の入れ方や殺傷のやり方に本気だった事が分かったディーナはハオウに戸惑いながらも怒った。


姿勢を戻し立ち上がったハオウは「すまんな、本能的に殺れる前に殺れの精神だったからな。少し本気を出してしまった。だがよく対応したな」ディーナの反応速度やその後の対応は"マリー"と戦ってきただけのことはあり、ディーナに対して初めて微笑みを見せた。


「対応しなきゃ殺されてたからね。命の危機を感じたら私も本能的に自己防衛が働いたのよ」あまり褒められた気がしなかったディーナ。

「さて、まだまだこれからだ。もう一度でも私を本気にさせてみろ」「また…まぁいいわ。ちょっと楽しくなってきたのは本当だし、貴方に付き合ってあげる…」


ディーナがさらに突撃しようとしたその時「ディアル隊長!」ディーナの後ろから一人のハオウの部下の軍人が二人の訓練を止めた。

「何事だ、私達はまだ訓練の最中だ」「"リンドウ"協会からの要請です、"マリー"の大群が街に襲いかかろうとしています!」驚く二人。これがディーナが軍隊に入った最初の任務になることになるのだった。

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