表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カエデ  作者: アザレア
討滅戦~新たなる力解放~
40/86

超えてはいけない

ルムロとエニーが同盟して二日後、ルムロに兵士や"リンドウ"達が集結していた。

"マリー"を直接対峙する数は六十人。エニーとルムロも戦闘経験がある兵士、"リンドウ"達は名を挙げていない者がほとんどではあるが数が集えば力になる。


王宮の広間に集まった皆の目の前には指揮を執る三人の"リンドウ"が目の前にいた。


「み、皆さん超大型"マリー"討滅戦に協力してくださりありがとうございます。えっと、作戦の指揮を執らさせていただくスイレン・メリアージュと申します。まだまだ私は未熟で至らない点もございますが皆さんの命を最優先に動きますので、よろしくお願いします!」


三人で話し合った結果、総司令官はスイレンがすることに決まった。この三人の中ではディーナが一番の適任だとスイレンは思っていたが「私は命令するのもされるのも嫌いだから。自由気ままに皆を纏めるからスイレンが一番かな。見た感じシスイもスイレンの方がいいと思ってるしね」「はい~わたくしでは風格がありませんので~スイレン様が適任かと思われます~」

こうした話し合いもあってスイレンが総司令になった。


大勢を纏める事が初めてのスイレンは顔には出ていなかったが緊張しており手が震えていた。

「わ、私は皆さんのお力はまだ分かりません。ですのでこれから私ともう二人呼んでいますので、皆さんの力量を確かめて…」誰がどう見ても緊張している姿が見えて兵士や"リンドウ"はスイレンの話をまともに聞かない人がどんどんと増えてきた。超大型"マリー"と言うこともありいつもの討伐戦以上に重要になったいく。ここまで司令官が緊張していると集まった皆も不安を感じていた。


言葉を詰まらせるスイレン。どうやって自分の話を聞いてもらえるかと考えているとスイレンの隣にいるディーナが皆に聞こえる程の大きな声で「おーいみんなーちゅうもーく。貴方たちの命を守るためにスイレンは動くんだから話を聞かないと無駄に命を散らすことになるよー。それが嫌なら静かにスイレンの話を聞くこと。分かった?」

遊びでは無い討滅戦、緊張感がない皆を萎縮させずにかつ話を聞かせるようにある程度優しく伝えたディーナ。


ディーナの声によりふざけている場合ではないと分かった皆は静かになりスイレンの方を見始めた。


「でぃ、ディーナさん」「スイレンも落ち着いて。始まってもいない事だからリラックス、ちゃんと言葉を伝えたら皆もそれの通りに動いてくれるから。自覚はあるのはいいことだけどそれと同じぐらい落ち着きも必要よ」

スイレンにも命を預かる"リンドウ"としての落ち着いが必要と言った。


スイレンは一度深呼吸をして目を閉じて一歩踏み込んで「取り乱してしまい申し訳ありません。改めて、皆さんのお力を拝見させていただきます。皆さんにも得手不得手が必ずございます、長所を伸ばし短所を補うように私含め三人が皆さんを訓練します。短い時間ではありますがよろしくお願いします」

話を瞬時にまとめて言葉にした。ディーナは焦ってしまうスイレンは仕方ないと思っていたが一度落ち着きを取り戻せば以降は冷静に判断する頼りになるリーダーになると思っていた。


スイレンは頭を下げると一人の女性がスイレンに近づいて「切り替えの速さはさすがだな。スイレンに指揮を任せたのは正解かもな」声をかけられ頭を上げて顔を見ると「ヴァレアさん。訓練所にいるのでは?」「隠す必要はないだろ?前に出た方が全員臆しはしない」


訓練の指揮官の一人はヴァレアだと分かりエニーの兵士達以外は騒然としていた。"最強のリンドウ"とも呼ばれるヴァレアがこの場に参加し稽古をつけるのは異例の事でもある。"リンドウ"の中では初めて目の当たりにする"リンドウ"もいた。


「集まってもらい悪いが時間はあまり無い。短時間で"マリー"にも対抗出来る力をつけてもらう、私とスイレン、そしてルムロの騎士隊長ケイもいる。想像しているよりも遥かに厳しくなるだろう。それが嫌なら今すぐにでも家に帰れ、半端な覚悟で超大型"マリー"に挑めると思うな」

集まった兵士や"リンドウ"達に開口一番に厳しい現状と訓練を伝えた。二つ名を持つスイレンにヴァレア。世界トップの国を守るケイ、この面子がいるだけで分かるのは強くなれるがその分過酷な訓練になる。


この言葉を聞いた"リンドウ"や兵士の一部は次々に部屋から出ていった。残ったのは総勢で三十人、その中でもエニーの兵士は誰一人として脱落する者はいなかった。一度ヴァレアに稽古をつけて貰った反動として並大抵の事では動じはしなかった。


「それでも残った者達は私達に続け。この苦難を共に乗り越えぞ」ヴァレアとスイレンは先に部屋から出ると残った兵士達も二人の後について行った。


ディーナとシスイ、残されたのは指揮を執る二人だけ。「皆張り切ってるね~当然か。超大型"マリー"なんだもの本気にならないと話になんないから」「ディーナ様は訓練には参加しないのですか~?」

「そういうガラじゃないからね。この前も言ったけど依頼以外じゃ命令するのもされるのも嫌いだから。上からものを言う性分でもないからね」

人を導くには力不足だと分かっているディーナは個人で超大型"マリー"の対策を考えるようだ。


「なるほど~ディーナ様の縛られずにご自由な性格はカッコいいですね~わたくしでは真似ることすら出来ませんわ~」「貴方は貴方でしょ?自分にしか出来ない事をやるから貴方も参加しなかった。これから目撃情報があった場所に行って"マリー"の様子を偵察しに行くんでしょ?」


ディーナが発した言葉に驚いて眉を上げるシスイ。「おやおや~どうしてお分かりになったのですか~?誰にもお話していないはずなのですが~」「前にヴァレアと話をしているのを聞いちゃってね。危険な行動だから誰にも話さずにしたんでしょ?私達には話してもよかったんじゃないかな」同じ指揮を執るディーナとスイレンにも話さずに単独で"マリー"の元に赴こうとして行動や特徴を偵察しに行こうとしたシスイに信用されていないのかと思ってしまったディーナ。


「いえいえ~わたくし属性は情報収集にピッタリでございますので、御二方の邪魔にならずに自分の長所を探してみたところこれが最善かと思いましたので~。正義感の強い御二方ですので止められる心配があったのでお伏せさせていただきました~言葉に出来ず申し訳ございません~」そう言って頭を下げたシスイ。


「いえ、一人で挑まずに無茶をしないって約束出来るなら私は止めないよ、スイレンは分からないけど。貴方の属性は目で見てないから分からないけど、それで皆を助けられるなら私は応援するよ」実力は未知数で属性も明かしていないシスイ。だがディーナは何かを感じていた、シスイは普通の"リンドウ"ではない事を。超大型"マリー"偵察に行っても何食わぬ顔で帰って来る、ディーナの直感が自分自身にそう言っていた。


「ありがとうございます~ディーナ様はやはりお優しい御方ですね~」シスイはいつも通りの笑顔と穏やかな表情でディーナに感謝の言葉を伝えた。


すると、突然ディーナが少しだけ黙り込んでしまった。「ディーナ様?」突然の事に不思議そうに首を傾げるシスイ。

ディーナは口を開くと「シスイ、これは私の妄想だし本気に真に受ける必要なんて一切ないけど、聞きたいことを聞いていい?」ずっとディーナの中でシスイに対してのモヤモヤしていた気持ちをここで晴らそうとあることをシスイに聞くことにした。


わたくし聞きたいことですか~?」「うん。貴方は確かに自分のことを"リンドウ"って言った。もちろんそれはデタラメなんかじゃないのは分かってる。

けれどもう一つある。貴方は…」ディーナが何かをシスイに伝えようとした時、部屋の扉が開いて「ディーナさん、シスイさん。一度訓練所まで来てくれませんか?"マリー"と初めて戦う兵士もいますので二人のアドバイスを頂けないでしょうか?」


スイレンが部屋に入り"マリー"との戦闘が豊富な二人に助言をと頼んだ。「全然大丈夫よ。シスイは?」「わたくしも問題ありません~」二人の承諾を得たスイレンは「分かりました。先にヴァレアさんとケイさんにも伝えてきますので後ほど訓練所に来てください」と言い残して部屋から出ていった。


話を途中で切られてしまいディーナもシスイに伝えることも間が空いてしまったためここでは話さない事にした。


「ごめんシスイ。やっぱり忘れて、私が変なことを聞いちゃっただけだから。さて、気を取り直して訓練所に…」

「ダメですわ、ディーナ様」


声質が変わり一瞬誰が喋ったか分からなかったディーナだが先程の声は間違いなくシスイの声だった。いつもは声が高く語尾を伸ばしていたシスイだったが、トーンが明らかに低く語尾も伸ばしていなかった。


「し、シスイ?」豹変に少し戸惑ってしまうディーナ。

「一歩踏み出すのは勇気が必要です、その一歩で大切な誰かを守れるかもしれません。しかし、その一歩が後戻り出来ない事だってあります。

貴方様は今踏み越えてはいけない線を後一歩で踏み越えようとしていました。わたくしはおっしゃる通り"リンドウ"でございます。それだけを覚えていてください。わたくしが貴方様から発する言葉を想像して、それがもし想像通りだった場合…」


様子がおかしいシスイだったがディーナが瞬きの間に瞬時にディーナの真横に立ち耳元で「最悪、貴方様のお命を奪いかねません。どうかその一歩は踏み出さないでください。わたくしは貴方様を殺したくはないので」


声のトーンや言葉は本気で言っている。ディーナは背筋が凍り、表情には出ていなかったが冷や汗を流していた。


ディーナから離れて扉の方まで歩いていくシスイは振り返って「ディーナ様~わたくしは先に行っておりますね~」さっきまでのシスイとはうってかわり。いつも通りの表情になって語尾も伸ばしている。


部屋から出ていったシスイに何も言えなかったディーナ。首元に流した汗を手で触って「いつぶりかな、あんなにも恐怖を感じたのは」"マリー"を討伐した数は果てしないディーナでも、シスイの力は並の"リンドウ"の数十倍、もしシスイに挑まれれば勝てるとは言えない。疑問だった実力が確信に変わった瞬間だった。


「シスイの触れてはいけない部分に触れちゃったかな。でも、悪い人ではないのも分かった。この件は私の内に留めておかないと」シスイの本性なのか分からないがディーナの中では悪人ではないと判断していた。理由は不明ではあるが。


「私も行かないと、なるべく平常心で。こういう時にフェリスの顔を見られればなぁ~癒されるに違いないのに」

しばらくずっとそばにいたフェリスの顔を見るだけで元気が湧いてくるディーナ。

そんな中でフェリスはどこにいるかと言うと…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ