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カエデ  作者: アザレア
討滅戦~新たなる力解放~
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皆の笑顔

エニーの国長であるタイムが"リンドウ"協会に来ている事に驚くディーナとスイレン。「どうしてここに、エニーは大丈夫なの?」国長であるタイムがここに来てエニーの心配をするディーナ。


「私が少し離れていても大丈夫です。エニーの皆は弱い人ではありませんから。私がここに来たのはフェリスさんに会いに…だけではありません。皆さんへのお手伝いを出来ればと思い、ヴァレアさんにここまで連れてきてもらいました」「ヴァレアに?」ディーナはヴァレアを見るとヴァレアは頷いて「諸々の事情は部屋に行ってからだ。行くぞ」ヴァレアは先行して歩いた。ヴァレアの横にピッタリとついて行くシスイ。「もう少し離れてくれ」「まぁまぁ~護衛だと思ってください~」ヴァレアの護衛と言っているシスイだが表情は笑顔が絶えていなかった。


「あんまし状況が理解出来ていねぇがとりあえずアタシ達もヴァレアについて行くか」タイムとは面識がないチハツは一人ヴァレアの後を追って歩いた。

「チハツさんの言った通りですね、私達も説明を受けましょう」「そうね、フェリスもそろそろベッドが恋しいと思ってるでしょうしね」三人は会話を混じえながら歩いて行った。


----------


ヴァレアの後をついて行き協会のある一部屋に着いた"リンドウ"達とタイム。"リンドウ"が休憩するような部屋でベッドにコーヒーポット等の一息つけるような物が置かれている。


ディーナはベッドを見つけるとすぐにフェリスをベッドに寝かせて布団をかけた。子供が落ち着いて安心して眠っている表情に微笑みを見せて頭を撫でるディーナ。


「ここでなら問題ない。話を進めるぞ」ヴァレアが今回の超大型"マリー"討滅戦の詳細を話そうとするが「私達が集まってくるのを他の"リンドウ"達に見られて良かったのでしょうか?興味本位で扉の前で盗み聞きしている人もいるかもしれないのではないでしょうか」

手練の"リンドウ"が一部屋で会議をするのに注目を集めないわけが無い。スイレンは情報が盗み聞かれる恐れがあったが「ご心配なく~皆様がお部屋に入ったと同時にヴァレア様が扉の前に氷壁を作り出してありますのでこちらの声が漏れる事はございません~」用意周到なヴァレアは誰かが近づくことのないように分厚い氷壁で外の誰かに聞こえないようにしていた。


「なるほど、ヴァレアさんのお力でしたら充分に可能ですね。しかしシスイさんがお答えするなんて、事前にこの事を聞いていましたか?」ヴァレアの口から説明するのは分かるがシスイが説明するのは少し疑問に思ったスイレン。

「いえ~扉が閉まる隙間からヴァレア様の氷がお見えになったので~それに耳をすませば氷壁を作る音も聞こえましたので~」微かに見えて聞こえたと言ったシスイ。「な、なるほど私達は会話をしながらだったので扉や音には気にしていなかったです。シスイさんは聴力に優れている人なんですね」「それほどでもないですよ~わたくしは極々普通の"リンドウ"ですから~」


自身を贔屓しないシスイだがディーナは静かにシスイの見つめていた。ディーナ達に会ってからずっと穏やかな表情を浮かべているシスイだが、ディーナは何か思うことがあるのか。


「気を取り直すぞ。私が二つ名持ちの"リンドウ"を呼んだのはこの地域に接近している超大型"マリー"を討伐に力を貸してほしい。既に被害は各地にて拡がりつつある、あまり猶予もない状況だ。

私は協力出来る"リンドウ"をできるだけ集め対抗する人を増やす。各国にも協力体制を促すために私が前線に立つのは難しい。そこで、今回の討滅戦の指揮を執るのはディーナ、スイレン、シスイの三人に任せたい」


"リンドウ"協会の会長であるヴァレアは人脈は広く、彼女に協力する人は多い。だがそのためには時間もかかりヴァレアが戦場に赴けるのは現実的に難しい。だがヴァレアは三人の"リンドウ"に今回の指揮を任せようとしていた。


「私がですか!?ディーナさんとシスイさんがいるとはいえまだ二つ名を与えて貰って間もない私が討滅戦の指揮を執るのは、少し荷が重いです…」まだ人に指示するにはほとんど経験が無いスイレンにとって自信が持てていなかった。


気が滅入り浮かない顔をするスイレンの肩に手を置いたディーナ。「ディーナさん?」「そこまで重く捉える必要はないよ。スイレンだけじゃなくて私がいて、未知数ではあるけどシスイもいるんだから。どうしても手に負えなかったら私に丸投げしてもいいから、良い機会だと思って挑戦してみたら?フォローは任せて」スイレンの不安を背負うディーナ。


わたくしにも出来ることがあればお力添えを出来るかもしれません~スイレン様の手助けをさせていただきますように努力します~」シスイも指揮を任される事に関しては何も躊躇いがなくスイレンの手助けを率先してやるようだ。


肝が据わっているディーナとシスイのフォローの言葉もありスイレンは一度深呼吸をして「すみません、まだ始まってもいないことに自信を無くしてしまい。私一人ではなく御二方もいます、心強い二人がいれば私にも出来ることがあるはずです。今回の指揮を執らさせていただきます」覚悟が決まったスイレンは真っ直ぐな眼差しでヴァレアに伝えると「お前なら的確な指示を送り堅実に"マリー"を討伐出来る、自由気ままと天然の間に入るには適任だろう」二人の性格を考えればスイレン程のしっかり者が入ればバランスは取れると判断していた。


「自由気ままって、否定はしないけど貴方から見て私はそう見えてるのね」「わたくしは天然なのですか~?わたくし自身としてはしっかりとしているかと思いますが~」少し納得のいっていない二人に対してヴァレアは「一度自分と見つめ直してみろ、すぐに結果が分かるぞ」


ディーナは苦笑いを浮かべた後にすぐに切り替えて「私達が指揮を執るのはいいけどどうしてタイムちゃんがここに?フェリスに会わせるだけじゃないでしょ、"リンドウ"が集まる協会にわざわざ呼んだって事は何か目論見でも?」一国の長であり"リンドウ"では無いタイムが戦力的に役に立つとは思えないディーナ。


「タイムが戦闘に関わることはない。だが、エニーの兵士達を"マリー"討滅に協力してもらう。その段取りや計画を進めるためにタイムに来てもらった」「エニーの兵士を?協力してくれるのはありがたいけどかなり危険な場所になる。一般の兵士を近づけさせる訳には…」

反対気味のディーナだったがタイムが口を開いた。


「ディーナさんの心遣いは親切です。ですがこれは国の一大事になる可能性もあるんです。超大型"マリー"が目撃された地域は大国ルムロを中心とした地域で、エニーもその近辺なのです。超大型"マリー"を放置すればいずれエニーにも被害が出てしまいます。ようやく"マリー"の驚異も去って、国として復旧作業に取り組んでいる時に国民の皆にまた不安を与えて笑顔が消えさせる訳にはいかないのです!」

超大型"マリー"がまた被害を出すのは時間の問題、次はどの街、どの国を壊滅するのかも分からない。被害が出ている近辺の国にはエニーも含まれており、いち早くヴァレアがタイムに伝え何か出来ないかとタイムがヴァレアに頼んだ結果、"リンドウ"を援護する兵士を戦闘に参加させることにしたのだ。


「タイムちゃん…」まだ国長になってから一ヶ月程度、ディーナ達に最初に会った時はまだ初々しく威厳は出ていなかったが、今は一人の国を統べる人として国民を想う気持ちは真っ直ぐにディーナに伝わっていた。


「皆さんの戦いに邪魔になるかもしれません。けれど私達エニーの皆も戦うことは出来ます。ディーナさん達への一つの恩返しとして戦いに参加させてください!」タイムの意思は固く、エニーの兵士と自分も最低限の力を貸したい一心だった。


「あくまで私はタイムに声をかけただけだ。戦いに赴かせるかどうかはお前達で決めてくれ」ヴァレアは判断を指揮を執る三人に委ねた。


タイムの気持ちは理解したがそれでも少し躊躇いを持ってしまう。フェリスの友達を危険な地に行かせていいのかどうかを、フェリスは悲しむのではないのかと。


葛藤するディーナだが、ここで「…ふわぁ、あれ、お姉ちゃん、それに…タイムさんもいる?フェリス寝ぼけているのかな?」タイムの少し大きな声でフェリスは起きて体を起こした。目の前にはいるはずのないタイムの姿が見えて寝ぼけていると思って目を覆っている布越しに目を擦った。


フェリスが起きたことに気がついた一同、タイムはすぐにフェリスの元に行って目線を合わせて「フェリスさん、お久しぶりです。よくお休みになられましたか?あっ私の声で起きてしまったのなら申し訳ないです」タイムも久しぶりのフェリスとの対面に嬉しくなり表情が和らいで笑っていた。


自分が寝ぼけているのではなく本当に目の前にタイムがいることにフェリスも嬉しくなって「タイムさん!またいつ会えるかすごく楽しみにしてました!会いたい人に会えるってすごく嬉しい気持ちになるんですね」フェリスは初めての気持ちと感情にとても心地よくて自然に笑顔が溢れていた。

フェリスの嬉しそうな笑顔にタイムもつられて笑顔になってお互いで笑い合っていた。


二人の再会を見ていた"リンドウ"達は「よほどタイムに会いたかったのだろうな。あの笑顔は今は遮らせることは出来ないな」「そうですね。子供の浮かべるは純白ですから」仲睦まじい姿にヴァレアとスイレンは作戦会議の中ではあるが止めることはしなかった。


チハツはディーナ肩に肘を置いて「なんだよあんな笑顔見せられるのかよ。もうちょっとアタシも仲良くしたらあんな風に笑ってくれるのかな」タイムに見せた笑顔を自分にも向けて欲しいと少し思ってしまったチハツ。


フェリスとタイムはさっきまでの逼迫した空気とは打って変わって笑顔が絶えずに話している姿を見ていたディーナは考えを改めて「そっか、タイムちゃんもフェリスが浮かべている笑顔をずっとエニーの皆に浮かべていて欲しいのね」


ディーナは話している二人に近づいて「タイムちゃん、エニーの皆の力を貸して。皆で超大型"マリー"を討伐しましょ」突然許可を出したディーナにタイムは少し困惑してしまい「でぃ、ディーナさん?どうして突然」「貴方の守りたい人達が私の目に映ったから。二人もいいかな?私の独断で許可を出したけど」

共に指揮を執る二人にも聞くと「もちろんです。皆さんで共に!」「ディーナ様のお言葉であれば~」二人も賛成してタイム達エニー兵士も戦いに参加することが正式に決まった。


「ディーナさん…ありがとうございます。私達も精一杯頑張ります!」「でも危ないと思ったらすぐに逃げてね、命をまずは最優先することが条件だからね」「はい、肝に銘じておきます」話を割って入ってきてなんの話をしているか分からないフェリスはキョトンとしていて「お姉ちゃんとタイムさんは何を話しているの?」「仕事の話。私達とタイムちゃんで一緒にお仕事をすることになったから、だからタイムちゃんがここにいるの」


フェリスに理由を説明しているとヴァレアが咳払いをして「ようやく話がまとまったな。それでは、今回の超大型"マリー"討滅戦の詳細を言うぞ」ヴァレアの一言により遂に超大型"マリー"討滅戦が開幕となった。

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