行き倒れの天才。
初めてのアルバイトを終え、帰宅した俺の目に飛び込んできたのは──。
「……うぅ……」
──昨日と全く同じ姿で行き倒れているまひるの姿だった。
「2日連続は聞いてないぞ……」
俺は昨日も見たその光景に思わずそう呟く。
「……おーい、大丈夫かー」
「……おなか……すいた……」
「……カップ麺でよければ、食べるか?」
「……たべる……」
食べるんかい。心の中でそうツッコミながらまひるを抱える。
ってこいつ、俺の元相棒を抱えてやがる……。外に行くときぐらい置いていけよ……。
呆れながらぐったりとしたまひるを部屋へ運び入れる。どうか誰にも見つかりませんように、と祈りながら。
◇◇◇
「……で、今日はなんで生き倒れてたの」
昨日のようにカップ麺を小さな口にせっせと運びながら尋ねる。食べさせるのも慣れたものだ。
「……おなか……すいて……かいもの……いこうって……」
カップ麺を完食したまひるはお腹が満たされたのか、ぽつぽつと話しはじめる。つまり昨日と同じってことか……。
「……わたし……ひとりぐらし……むいて……ない」
今更すぎる……。服装もめちゃくちゃだし、ご飯もまともに用意できないみたいだし。本格的に心配になってきた。
「……あのさ、買い物、付き合おうか?ひとりだと無理そうだし」
「……いいの?」
「また行き倒れられても困るしな……」
まひるは俺の提案を疑うような目線を向けてくる。
「……いまから、いきたい」
「わかった、準備するから、待っててくれ」
眠たげな目で元相棒の人ダメクッションに顔をうずめながらぽつりと呟く。気に入りすぎだろ。
「……新しいの買ってやろうか?」
「……ん、これがいい」
「なんで」
「いいにおいがするから」
匂いって、俺の体臭しかしないはずなんだけど。まぁ今となってはまひるの匂いが染み付いてるだろうけど。
「……近くのコンビニでいいか?財布は持ってる?」
ポケットにスマホと財布を詰め込みながら尋ねる。
「……ん」
もぞもぞと動いたかと思えば、どこからともなく巾着袋を取りだす。……これが財布?
疑問に思いながら受け取り中身を確認してみると、小銭と札がぐちゃぐちゃに詰め込まれていた。よし、財布だな!無理矢理自分を納得させる。
「……よし、じゃ行くぞ。俺も今日は疲れたから早く寝たい」
力なく立ち上がるとまひるもクッションを抱えたまま起き上がる。やっぱり持っていくんだな、それ。
「……ほら、手」
「……?」
「そんなにフラフラしてたら危ないだろ」
「……ん」
手を差し出すと、小さな手で握り返してくる。すべすべの肌触りに思わずドキっとしてしまう。その手の白さは真夏の入道雲のようだった。
◇◇◇
「いらっしゃっせー」
近くのコンビニは歩いて1分もかからない場所にある。2人で連れそって歩く姿は周りからどう見えているのだろうか。年の離れた兄妹に見えてるならいいんだけど。
「ほら、食べたいもの選びな」
「……わかった」
コンビニに到着した俺たちはお弁当コーナーを物色する。俺もついでに晩ごはんを買おうかな。
まひるはゆったりとした手つきで商品を手に取る。ラーメン、ラーメン、ラーメン。
「おい、ラーメンばっかりじゃ栄養が偏るぞ」
「……ん」
俺の忠告が聞こえていないのか、さらにラーメンをかごに入れるまひる。……まぁ、食べないよりはマシか。
俺は中華丼とサラダでいいかな。こいつのためにもう一個サラダを買っておこう。
店員の不審な目を無視しながら会計を済ませる。まぁクッションを抱き抱えた布の塊がいたらそういう反応になるよな……。
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