第8話 測定
ようやく新年一発目の投稿。
もっと更新速度あげれるようにがんばります。
今年もよろしくお願いします!
体育館から教室に戻るときに男女に別れ、男子は先に身体&体力測定、女子は検査&面談が行われるみたいだ。
俺たちが教室に戻ると、それぞれ名前の書かれた袋が机の上に置かれていた。
袋の中には半袖短パンの一般的な体操服が入っていた。
「それは脈拍、心拍数、発汗等測定するための服型制御装具だ。各自それに着替えてグラウンドに集まるように」
なるほど、制服とはまた違った機能の制御装具か。
手を抜くとバレるなこれは。
「ああ、一つ伝えておこう。身体測定は真面目にしてもしなくてもいい。各々自分の力量でやってくれたまえ。結果によって退学等はないので安心して取り組むように、以上」
それだけ言うと先生は教室から出ていってしまった。
どうやら質問は受け付けてはくれないらしい。
大多数の生徒は言葉の意図がわからず、戸惑いながらも着替えてグラウンドに出ていく。
なかなか意地悪な学園だな。
突出した力を見せてもよし、平均を装ってもよし、自分が示した力で測定ついでに人間性も合わせてみるのか?
まぁ、個人的には助かるが。
「手を抜いていいなら、がっつり抜こう」
誰ともなくそう呟くと、手早く着替えて後を追った。
「・・・グラウンド広すぎだろ」
男子だけとは言え、約半数の新入生が集まっても密集することなく測定している。
測定項目は反復横飛びや幅跳びなど一般的な奴ばかりだな。
よし、やってる奴をある程度見て平均くらいで押さえておこう。
当たり障りなく平穏な学園生活を送るためには目立たないに越したことはない。
うんうんと、一人頷きながら俺は測定に向かった。
「次で最後かな」
俺は程よい力加減でこなしていき、無難な結果を残すことに満足感を覚えていた。
ちゃんとしっかり肩で息をするなどリアリティも忘れていない。
露骨に手を抜きすぎると何を言われるかわからんからな。
「おい、そこのお前っ!」
「ん?」
後ろから聞こえる怒鳴り声のほうに振り向くと、ブロンドヘアーの外国人が俺を睨んでいた。
「お前のその態度はなんだ!入学式前の居眠り、あからさまに手を抜いている測定、何のためにこの学園に来たんだっ!」
おお、なんかめっちゃ怒ってるな。
顔を真っ赤にしながら今にも殴りかかって来そうな程手を握りしめている。
俺の手抜きを見破るとは、こいつ出来るな。
「何のためにこの学園に来ているのかと聞いているんだっ!」
怒っているブロンドくんはビッと人差し指をこちらに向け、お前に言っているんだと念を押す。
「なに怒ってるかわからんが、いきなり怒鳴り込んでくる奴に言うことはないよ」
「なんだとっ!」
ギリっと奥歯を鳴らしながらなお睨み付けてくる。
とっさに日本語で返してしまったが普通に会話できてしまった。
「ちょちょ、何してるんですか坊!揉め事はダメですよ!」
ブロンドくんを後ろからメガネを掛けた少年が羽交い締めにする。
「放せっ!こいつにはもっと言わねば気が済まん!」
「ダメですって!すいません、お騒がせしました!」
そのままブロンドくんはメガネくんに引きずられていった。
「・・・何だったんだ」
引きずられた先でまだ怒鳴り声が聞こえる。
スゴい真面目な奴なことだけはわかったが、さっきのメガネくんも外国人だよな?
日本語上手すぎだろ。
「揉め事があったのはこっちかい?」
いつの間にか俺のとなりには、銀髪の学園の制服を着た褐色の男が立っていた。
ネクタイの色が青ってことは上級生か。
「揉め事と言うか、何か怒鳴られはしましたね。もう向こうに行ってしまいましたが」
俺は引きずられた先をもう一度見ながら銀髪の先輩に説明をする。
「そうか、荒事にならなかったのならよかった。君は測定は終わったのかい?」
「次で最後です」
「なら手早く済ますといい。何かわからないこととかあるかい?」
特にない、そう言おうと思ったが先輩の容姿を見て気になったことを聞いてみることにした。
「この学園の生徒、日本語が上手な人が多いですね」
「日本語?・・・ああ、違うよ。その体操服やこれのお陰だよ」
銀髪の先輩は自分の左手首についている、リストバンドを指差しながら説明する。
「学園指定の制御装具には全て翻訳の能力が備わっているから、自分達が普段話している言語で聞こえているだけさ。僕も日本語で話してはないしね」
なるほど、そんな便利機能がついていたのか。
備品一つ一つにもずいぶんな技術が使われているな。
「細かな機微は国によっては翻訳されないから、しっかりと他国の言語も学んでおいたほうがいいよ。それじゃ」
手を上げて挨拶をすると、銀髪の先輩は爽やかに去っていった。
通訳要らずとはスゴいな。
全部英語とかでやり取りするのかと思ってたから助かった。
これもきっと説明会であったんだろうな。
嵐や輝夜にはこの話題は振らないようにしよう、そう誓って俺は最後の測定を済ませるのだった。