プロローグ
初投稿です。お手柔らかにお願いします。
吐き気を催す程の死臭の中、青年はその場に立ち尽くしていた。否、両の足が地面に縫い付けられた様に動かないのだ。
青年は焦点が定まらない眼で周りを見回す。燃え上がった炎がまるで生きているドラゴンの様に蠢き、地にはもう生命活動を停止した肉塊、つまり屍がそこかしこに散らばっている。まさに地獄を体現した様な光景だった。
□■□■□■□■□■
まるで吸血鬼が住んでいそうな悪趣味な屋敷を見下ろし、ボロボロのマントを羽織りフードを深く被った青年は仲間の報告を己の武具を確認しながら待っていた。
近くでは他の仲間達が武器を整えたり、パートナーに話しかけたりしているが、何処かぎこちなく緊張しているのが分かる。それもその筈だ、今夜青年達の組織はとても重要な任務を命じられていた。
依頼人は、青年達の住んでいる国【ザクロア 】の右大臣である《アダムス・イェイガー》。アダムス・イェイガーの依頼は左大臣である兄を亡きものにする事、つまり暗殺である。
――兄である左大臣アダムス・ルドガーは悪に染まりきってしまった。これ以上この国の民を苦しめる前にこれを、暗殺して欲しい。これは国民の相違である。――
依頼書に書かれていた内容はこの通りである。確かに、アダムス・ルドガーは左大臣としての権力を振るい私腹を肥やしている。そしてその振る舞いに遂に弟の正義漢が立ち上がった。
そこで白羽の矢が立ったのが、国で最強の青年達の暗殺者組織だった。しかし幾ら青年達が強かろうが相手は国の実質ナンバー2そう簡単に行く筈もなく数ヶ月掛けて下準備をしてきたのだ。
調査の甲斐があって警備が手薄になる時間帯を見つける事に成功し、月が爛々と輝く今夜にて作戦を実行させる。
青年が武具の手入れを終えて瞑想していると、最終偵察に行っていた組織の中でも最強と言われる青年と同格の実力を持つ男が偵察を終えリーダーに状況を説明している。どうやら予定通りに進んでいるらしい。
どうやら今回は死ぬ気でやるしかないなと青年は覚悟を決めた。「死ぬ気は更々ないがね 」と、呟きながら合図の時を待つ。
□■□■□■□■□■
結果的に言えば、作戦は大失敗だった。アダムス・ルドガーに作戦が露呈しており、屋敷内に潜んでいた兵士に虚を突かれた動揺した仲間達が次々と倒れていく。
何故、アダムス・ルドガーがこの作戦を知っていたのかと言うと簡単な話だ。最終偵察に行ったオルトロスが裏切っておりリーダーに虚偽の報告をしたからだ。
青年が立ち尽くしているとリーダーが傷だらけの身体を引き摺ってきて青年に屋敷に侵入してオルトロスとアダムス・ルドガーを殺してこいと告げた。オルトロスに勝てるのは青年しかいなかったからだ。
リーダーは、青年を屋敷に押し込むとニヤリと笑いながら大きな扉を閉めた。外にはまだかなりの数の兵士がいる。それに対して組織で戦えるのはリーダーと青年の2人しか残っていなかった。リーダーの覚悟をしり青年も己のプライドと命を賭けることを決めた。
それからの青年は強かった。次々と襲って来る兵士を今までの人生で培ってきた技術で切り伏せ、投げ飛ばし進んでいく。後に偶然生き残った兵士は青年の事を鬼神の様だったと語っている。
そして、遂に青年はオルトロスとアダムス・ルドガーの元に辿り就いた。アダムス・ルドガーを制するように前に出たオルトロスと死闘になるも自らの腹を剣で貫かせることで、オルトロスの動きを止めそのまま首を切り落とした。
青年は腹部の傷によりすぐにでも遠のいてしまいそうな意識を繋ぎとめ必死に巨体を動かし、逃げようとしているアダムス・ルドガーの前に立ち塞がる。
必死に自分につけだの、欲しい物をなんでもくれてやると言っているが、それらを全て無視し青年は自身に残ってるありったけの力を込めてアダムス・ルドガーの首を切り落とした。
アダムス・ルドガーの死を確認し、青年も力尽き倒れ込む。最早助かるには手遅れな段階まで来てしまったのだ。薄れゆく意識の中で、青年の頭の中では今までの記憶が走馬灯の様に駆け巡っていた。今までの人生に後悔はない。しかし次の人生がもしあるのなら、平和な世界に生きたいとなにより恋がしてみたいと思いながら瞳を閉じた。
青年が最後に願った願望が少し変わった形に叶えられてしまう事はまだ誰も知らない。
余り異世界の設定は関係ありません。
主人公凄腕の殺し屋。
男。
以下の事さえ分かってもらえれば十分です。
次の話から一人称(予定)です。
感想、批判、評価、などなどを待っています。